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わたしは愛される実験をはじめた。第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」

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【読むだけでモテる恋愛小説39話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「まだフラれてることに気づいてないの?」

「出会いのあとのLINEって、どうしたらいいんですか?」

 京都の四条にある純喫茶フランソアにて、私は、いわれるがままにスマホのLINEをみせた。合コンの夜にとどいたトロピカルフィッシュ(モテないフィッシュのなかでも価値の高い男性)クリタさんからの文面だった。

『今日はありがとうございました! 合コンでは緊張して、うまく話せませんでしたが楽しかったです(絵文字)あの、よかったら今度四条のイタリアンに食事でもいきませんか?』

「ふむ」ベニコさんはあごに手をそえた。

「どう返信したらいいかわからなくて。正直、数日放置してます」

「これをみてどう思った?」ベニコさんはいった。ぽっちゃり体型ながら、ワンカールした黒髪、欧米風メイク。ブラックスーツを着て、あいかわらずアメリカンドラマのキャリアウーマンという感じだった。

「正直、きてるなと思いました」

「パンケーキちゃん。そんなのは当たり前よ」ベニコさんは首をふった。「これをみてケンカを売られてると考える人間はいないわ。それを女としてどう感じたのかって話よ」

「どう感じたのかですか?」

「そう」ベニコさんは黒髪をかきあげた。「この男の誘いにのろうと思った?」

 私は眉をよせて考えた。「それは──まったくなかったかも。放置してたくらいだし」

 合コンの夜を思いだしてみた。その夜にデートに誘われたのはうれしかった。でも、それは合コンで男性に「あいつアリだな」と思われていたことがうれしかっただけかも。クリタさんにドキドキしたわけではなかった気がする。

「なぜ、あなたの心に響かなかったのかを教えてあげる」ベニコさんは笑った。そして指を二本伸ばした。「このクリタが犯したミスは大きく二つ。一つめは合コンの夜にLINEを送ったこと。二つめはいきなりデートに誘ったこと

「はあ」私は口をあけた。展開が読めないままうなずいた。

「これは〝私はあなたに気に入られたくてたまりません〟〝あなたを口説ききる自信がないからさっさと結果を知って楽になりたい〟といってるのと同じことなのよ。自分からポジションを下げてるわけね。モテない価値の低い男ですと自己紹介してる。そんなことでは女の遺伝子に響かないわ」

 しかし私は感動で小刻みにふるえていた。「気にいられたくてたまりませんなんて、こう、じわっと女性ホルモンがでるというか照れますね」

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ」ベニコさんはぴしゃりといった。

「ひどい」私は唇をとがらせた。

「たしかに台詞だけをぬきだせば感動的かもしれない」ベニコさんはいった。「でも実際それをモテないフィッシュの行動でみせられると──めちゃくちゃ長文のLINEを送ってくるとか──なんの心も動かないわけでしょう?」

「それは、そうですけど」

「ほら」

「思ってくれたことは嬉しいですよ」私は抗議した。

「でも、普段そこまでは考えないでしょう? キモいとかいって無視するはずよ」ベニコさんはいった。「いい? 恋愛において重要なのは、なにを伝えようとしたかでなく、どう伝わったかなのよ。もちろん、いまみたいに目の前の相手が〝本当はなにを伝えようとしていたのだろう?〟と考えてあげるのも大事よ。やさしさといっていいかもしれない。理解を深めたりトラブルも避けられる。でも、この世はできた人間ばかりじゃない。いちいち立ち止まって考える暇もない。だから悲しくも〝どう伝わったか?〟だけで判断されてしまう世のなかなのよ」

 その言葉はすごく大事なことに思えた。カップを手に、じっくり考えることにした。確かに、なにを伝えようとしたかと、どう伝わったかは違うことがある。こちらの言葉が思ってもない受けとり方をされてトラブルになることだってある。仕事でもプライベートでも。

「なんか、やさしくない世界ですね」

「そうね」ベニコさんは髪にふれた。「そんな世界でも生きなくてはいけないわ。だから伝え方をみがくのよ──それがゲームを解く鍵ならね。そして幸せを勝ちとるの」

 私は珈琲を飲んだ。黒い液体と共に、言葉を胸のなかにゆっくり落としこもうと思った。確かにもう子どもじゃない。幸せになりたいなら、自分の力でやりぬかないといけないんだ。そのあと机の上のスマホをみた。「それじゃ、このLINEはどう返信するのがベストなんです?」

 一瞬の沈黙があった。ベニコさんがなにかを考えているのはわかった。

「それは、このトロピカルフィッシュは狙わない。あくまでタイガー(モテる男性)であるテラサキという男を狙う前提ね?」

 私はごくりと唾をのんだ。もう一度覚悟を問われているのだと思った。どちらも手にいれることはできないのだ。「そのつもりです」

「パンケーキちゃんは、どう返信すべきだと思うの?」

「えっと」私は天井をみあげた。ひとさし指でほほをかいた。「もうタイミングも逃したし、このまま放置でいいかなとか──」

「調子こいた女という名のパンケーキ」

「なんでですか?」私はむきなおった。

「いい機会ね」ベニコさんはむっちりした足を組みかえた。「あなたは、これからも恋愛認知学を実験する上で、まったく興味のない男からもアプローチを受けることになるから」

「なるんですか?」私はぐぐっと身をよせた。

「そうじゃない?」

 私は言葉につまった。げんに男性から誘いのLINEがきているから。もちろんパンケーキ女である私がモテる女だなんて京都市の天と地と鴨川が裂けてもいえない。でも非現実的なことだとも思えなかった。少なくともモテるとはどういうことか──愛される実験をとおして──なんとなく理解できてきた気がする。

「そんなときに思いだしてほしいことがあるの」ベニコさんは映画のワンシーンでも再現するように声を小さくした。「くれぐれも人間としてリスペクトをもった対応をするって」

「リスペクト?」私は眉をよせた。

「恋愛をしたいからって、恋愛対象外に礼儀を欠いていいわけじゃないわ」ベニコさんはいった。「あなたも気になった男にLINEしたとしましょう──何度もやってきたでしょう? ドキドキしながら文章を送ったはずよ。なのに永遠に未読スルーされたり、デートの約束をしたのに当日ドタキャンされたりなんてなかった?」

 私はこれまでの恋愛戦績をふりかえった。まだ青いグレープフルーツをかじったくらい苦く酸っぱい記憶の数々だった。「恥ずかしながら、わりとある話です」

「どう思った?」

「ちょっと失礼でしょって」私は声を強めた。思いだしたらムカついてきたから。「断るのも気まずいのかもしれないけど──来る気がないなら断ってくれたらいいのにとか」

「ならば同じことをしてはいけない」ベニコさんはひとさし指を立てた。「いい? 異性として興味がないからと雑に扱っていい理由にはならない。すべての他人にリスペクトが必要よ」

「リスペクトですか」

 ベニコさんはうなずいた。アイメイクの濃い目がむいた。思わず姿勢をただしてしまいそうだった。「とくに頭のなかにホイップクリームがつまってるパンケーキ女のあなたなら相手の気持ちもわかるはずでしょう? 好きな相手にぞんざいに扱われる辛さというものを」

 その言葉は衝撃だった。そっか、そうだよね、と、私はなじられたことすらスルーして、心のなかで、すべての他人にリスペクトが必要、と、つぶやいた。

 人にされて嫌なことをしてはいけない。それは、いわわれみれば子どものころから聞かされてきた当たり前のことだった。でも、その当たり前が難しいのかも。

 私はモテないパンケーキ女だった──いまもだけど。だからこそ好きな人に拒否されるみじめさと辛さを誰よりも知っている。これだけは生まれつきモテる女性よりも知っている自信がある。それなのに、恋愛に焦るあまり、つい好きでいてくれる恋愛対象外の男性に雑な態度をとろうとしてしまった。まるで上手くいかなかったいままでの恋愛にしかえしするみたいに。

 私はテーブルのスマホを手にとった。にぎりしめた。

 もう興味を持ってくれた男性に失礼なことはするもんかと誓った。

■今日の恋愛認知学メモ

・出会いのあとに〝私はあなたに気に入られたくてたまりません〟というようなLINEを送らないこと。

・恋愛において大事なのは、なにを伝えようとしたかでなく、どう伝わったか。

・興味がない男性にもリスペクトを持って対応すること。

・でも実際──恋愛対象外の男性にはどう返信すればいいの?

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。ツイッターで恋愛テク語ってます。

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