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わたしは愛される実験をはじめた。第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」

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【読むだけでモテる恋愛小説3話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」

■第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」

 何百曲、何千曲、どれほど恋の歌を聴いてきたことだろう。

 考えてみれば、家族も、学校も、社会も、ひっきりなしに恋の美しさを歌うくせに、いざ男性を目の前にして、どうふるまえばいいかは一度も教えてくれなかった。だから毎週、ベニコさんとの時間は生まれて初めての体験だった。

「レッスン1」ずんぐり体型ながら、ワンカールした黒髪、赤い唇、欧米風メイク。ブランド物らしいブラックスーツを着て、アメリカ映画にでるキャリアウーマンのような雰囲気のベニコさんはいった。「とにかく目をあわせること」

「目ですか?」

「あなたは話のときに目をそらす癖がある——ほら、いまも。また私と目をあわすようにもどして。これがルッキングという技術よ」

 そういわれても、数秒後、またベニコさんの濃いアイメイクから目をそらしてしまった。相手の顔をみるのは緊張するし、むずむずする。これほど難しいと思わなかった。


 私は鴨川に隣接したレンガの家という感じの“三条スタバ”のソファ席から、窓の外の三条大橋をながめた。二月の寒空のもとに、京都人や国籍さまざまな観光客がにぎわっている。場所を決めなさいといわれ、お気に入りのここにした。ちなみに夏になればテラスができて、ドリンク代だけで河床を楽しめる。

「これがなんの訓練になるんですか?」私はホワイトモカを吸いこんでまたベニコさんをにらんだ。

「可愛いパンケーキちゃん」ベニコさんは紙コップを手に微笑んで首をかたむけた。

「ミホです」

「人間の強さは目に宿る」ベニコさんは目にひとさし指をそえた。「だから目をそらすのは、自信のない女のあらわれ。全世界に“私は自信がありません”とシグナルを発してるようなもの。コンビニ店員でも、駅の係員でも、同僚でもいい。とにかくルッキングの練習をしなさい。いまみたいに睨みつけるんじゃなくね。会話をするあいだ、しっかりみつめるの。べつに失礼なことでないから。そのうち、まわりの人間も思ったほど目を合わせないことに——そう強い人間はいないって——気づくでしょう」

「それとモテる女になることが関係あるんですか?」

 ベニコさんは笑った。「答えは大いにイエス。イエス。イエス。そんなモテない疑問はあとまわしにして、おりこうさんだから一週間ほど試しなさい」

 翌朝から、私は、ルッキングをはじめた。

 さっそく朝七時半、ゴミ袋を手に、玄関の扉をあけると、横の部屋の女性とでくわした。一度も交流はなく、いつもなら、たがいに無視するところだ。

 たがいの顔があった瞬間、私は、一人目のターゲットだと意気ごんだ。メイクしたての顔に力をこめるとカッと目をあけて、ギラギラ視線のレーザービームを放った。

 これで隣人も私の虜だろう。しかし女性はヤバいものでもみるような顔をすると、おじぎして、そそくさ階段をおりていった。二分後、電柱のもとにゴミ袋をおきながら恥ずかしくて死にたくなった。

 次は、三日に一度の楽しみである駅前のコンビニだった。いつものピーチミントを手にレジに並ぶと、おばあちゃんと眼鏡の男性がレジを二つ動かしていた。いつもは隠れイケメンである、眼鏡の彼のレジになるのを祈るけれど、今回だけは、おばあちゃんの方であってほしかった。

 しかし幸か不幸か——両方だ——お呼びのかかったのは彼のレジだった。とたんに心臓の鼓動が鳴った。二人目にしてハードモードでは?

 ミントをおくと、私は、ルッキングをしようと顔をあげた。無造作ヘアーに隠れたイケメンだろうが眼鏡男子だろうが目をそらすまでにらみつけてやる。

 その瞬間、彼と目があった——眼鏡の奥の瞳がみえた。秒殺だった。私は限りなく光の速度に近いスピードで顔をそらすと、財布の小銭を集めるふりをした。いっこうに一円玉を捕まえられなくて、顔が赤くなっていないかばかり気になった。あきらめて千円札をだした。

 けれど彼のおかげで、それ以降、気が楽になった。職場についてからは、相手の話を聞くときに、しっかり目をみることができた。とくに同性や、なんの対象でもない営業のおじさん連中は気楽だった。

 すぐに気づいたのは、数秒みつめれば、案外、恥ずかしそうに相手は目をそらすものだ、ということだった。みんな書類をみたりコップを取ったりと、理由をつけて、視線をそむけた。数日すれば、ドキドキしながらも、そんな様子を観察できるまでになった。

 あとは相手の目をみながら話をきくと、思わぬ効果として、気の利いたあいづちのタイミングがわかれば、その流れや内容もしっかり頭に入るようになった。

「最近、どうかした?」職場の女の先輩は、業務報告の途中、資料から顔をあげた。

「は、はい?」私は視線を外してどぎまぎした。

 先輩は私の顔をじっとみたあと「姿勢がよくなったのかな? そんな気がする」と首をかしげた。まさか愛される女になる練習中です、とはいえなかった。

 一週間をすぎたころには面白いことがおきはじめた。

 電車、ホーム、改札口、カフェ、スーパー、薬局、コンビニ。街のどこでも、まわりの人間から目をそらすことのないようになった。初日のような緊張もなくなった。むしろ顔をあげて、相手をみつめるのが自然なことに思えた。

 私の生活圏内には、女子高生や父親ほどのサラリーマンや子どもや老人もいた。けれど、いちばん目をあわせることになったのは——私が気にしているということかもしれない——同世代の男性だった。

 いままで朝の電車のなかで「あ、いいな」という男性と目があっても、すぐに顔を赤らめてそらしていた。でもじっと顔をみつめていると——あくまで自然な感じで——あちらが視線をそらせば、また私の方をみてくることもあって、なぜか微笑み返されることまであった。それ以上なにかあるわけでなかった。けれど他人と無言ばかりの生活で、秘密の暗号をやりとりできたみたいで胸がはずんだ。

 次の夜、今度からここよと店名が送られてきた。

 四条木屋町の“フランソア喫茶室”だった。その洋館の扉をあけると、歴史を感じる黄ばんだ壁に名画の複製をかけて、バロック調の装飾品のあいだをクラシックが流れていた。夜ふかしにカップを傾けるおちついた大人ばかりだった。さっそくスマホをだして写真におさめようとすると、ベニコさんにものすごく嫌な顔をされたのでやめた。

「お隣さんとは挨拶をするようになりました」私は赤いビロード張りの木製椅子にかけていった。「そういう人だって納得されたみたい。毎朝なごみます。でもコンビニの眼鏡男子はあいかわらず目をあわせられなくて——意識しちゃってるのかな?」

「たぶんね」ベニコさんは黒スーツでずんぐりした足を組んだ。

「私、わかりましたよ」私はストローに口をつけてミルクティーを飲んだ。「このルッキングって、人間関係の苦手意識をなくすトレーニングなんでしょう?」

「まず感想を聞きましょう。どう感じたの?」

「ふと、みんなも相手の目をみてないんだなって気づいたんです。なにか失礼とか、嫌われる気がするのかも。でも、そこに相手がいることを、ちゃんと感じないと、いいコミュニケーションはできないのかなって思ったんです。そのためには目をそらすんじゃなくて、しっかり目をむけることなのかなって。じゃないと相手のこともわからないですよね? いまは、こう、こいつを観察してやるぞって余裕まであるんですよ」

「いまもルッキングできてるわね」ベニコさんは珈琲を飲んだ。フランス国旗を模した刻印のかわいいカップだった。「この技はパーティーや合コン、仕事でも使えるわ。相手と自分が、どういう状態にあるのか即席で判断できるの。ぱっと顔をあわせて、目をそらした方が、心理的に負い目を感じてるってこと。もちろんルッキングを続けることで、その関係を固めたり、ひっくり返すこともできる」

「はあ、武術の達人みたい。すごく深いんですね」

「そしてすごくシンプルよ。野良犬のケンカだって、目をそらした方が負けだから。これは生物としての習性を利用しているだけ」

「確かにルッキングをして、なんとなく自信がつくのがわかります。いままで、なんで、こんな簡単なことができなかったんだろう?」

「女は待っちゃだめ」ベニコさんはいった。「取りにいくとね、案外、すぐ手に入るものよ」

 そのとき、鞄のなかでベニコさんのスマホが光った。

「ベニコさん、携帯ですよ」

「ありがとう。でも、誰かといるときに携帯をだすなんて、はしたない真似しないことにしてるから」

「どうしてですか?」

「それが私のプリンシプル。相手に失礼でしょ?」

「私に失礼もないですよ」ふと私は鞄のスマホ画面をのぞいてしまった。両目とも1.1と、視力は自信があった。つい声が大きくなる。「ねえ、トモヤって男性の名前ですよ」

「野暮という名のパンケーキ」ベニコさんは哀れそうな顔をした。

「ミホです」

「そういえば、トモヤは、あなたと出会ったときの店にいた二人組ね」

「え」私は再び声を大にした。「あのイケメンコンビの? 本当に? ベニコさん、前に、私のLINEは返信がこないっていってましたよね? ねえ、ここでベニコさんのLINEテクを教えてもらえません? そのイケメンにどう返信するんです?」

 ベニコさんはめんどくさそうな顔をした。けれど短い脚を組んで、あごに手をあてると考えるそぶりをした。「そうね、今日の話をするのにちょうどいいかも」と鞄からスマホをだすとLINEをあけた。

『先週は楽しかったです! バイクって興味ありますか? もしよかったらヘルメット用意するんで今度ツーリングしませんか? 海鮮のうまい店にいきたいと思って』

 私は顔がほてるのを感じた。恋愛偏差値の低い私がみても、これは、どう考えても熱烈なアプローチだった。夕暮れの海を背景に、イケメンの腰に手をそえて、バイクを二人乗りするベニコさんの姿が浮かんだ。

「どう返信するんです?」私の声は興奮していた。

 するとベニコさんは私をみたあと息をついて、スマホの画面を消した。そして鞄に入れた。カップに口をつけると目をとじた。「ここの珈琲は美味しいわ。京都で一番かも。フレッシュクリームを入れてあるからコクと甘みがあるの」

「ちょっと」

 ベニコさんは首をかしげた。

「はやく返信しないと」私はテーブルに両手をついた。「既読もつけちゃったし、こっちがLINEを読んだことバレてますよ。ほら、イケメンが逃げますよ」

「野次馬という名のパンケーキ」

「私のことはなんとでも呼んでください。それよりイケメンの心配してくださいよ」

「大丈夫」ベニコさんはいった。「愛される女は、男のLINEを既読スルーするものよ

「どういうことです? 嫌われますよ?」

「それはモテない女の幻想よ。現にLINEはきてるわけでしょ?」

 私はだまった。さっきの熱のこもった文面を思いだした。

「質問」ベニコさんはひとさし指をたてた。「愛される女は、生まれつき、愛される女なのかしら? つまり愛されない女はなにをしても一生愛されない?」

「そんなこと——そうじゃないと信じたいですよ」

「正解」ベニコさんは指を鳴らした。「たしかに生まれつきモテる女はいる。それはその女たちが、生まれつき、その方法を身につけているからというだけ。いい? モテるには方法がある。ピアノや自転車の乗り方とおなじように。あとから獲得できる技術なの

「それはベニコさんでも、さすがに信じにくいですね」

「なぜ?」

「やっぱりモテって、限られた人だけのものなんじゃないですか? モテる子はどこにいってもモテるし、普通の——いえモテない——私みたいなのは努力しても相手にされないんですよ。イケメンじゃなくてもいい。それでも男性から、熱烈なLINEがくるなんて想像もできません。だれもがモテるようになるなんて不可能というか、それこそファンタジーに思えるんですけど」

 自分の人生を思いかえした。教室の中心で、可愛い女子は、イケてる男子と笑いあっていた。あちら側はモテる女。そして、こちら側はモテない女。流行の雑誌どおりにメイクしても、男たちは見向きもしない。職場でも、合コンでも、街中でも。男はキレイな女とすれちがったときだけふりかえる。そんなことばかり痛感してきたのだ。

 沈黙があった。私はテーブル上の、氷もとけたグラスをみつめた。

「ルッキング」

 その言葉に顔をあげた。視線をあわせると、ベニコさんはやさしい顔だった。

「ひとつ」ベニコさんはかすかに首をふった。「まず努力が叶わないなんていっちゃダメ。確かに、そこらの恋愛コラムみたいな、欲求不満の女が書いた、まちがった努力をかさねてもモテやしない。でも、それとこれは別。人は生きているかぎり努力をしなくてはいけない。そして自分を高めていくもの——それ自体を疑ってはいけないわ」

「すいません」

「そして何度もいうけど、モテは身につけられる技術よ。そのための理論がある」ベニコさんは微笑んだ。「その証拠に、私はなぜ自分がモテるかを説明できるもの」

「モテる理由をですか?」

「あなたも私が決して優れたルックスでないことはわかるでしょ? だからこそよ。ルッキングも、この既読スルーもそう。すべてはメソッドなのよ」

「どういうことです?」

「そうね——恋愛認知学とでも呼ぼうかしら」

「恋愛認知学?」私は聞きなれない言葉を口でなぞった。

「私は愛を研究したのよ」ベニコさんはいった。「心理療法、精神医学、催眠術、NLP、表情分析、社会心理学、生物学、言語ゲーム理論——あらゆる対人スキルを恋愛に特化させた一連のコミュニケーションシステム。それが恋愛認知学。それじゃ、そろそろパンケーキ女のために解説しましょうか。女がモテるとはどういうことかを」

■今日の恋愛認知学メモ

・【ルッキング】相手の目をみること。むこうがそらすまで顔をそらしてはいけない。自信がある——モテる——人物だと思わせることができる。本当に自信もついてくる。

・ぱっと目をあわせたときに心理関係を測ることもできる。目をそらした方が立場は弱い。ルッキングを続けて、その立場を固めたり、取り返すこともできる。

・ルッキングに慣れたら軽いあいさつに挑戦すること。

・恋愛認知学って一体? 私でも愛される女になれるのかな?

第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」

https://p-dress.jp/articles/6068

【読むだけでモテる恋愛実験小説4話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が〝愛される女〟をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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