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わたしは愛される実験をはじめた。第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」

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【読むだけでモテる恋愛小説6話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」

■第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」

 京都は春でなく、私も春でなかったが、京都の町は寒いのに、私の心は暖かだった。

 オクムラさんとLINEできてるから。

 これほど男性とLINEできることが——そんな相手のいることが——満たされることだと思わなかった。女として存在を許されている気がする。おかげで残業もどうってことなかった。伝票整理も笑顔でひきうけてやった。

 LINEの目的はデートにこぎつけること。これを胸に刻んで、ひたすら恋愛認知学のメソッドに従った。

 まず毎日LINEを送るなんてことはしなかった。どれも二、三日に一度くらい「今日、三条駅で柴犬が寝てました」や「腹筋って一日何回くらいがベストです?(『だから俺は腹筋の専門家じゃないです笑』とウケた)」といった“短文のメソッド”を心がけた。

 送る時間はバラバラにした。数分で返事がくることもあれば、その夜や翌朝にくることもあった。そんなときは、あせらず“鏡のメソッド”を実践した。私もおなじだけ(長時間のときは五割〜七割でもいい)おいて返信した。

 すると余裕をもって生活できるようになった。すぐに返信しなくていいのは気楽だった。スマホを机において、トイレにもちこんで、あれほど手放せなかったのに。

 おなじように返信がなくても気にならなくなった。むこうにも生活があるのだ。いつか返事はくるからのんびり待てばいい。そう考えると自然体でLINEできた。なんとなく、この心のゆったりさが伝わるのかもしれない。

 気づけば、ベニコさんに、スクリーンショットを送って、かわりに返事を考えてもらうことも減った。聞きたいことを聞いて、ツッコミたいことにツッコミをして、くだらないことを言いたければ言うだけで、LINEは成立した。

 男性だって、おなじ人間だ。長くてめんどくさいLINEを返すのはおっくうだし、短くてクスッとできるLINEはつい返信したくなる。こちらが力をぬけば、あちらも力をぬいてくれる。まさに鏡みたいに。確かにいままでの体験を考えてみれば、異性だからと気を張りすぎたLINEにかぎって返信はなかった。

 さらに徹底したことがあった。

 いつも私の既読スルーで終わること。わけもわからずにそうした。やりとりのはずんだころ、オクムラさんのLINEに既読をつけると、毎回、鞄に携帯をもどしたり布団につっこんだ。理由をベニコさんにたずねても、案の定、既読スルーされた。

 一週間後の夜、私は四条河原町のOPA前にいた。

 京都でいちばん人通りの多い交差点。京都の冬はなかなか明けないから、まだコート姿ばかり。なのに楽しげな顔で、みな恋人や友人や家族と歩いている。

 私はピーチミントをだして一粒がりっと噛んだ。待ち合わせとはいえ、広告つきの柱にもたれていると、つい自分は一人なのかと感じてしまう。

 しばらくすると横断歩道のむこうから、ずんぐりしたベニコさんの姿がみえた。なんと背の高いコートの男性と腕を組んでいた。よくみると、はじめてベニコさんと出会った日、HUBでみかけた年下イケメンコンビの一人だった。

 私は、ほぼ初対面のイケメンに頭をさげた。

「この人がベニコさんの弟子?」なぜかいい匂いのする優男系イケメンは横をみた。

「そう」ベニコさんは腕をほどいた。「愛しのパンケーキちゃん」

「パンケーキ?」イケメンはくすくす笑った。「どういうことすか?」

 私はその視線にこたえるように言葉を探した。だがイケメンと顔をあわせたことなんかいつぶりだろうというくらいで、あ、あう、あ、あ、と挙動不審だった。

 そこで「珈琲を二つ買ってきて」と、ベニコさんは、イケメンの背中を押した。するとイケメンは、うれしそうな顔をして、かけ足で、近くのコーヒーショップに飛んでいった。フリスビーを取りにいくレトリバーみたいだった。

「ベニコさん」私はイケメンの走る姿を網膜に焼きつけようと目をこらした。「あれが前、熱烈なLINEをくれたトモヤ君ですよね?」

「いえ」ベニコさんは赤のマフラーをゆるめた。ワンカールした黒髪ボブに、欧風メイク、アメリカンドラマのキャリアウーマンという雰囲気だった。「あれはシュンスケ」

「はい?」

「私もどっちかわからなくなるけど、あなたがいってるのはもう片方じゃない?」

「ちょっと理解できないんですけど」私の声はうわずった。「イケメンを二人ゲットしてるってことですか? ねえ、そういうことですよね?」

 ベニコさんは微笑んで返事をしなかった。そのかわり私の首筋にふれた。その赤い爪がつつつ、と伝わると、ぞくぞくして思わず声がもれた。

 すぐにイケメンは珈琲を両手に帰ってきた。白い歯をみせて「どうぞ」と一つをくれた。

「ベニコさんはブラックですよね?」シュンスケはコートのなかに手をいれた。「パンケーキさんは砂糖とミルクを持ってきたけど——いりますか?」

 私はこくこくうなずいてうけとった。顔を赤くして、お礼をいうと、これはイケメンの珈琲だから味わって飲もうと思った。

「気が利くじゃない」ベニコさんは珈琲を飲んだ。ふちに口紅がついた。「美味しい」

「教えてもらったとおりでしょ? あと口紅がつくとおもって——」と、シュンスケはさらに紙ナプキンを二枚とりだした「はい、ベニコさん」

「合格」ベニコさんはそれをつまみあげると微笑んだ。「じゃあ帰って」

 そのあつかいにシュンスケは嫌な顔ひとつしなかった。むしろ、認められてうれしそうだった。ベニコさんの袖をつまむと「チケットは来週の日曜ですよ?」といって四条通りに消えていった。

「ルッキングできてなかったわね」ベニコさんも柱にもたれた。「シュンスケに」

「イケメンだから仕方ないですよ」私は両手で紙コップのぬくもりを包んだ。

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ。甘ったるい言い訳ばかり」

「なにがです?」

「あなたはレベルの高い男をゲットするために恋愛認知学を練習してるんでしょ? なら、イケメンなんてのは、もっとも立ち向かうべき相手じゃない。ボコボコにしなさいよ」

「それはそうですけど」私は唇をとがらせた。

「テストは不合格ね」

「イケメンがくると知ってたら、もっと化粧してましたから」

「日常生活で、今日はイケメンと出会うから念入りにメイクしましょう、なんて誰が教えてくれるの? 毎日が運命の舞台よ。普段から気をつけなさい」

 私はなんでもいいから反論したくなった。「それにしても、あんなふうに帰らせるなんてひどすぎません? せっかく珈琲を買ってくれたのに」

「ひどい? それは本人が決めることよ。シュンスケの反応はどうだった?」

「それは——ちょっと、うれしそうでしたけど」

「ほら」ベニコさんは珈琲を飲んで笑った。紙コップについた口紅が映えた。「それこそ、いまのも恋愛認知学のテクニックよ。既読スルーにも通じるわね」

 私はそこで目的を思いだした。目の前の道路に、京都市の緑のバスが停車した。

「そうですよ」私はベニコさんの袖をゆらした。「まだオクムラさんとLINEしてるんです。いい感じだと思うんです。いわれた通り既読スルーもしてます」

 ベニコさんは張りついたカナブンみたいに私の手をはらった。「既読スルーのあと、あっちからLINEがくることはあった?」

「昨日ありました。同僚に監獄バーに連れてかれたって」

「いいわね」ベニコさんはあごに手をそえた。「恋愛認知学において、あちらからアクションがあったか、という観点は重要よ。たしかにいまの状況は悪くなさそう。あなたとLINEをしたくなったというシグナルだから」

「それで——そろそろ、なぜ既読スルーするか理由を教えてほしいんです」

「あら」ベニコさんはあきれた顔をつくった。「まだわからないの?」

「一応、じらして男心をやきもきさせるためかなと考えたんですけど」

自分の価値を高めて主導権をにぎるため

「はい?」

「まず既読スルーの逆を考えましょう」ベニコさんはいった。「LINEを返すまで未読にしたり、既読をつけたからにはすぐ返信したり。そんな人間をどう思う?」

「まあ、いろいろ気をつかってるんだなって思います」

「そう」ベニコさんは濃いアイメイクをみひらいた。「つまり既読を気にしているかぎり“私は他人の目を気にして生きています”と自己紹介してるのとおなじことなの

 私は思いかえした。既読をつけたからには返信しないと悪い気がしたり、あえて未読のままにして返さないのは読めてないからと言い訳をつくったりした。そのくせ既読をつけずになんとかメッセージを読もうと苦戦したり。「いわれてみると否定できないです」

「そんなLINEでモテるわけがない。少なくとも普通のおもしろくない女よ」

「えぐられたみたいに心が痛いです」

「傷心という名のパンケーキ」

「ミホです」

「次に既読スルーだけど」ベニコさんは珈琲を飲んで無視した。「いい? そもそも人間はコミュニケーションを中断されると“あれっ?”って思うものなの。軽いトランス状態ともいう。たとえば——」

 突然ベニコさんは手をのばして、私が珈琲を飲もうとする腕をつかんだ。コップを口につける直前だったので、その意味がわからず、私はどう反応すべきか迷った。

 ベニコさんは空の紙コップを、私のコートのポケットに入れた。「パンケーキちゃんはいい子だから、あのゴミ箱に、これを捨ててきてくれる?」

 私は数メートル先の、道ばたのゴミ箱に、ベニコさんのコップを捨てた。しかしベニコさんのもとにもどり、自分の珈琲をすするうちに、おかしな気がしてきた。「あれ、なんで私が、ベニコさんのためにパシられた感じになってるんです?」

「でも、私のために動いてくれたでしょ?」

「まあ、なんか、なんとなくそういう感じだったから」

「軽い心理誘導よ」ベニコさんはいった。「あなたは珈琲を飲むという動きを中断させられたことで、軽いトランス状態におちいったの。そんな日常動作を邪魔されたことなんかなかったから、どうしていいかわからなくて脳がフリーズしたわけ。その瞬間、あなたの脳は、とにかく指示がほしくて、おぼれた人間が藁でもなんでもいいから手にするように、まわりの命令に飛びつくようになる。簡単にいえば主導権をあけわたすの」

「はあ」私は口をあけた。

「難しい話をするつもりはないけど、ときにコミュニケーションを中断するのは、武器になるんだと覚えておいて。知り合いの不動産屋の社長は、来客が名刺をわたすと、わざとうけとらずに商談をはじめるの。ビジネスマンはそんな対応されたことないから、ぽかんとして、まんまと社長のペースにのせられるってわけ」

「営業にも使えそうですね。それならわかる気がします」

「いかに相手のパターンを崩すかよ」ベニコさんはひとさし指をたてた。「恋愛も武術もスポーツもおなじこと。この場合はLINEの既読スルーだけど、ルッキングを成功させるのもそう。ようするに、これらはモテる——価値の高い——女のふるまいなのよ。既読スルーをして、モテる女のスタイルを真似るの。つけたいときに既読をつける。読みたいときに読む。その結果既読になろうが気にしない。返信したいときに返信するし、自分の時間の使い方は自分で決める。媚びない、自信がある、芯がある——なんてふうに。それが一貫していれば、男性に、どこか違う女性だと感じさせることができる」

「そう聞くとカッコいいですね」

「そして主導権をつなひきするように、少しずつ、あなたのポジションをとっていく」

「ポジション?」

「恋愛認知学の重要概念よ」ベニコさんはいった。「恋愛に優位な立場のこと」

「わかりました。おぼえます」

「どんな恋愛も、奥底に、優位な立場のとりあいがひそんでいる。ふりまわされずに男を口説くにはポジションをつくることが大事。モテる女のふるまいを真似ることが恋愛認知学の戦略だとしたら、あらゆる技術でポジションをつくりあげていくのが戦術よ」

「なるほど」私はあとで考えようと思った。

「戦略と戦術の違いはグーグルで検索しなさい」

「え、どうして私の心が読めたんです?」

「パンケーキちゃん」ベニコさんは微笑みながら私のほほを指でなぞった。「そして恋愛認知学の究極はモテる女のマインドを身につけること」

「マインド?」私は顔をなぞられながらいった。

「そう。形からモテる女を真似ることで、いつしか内側からモテる女になる」

「ほんとですか? まだ信じられないって感じですけど」

「今回のLINEでも、男との接し方がつかめてきたんじゃない?」ベニコさんはにやりとした。「変に媚びて下手にでるんじゃない。少し強みをみせつつ、こちらのペースをつらぬくだけ。そういうスタイルでいれば男友達も自然と増えていくわ——ちょっとドキドキする男友達がね」

「確かにオクムラさんとのLINEでも、あんまり気をつかわない方がいいのかなって思いました」私は柱から背中をはなした。「でもよく恋愛本では、逆に男の人のプライドをくすぐって、すごいすごいと持ちあげろって書いてありますよね?」

「すごいすごいで二時間終わる会話に意味などないわ」

「男の人ってそういうところありません?」

「それはランクの低い男」ベニコさんはいった。「そんな女の浅はかな演技もみぬけない男なんか手に入れて楽しい?」

「というか、いままでの男性がそんな感じだったから——」

「少ない候補のなかから選ぶとそうなるわね。そんな男に限って、簡単に、恋愛認知学で落とせるけど——まあ興味があればいいんじゃない?」

 ベニコさんは私の顔をみたあと、私の手から空になった紙コップをとった。しなやかに歩いて、道ばたのゴミ箱に捨てた。そのスーツに赤いマフラー、品のいい歩き方に、通りの大学生の集団はちらりとふりかえった。

 ベニコさんは柱にもたれた。気にもとめない顔だった。「いい? これからあなたの人生を何人もの男がとおりすぎていくでしょう。宝石みたいな男もいれば、よくみれば模造の男もいて、原石の男もいる。救いようのない泥団子だっている」

 夜というのに河原町通りに人影は絶えなかった。半分は男性だった。つまらない顔でポケットに手を入れる姿もあれば、やけに笑みを浮かべて姿勢のいい姿もあった。それぞれの夜があった。

「女は、その身に子どもを宿すようにできている。だから女の人生は、ただひとりの相手をみつけるためにある。あなたには、恋愛認知学をとおして、多くの男と関わって、もっと人生は素敵なものなんだと確信させてくれるような男と出会ってほしいの」

■今日の恋愛認知学メモ

・【LINEの既読スルー】恋愛認知学では、わざとコミュニケーションを中断して、自分の価値を高めるためにある。モテる女のスタイルを真似るということ。

・【ポジション】恋愛に優位な立場のこと。あらゆるメソッドを使って、しっかりポジションを作りあげていくことが重要。

・【マインド】モテる女の心がまえ。恋愛認知学を使って、形からモテる女を真似ることで、内側からモテる女になれるらしい——本当かな?

・恋愛認知学を学んでいるとドキドキする。これから、どんな男性と出会うんだろう?

第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」

https://p-dress.jp/articles/6078

【読むだけでモテる恋愛実験小説7話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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