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わたしは愛される実験をはじめた。第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」

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【読むだけでモテる恋愛小説44話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」

 男らしくないんだよなあ。

『あ、そうなんですね。お仕事がんばってください。(絵文字)あの忙しかったら全然いつでも大丈夫なんで(絵文字)また大丈夫そうになったら教えてください!(絵文字)(絵文字)』

 デートを断ったらこんなLINEが飛んできた。

 相手はフィッシュ(モテない男性)のクリタさん。残念ながら、私の心はまったくひかれなかった。他に狙いたい男子がいるから断るつもりだった。 

『あとひとつ』ベニコさんからのLINEだった。『この文面から学んでおくべきことがある』

 私はスマホを手に、ベニコさんとやりとりしていた。スマホのむこうでは、ぽっちゃり体型ながら、ワンカールした黒髪、欧米風メイク。ブラックスーツを着て、あいかわらずアメリカンドラマのキャリアウーマンという感じでいるのだと思う。

 私はひとり暮らしの部屋でiPhoneをにぎった。『こんなLINEから学ぶことなんかなくないですか? ただのモテなさそうなLINEですよ?』

『だから、あんたはパンケーキ女なのよ』

『ひどい』私は唇をとがらせながら送信した。『だって、そうじゃないですか』

『なぜ異性の心をひきつけられなかったかの参考になるでしょう?』

 その言葉にフリックの指がとまった。たしかに、このLINEには心が動かなかった。だからこそ、なぜなのか考えるといいのかも。

『反面教師にするみたいな感じですか?』

『この世は優れた人間ばかりではないけど』ベニコさんは送信した。『誰に対しても良き生徒であれるというだけよ』

『そのふたつは違うんですか?』

『とんがりコーンとユニコーンくらい違うわ』

『全然ちがうじゃないですか』

 ベニコさんは無視した。『それより、この男のLINEで一番気になったのはどこ?』

『え?』

 私はLINEアプリを操作して、さっきの文面をみかえした。とたんに、そのカラフルな絵文字が目についた。ちょっと多すぎかも。『絵文字かな。可愛いんですけど──さすがに多いというか。こってりしすぎな感じ』

『その直感は正しいわ』ベニコさんは送信した。『実は恋愛認知学にも〝絵文字カットの法則〟があるのよ。絵文字を使えば使うほどモテなくなる──という法則ね』

 まさか、と、嫌な予感がした。『もしかして、それって女子もですか?』

『オフコース』

 高さもないのに座椅子からずりおちそうになった。不意打ちでパンチを食らった感覚だった。ひとごとだと思っていたのに。自分の恋愛事情に関係してくるなんて。

 正直、男性とLINEをするときは絵文字を使っていた。文章の最後に、なんとなく味気ない気がするから顔文字やキラリマークをつけたりして。昔から。自然に。それがモテない原因だったなんて考えたくもないんだけど──女なら許されるんじゃないの?

 私は抗議のフリック入力をした。『なんでですか可愛いのに』

『パンケーキちゃんも絵文字が好きなのね』

『女子ですから』

『じゃあ、どうして、いま使ってないわけ?』

 私の脳がとまった。二十秒くらいして、あわてて入力した。『はい?』

『別に他人が好きなことを否定はしないわ。人の数だけ好き嫌いはあるんだから。でも、もし絵文字を気に入っているのなら──なぜこの瞬間は使ってないのかときいてるのよ』

『それは、えっと』と、私は部屋のなかをみまわしたけど、どこにも答えは書いてなかった。将棋の羽生さんに、ぱちりぱちりと一手ずつ駒をつめられる対局相手の気持はこんな感じだろうなと思った。『ほら、そう、なんていうかTPOですよ』

『TPO?』

『場所とか、タイミングとか、あるじゃないですか』

『じゃあ親しい友人のときは使うの?』

『いえ、そこは使わないかも』

『興味ない男のときは?』

 私は手がとまった。『や、まあ、少しくらいは使いますけど』

『なるほど』ベニコさんは返信した。もはや王手だった。『媚びたい男がいるときだけ使うって意味のTPOなのね?』

『えと──それは』

『おわかり? おかわり?』

 私は投了した。『すみません。私がパンケーキ女でした。男性とLINEをするときだけ、気にいられたくて絵文字を使ってました──かわいく感じてもらえるかなって』

 一分後、返信があった。『哀れな女という名のパンケーキ』

『ミホです』

 ベニコさんは無視した。『あなたは好きな男の前でだけ媚びてしまっているのよ──相手によって態度をかえる女はモテない。スタイルが一貫してないということだから。いい? 恋愛認知学の基本にもどるけど、そもそも人間は媚びるように近づいてくる異性を信頼するどころか軽んじるようにできてるのよ。自分の身になって考えてごらんなさい』

 私はスマホから顔をあげて想像した。壁に、美術展のモネの絵ハガキをはっていた。

 媚びるように近づいてくる男性──まっさきにクリタさんが浮かんだ。いまも機嫌をうかがうような絵文字たっぷりのLINEを送ってくれている。実際、その文面に心を動かされはしなかった。その女性慣れしてない感じが、ああ、この人はつまらない人間なんだろうなと感じさせるから。

 反対に、まったく女性に媚びないタイプの男性もいる。Sっぽかったり、少し強引だったり、フラットだったり──そんなビジュアルを想像するだけでドキドキした。彼らのLINEを想像すると、たぶん絵文字は使ってないとおもう。

『なんか』私は送信した。『LINEからも媚びてるかどうかってわかるんですね』

『じゃあ、あなたもそうしないとね』

『あの』私は送信した。『じゃあ、みんなに対して絵文字を使うなら──好きな相手のときだけじゃなくて──ふるまいが一貫してるから使ってもいいんですか?』

『パンケーキのくせにするどいのね』

『人間です』

『いま説明したことだけで理屈を組み立てるとそうなるけれど』ベニコさんは送信した。『そもそも絵文字自体に〝媚び〟のニュアンスがふくまれているのよ。だから恋愛認知学的にはオススメしないわ。それが好きな男もいるけど。女性に媚びられて喜ぶ男はそれなりよ。せいぜいサラダに塩でもふりかけるみたいに、ひとつかふたつ使うくらいね』

『そんな感じなんだ』

『宝石箱でもぶちまけたみたいに散りばめるのは完全アウト』

『でも』私は絵文字を否定されてむっとしたのかもしれない。『自分の好みをおさえてまで、好かれる意味ってあるんですか?』

『マナーに好みは必要ないわ』

『はい?』

『趣味や好みに口をはさむつもりはない──好きにしなさい』ベニコさんは送信した。『けれどLINEや絵文字はまず第一にコミュニケーションツールなの。いい? そこに〝相手がどう感じようが自分の好みを押しつける〟という発想を持ちこむのは危険よ。相手がアウトレイジを好きだからって、暴言ばかり吐かれちゃたまらないでしょう?』

『そりゃまあそうですけど』

『これも極論だけれど〝そこが好みを貫いていい場なのか?〟にはシビアになることね。絵文字を使わなくてもフランクなやりとりはできるわ。むしろコミュニケーションをみがきたいなら、絵文字に頼らず、その空気感をつかむべきよ」

 私は座椅子にもたれて、そっか、と言葉にせず口だけうごかした。ちゃぶ台の上の湯飲みをとった。口につけた。とっくに、お茶は冷めていたけれど、私の身体のなかは熱かった。

『そもそもLINEって相手にことばを伝えるのが目的ですもんね──どうして人は絵文字を使ってしまうんでしょう?』

『不安だからよ』

『不安?』私は送信した。『なにがです?』

『相手の心とつながっているかどうか』

 その言葉は心のなかに無視できないものとして響いた。いつだって、それを不安に感じてきた気がする。私という人間は。ひょっとすると恋愛なんて言葉を知る前から──家族や友達のなかで──その不安はあったのかも。

 相手の心とつながっているかどうか。

『永遠のテーマよね』ベニコさんは私の心を見透かしたように送信した。『でもね、パンケーキちゃん。LINEで他人と心をかよわせることは不可能なの。面とむかって顔をあわせても心を伝えあうのは難しいのに──でしょう? それなのに、つい、便利だからとLINEだけでつながろうとしてしまう。そこに問題があるのよ。だから一通一通に心を乱されるし、不完全なコミュニケーションで衝突してトラブルもおきてしまう』

『なんか』私は唇をきゅっと噛んだ。『いろいろ思いだしてグサっときました』

『かもね』

『なんかLINEに頼りすぎてたのかなって』 

『愛される女になりたければ』ベニコさんは送信した。『コミュニケーションの限界を知ることよ』

 私は、その言葉に息をのんだ。そのあと、ゆっくり電子画面をみつめた。忘れてはいけないことに思えたから。大事なものとして、心のなかに保管しておくことにした。

 そのあとピーチミントを一粒がりっとかじっていると、スマホの通知が光った。いつものLINEの通知だった。しかし──ベニコさんからではなかった。同時に、自分の手がふるえていることに気づいた。意味不明だけど混乱のあまり、そこに自分が眠ってるんじゃないかと思って、ベッドにだれもいないのを確認した。リアルに夢かなと思ったから。

『ミホちゃん元気?』イケメンのテラサキさんだった。

■今日の恋愛認知学メモ

・【絵文字カットの法則】絵文字を使えば使うほどモテなくなるという法則。

・絵文字自体に〝媚び〟のニュアンスがふくまれている。

・コミュニケーションの限界を知ること。

・て、て、テラサキさんからLINEがきちゃった——どうすればいいの?

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛テク語りまくってます。

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