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わたしは愛される実験をはじめた。第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」

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【読むだけでモテる恋愛小説14話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」

合コン女子。

 何度も合コンにいって場なれたスキルをみせる女子のこと。でもそれは、ずっと恋人をゲットできてない証拠でもある。彼女たちが幸せになれないのは〝合コン最大の幻想〟にとらわれているからだとベニコさんはいった。

「合コン最大の幻想ってなんですか」私はカップをおいた。

「そのパンケーキ女たちが存在しないのに求めているものよ」

「合コン女子のチヒロとカナが?」

 ベニコさんはうなずいた。ワンカールしたボブ。ばっちりと濃いアイメイク。シャツの襟を立てたブラックスーツ。ずんぐり体型ながら、アメリカンドラマのキャリアウーマンみたいな雰囲気だった。「でも、その前に合コンの本質の話からしましょう」

「幻想の前に本質ですか? なんか哲学っぽいですね」

「その二つは表裏一体よ。それを知った女だけが合コンで幸せを得られる」ベニコさんはひとさし指をたてた。「結論からいうと——合コンの本質は脱出ゲーム

「脱出ゲーム?」

「そう」

「意味がわかりません」私は速攻で首をかしげた。

 沈黙があった。フランソア喫茶室の店内に、ゆるいクラシックがながれた。

 ベニコさんは、IQ3くらいの部下でもみるように、太い眉をぴくぴくさせたあと、髪をはらった。「いい? 脱出ゲームは、そこから抜けだすことだけが目的なのよ。合コンの目的も、恋人を作って合コンを去ることだけでしょ? それを、そのチヒロだかカナだか——そのルールに慣れることを誇っているうちはなにも得られないわ。むしろドツボ。その場の楽しさや、自分は正しい活動をしているんだという思いこみからぬけだせなくなる。そして最後には〝出会いといえば合コン〟という発想しかできなくなる」

「はあ、なるほど。なんかわかる気がします」私は壁のフェルメールの複製に目をやったあとIQ4くらいの感じでうなずいた。「どうして、そんなことがおきるんです?」

「合コンは居心地のいい牢獄だからよ」ベニコさんは口の前でカップをとめた。「本当は、そこから脱出することが大事なのに。食事もでて、冷暖房完備で、テレビもスマホもベッドもあるから、なれあってるうちに、その気もおきなくなる——おわかり?」

 私は居酒屋の楽しげな光景を思いだした。ぞっとした。「おそろしいですね」

「ギャンブルや、つまらない意地のはりあいや、ネットの口喧嘩といっしょ。そんなことばかりよ。私たちは戦わなくては生きていけない。でも、それ以上に、なんのために戦っているのかを考えなくてはいけない。ときにゲームを制するとはゲームを去ることなの

「それは——合コンを制するとは合コンを去るってことですね?」

 ベニコさんはうなずいた。むっちりした足を組みかえた。

 私はなぜかSNSのことを考えた。Facebookに休日の写真をあげて、いかに素敵な生活をできているかのアピール合戦にのぼせたことがった。わざわざ「いいね!」のもらえそうなカフェでランチをとったりした。でも、いつのまにか疲れてやめてしまった。

「もしかして」そこで私は思いあたった。「この恋愛認知学や、ベニコさんのレッスンも脱出ゲームなんですか?」

 爪をながめていたベニコさんは顔をあげた。おどろいた表情だった。「どうして?」

「だって、合コンみたいに恋人をつくるために学んでるんでしょ? だったら恋愛認知学を習わなくてもよくなるのがゴール——脱出ゲームじゃないですか」

「パンケーキちゃん」

「ミホです」

「たまには鋭いことをいうのね」

「そうでしょう? なんかそう思うと、ちょっと、さびしいなって」

「安心して」ベニコさんは微笑んだ。「私の恋愛認知学は、いっとき、モテるためだけのセコい技術じゃないから——そう使うこともできるけど。それは、あなたが実験しながら決めることよ。少なくとも、私は、女が美しく生きるための作法だと思ってる。あなたがよりよい人生を求めるかぎり、この愛される実験は生涯続くわ」

 私は肩の力をぬいて息をついた。「よかった——なんか涙でそう」

「涙腺決壊という名のパンケーキ」

「ひどい」私は悲しいのか面白いのかよくわからない顔になった。

「ひどくいい話だったでしょう?」さらりとベニコさんは片手をひろげた。そのネイルの赤色が映えた。「じゃあ、そろそろ、合コン最大の幻想について話しましょうか」

 私は、なぜベニコさんといるのかわかった気がした。たんにモテるかどうかじゃない。この不器用な人生を変えられそうな気がしているからだ。やさしく——そして厳しく——まだ人生はこれからだと感じさせてくれるから。次は、四条河原町の、高島屋でマカロンでも買ってこようと思った。


「こんな言葉を聞いたことがあるかしら」ベニコさんはひとさし指をたてた。「合コンは確率の問題。だから、どんどん顔をだすべきだ。回数を重ねると、いつか恋人ができるはずだから——なんて台詞を」

「それそれ」私はカップを両手にうなずいた。「それ反省会のスタバで、チヒロとカナがいってました。だから、もっと合コンいこうよって誘われたんです」

「パンケーキ女のいいそうなことね」

 私は眉をよせた。「どういうことです?」

「まだ気づいてないようだけど。合コンは確率の問題——これぞ最大の幻想なのよ

「え? これがですか? どうしてです?」

「疑問符が多いわね」ベニコさんは机のふちをなでた。「たしかに合コンに何度もいくと、いい男にも出会えるでしょう。それが確率の問題なのはわかる。そのたびに媚を売って、すぐに既読スルーされて壁にぶつけたトマトみたいに玉砕するわけだけど」

「すごいイメージですね」

「問題はそのあとよ」ベニコさんは顔を近づけた。「そこで、こう考える女がいるの。大丈夫。今回は相手にされなかったけど、これは確率の問題だから。おちこんでないで、次、次。いつか、いい男で、私のことを好きになってくれる人があらわれるからって」

「そのとおりに思えるんですけど」

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ」ベニコさんはぴしゃりといった。

「う」私は口ごもった。鞄からメモ帳とペンをとりだした。「考えてみます」

 頭を整理しようと書いた。

『恋人ができる確率 = 合コンに参加した回数 × 好みの男性があらわれる確率 × その人が好きになってくれる確率』

 正直、ノーベル賞をもらえるくらい完璧だと思った。

「やっぱり合コンって、こんなふうに確率の問題じゃありません?」

「あんたは本当に頭にカスタードクリームのつまったパンケーキ女ね」

「私の名前はミホですけど——どうしてです?」

 ベニコさんは赤ペンをとりだすと、私の完璧な方程式にスラッシュを入れて〝0点〟と書いた。「男が女を好きになるのは確率の問題ではないから」

「はい?」

「サイコロじゃないんだから」ベニコさんは角砂糖をつまんでながめた。「モテる女は何度もモテる。モテない女はいつまでもモテない。それだけの話よ。それなのに、いつか私を好きになる人がいるって? 確率なんて都合いい言葉まで持ちだしてね。それじゃ大人ぶった顔するくせに、心の奥は、あまい受け身のまま〝いつか白馬の王子様があらわれる〟なんて信じてるパンケーキ女そのものじゃない

 私は数秒考えた。「パンケーキ女ですね」

「そういう女たちには〝相手を好きにさせる〟という発想がまるでないの。はんぱな雑誌からひろった合コンテクじゃなく、本当にシビアに努力してるかって話だけど」

「どうして、みんな確率論に——その、逃げるんです?」

「異性にぶつかることができない弱さ」

「弱さ?」

「人間は傷つくことから逃げてしまう生物なのよ」ベニコさんはいった。「でも、傷つくことでしか人は美しくなれない。ダイヤモンドは傷つけてこそ輝くものでしょう?」

 私は自分の指をみた。もちろん指輪をしているわけでなかった。けれど、じっと薬指をながめながらその言葉は重く心にのこった。

「いい?」ベニコさんは前かがみに濃いアイメイクをみひらいた。「いろんな言葉を持ちだして、モテないことを言い訳するのはやめなさい。あんたがモテない女なら、何百回、合コンにいってもモテないわ。まだ恋人ができないのは確率の問題じゃない。あんたがモテない女だからよ。なんの努力もせずに、ただ出席さえずれば、いつか、ちやほやしてくれるハイレベルな男があらわれる——なんてパーフェクトな幻想よ」

「おぼえておきます」私はテーブルの上の0点の答案をみた。

「まだラクダが針の穴をとおる方がやさしい」

「すごい例えですね」

 そのとき、テーブルでスマホが光った。

 先ほどからグループLINEで、合コンのメンバーが「また飲みましょう」とスタンプを押して盛りあがっていた——返信する気分でなかった。それとは違う私だけにあてたものみたいだった。通知をのぞいた。ぐらっと心と視界がゆれた。「あれ? 合コンで一番人気だったダイチさんからLINEがきてる?」

■今日の恋愛認知学メモ

・合コンの本質は脱出ゲーム。恋人を作ってぬけだすことが目的。合コンに慣れることを喜んではいけない。合コンを制するとは合コンを去ること。

・「合コンは確率の問題」は最大の幻想。こっちがモテるかモテないかが重要。

・傷つくことから逃げないこと。

・さっそく合コンのあとにLINEがきた——えっと、これ、どう返信するの?

わたしは愛される実験をはじめた。第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」

https://p-dress.jp/articles/6680

【読むだけでモテる恋愛小説15話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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