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わたしは愛される実験をはじめた。第52話「デートの約束は日にちまで決めてしまうこと」

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【読むだけでモテる恋愛小説52話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第52話「デートの約束は日にちまで決めてしまうこと」

『俺は基本ビールと日本酒だな』

『あ、日本酒いける人って貴重ですよね』

『それはあるね』

 よし、よし、よし、イケメンをデートに誘ってやる。

 合コンで打ち解けたあと、あっちからLINEがくるまで待って、恋愛認知学のメソッドを使って──頭から爪先まで全細胞が「ここで誘わなければ、一生、お前はパンケーキ女だぞ」と告げている気がした。スマホを強くにぎった。

 合コンから一週間くらいだけれど早すぎることはないと思う。二十歳をすぎれば、ほとんど他人の男女がLINEする目的なんて一つしかないから。

 私は壁の〝LINEの目的はデートにこぎつけること〟という張り紙をみた。

 逆にいえば、誘わないのに、だらだらLINEを重ねても意味がない。ダレる。特にタイガー(モテる価値の高い男性)が相手の場合「ああ、めんどくさい。ハッキリできない人間だな」と軽んじられたりもするだろう。誘える関係になったら──それでOKがもらえそうな空気感ができたら──さっさと誘うこと。段取りのよさもアピールポイントだ。

 でも、なんて誘おう?

 頭のなかにいくつも文面が浮かんだ。恋愛認知学を学んでも、いざイケメンを誘うとなると混乱した。長いLINEや、短いLINEや、お店のURLや、絵文字や顔文字をいれようかなんて──どれも正解な気がするし、どれも失敗する気がする。

 いや、違う。

 スマホを両手に首をふった。その悩み自体がズレてるのかも。すでにテラサキさんとは〝フランクシップ(なんでもいいあえる関係)〟を結べているはずだから。恋愛認知学的にいえば、フランクシップさえ結べば、どんなふうに誘ってもかまわない。

『京都タワーサンド』私は戦場で三万五千人の兵を率いる将軍が突撃命令するくらいの感じで、攻めどきだとフリック入力した。『いきましょか』

 送信ボタンを押した。ぽんと文字があらわれる。

 会話の流れをブッた切って誘いながら──それ自体が媚びてないことのアピールになる──前回の〝京都タワーサンド〟という話題を利用してる感じ。以前の自分では考えられないくらいの直球だ。

 ばくんと心臓の音がした。その余韻は祇園祭りのあいだ、京都市に流れる囃子の音みたいに細く長く響いた。きゅううっと胸の奥がしめつけられるのを感じた。

 お茶を飲むと、すぐにその緊張の正体がわかった。それは記憶の底から悪夢みたいにやってくるものだった。あ、いいかもな、と思った男性とLINEしていて、お願いするような文面でデートに誘った瞬間、あっさり未読スルーされて、昼さがりの鴨川でくちばしをあけてパンをほしがる鴨みたいに、じっとスマホをながめて、何日も、何週間も、返信こないかなあ、いそがしいのかな、なんて期待していた過去の感覚がよみがえるから──もちろん返信はなかったし、そのあとの追撃LINEもスルーされた。

 私は狙撃された大統領みたいに胸をおさえた。う、う、う、と、われながらアホみたいだけど、その記憶でグサっときたから。

 でも──あのときとは違うはずだ。私は右手をながめた。ベニコさんのもとで恋愛を学んで、少しは変われたはずだ。

 そこで、はっと電灯のヒモのたれた部屋のなかに顔をあげた。

 もしかすると、わたしは愛される実験をすることで、過去の報われなかった恋心を救おうとしてるのかもしれない。

 いままで必死に恋をしてきた。そして未熟な恋愛で傷ついてきた。たくさん失ったものがあった。たぶん、きっと、恋愛を学び治すことで、それを克服しようとしてるんだ──そんな気がした。

 私は銀閣寺エリアの散歩スポットである哲学の道をあるく哲学者みたいな感じで、うんうんうなずいた。めちゃくちゃいいことを思いついた感にひたった。机の上のピーチミントをとりだして一粒がりっと噛んだ。

 そのとき机の上でスマホがふるえた。

 予想外に、バイブの音が大きかった。その瞬間、のどの奥のダメなところにピーチミントが入りこんだ。ごほごほ盛大にむせた。目に涙をためて、何度か咳きこむと、玩具のピストルのBB弾みたいに口からピーチミントが飛びでて、机の上にワンバウンドしたあと放置していた水道代の請求書にはりついた。すっごいアホみたいだった。

 そんなことよりLINEだ。げほげほ涙をぬぐいながらスマホを手にとった。

『お』テラサキさんからの返信だった。『いくか』

 あっさり。

 私は身体中の力がぬけるのを感じた。こんな感じでよかったのか。本当に雑に誘っただけなのに。イケメンからOKをもらってしまった。いまだに心のどこかで、もっとデートは真面目に誘わないといけない気がしていたりするのに。

 感極まって電話をかけた。

「ベニコさん」私は両手でスマホを抱えた。「デートに誘うの成功しましたあ」

 電話のむこうで八秒くらい沈黙があった。

「で?」

「でって、ひどくないですか?」私はいった。「めっちゃ頑張ったんですよ」

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ」ベニコさんはいった。ぽっちゃり体型ながら、ワンカールした黒髪、欧米風メイク、あいかわらずアメリカンドラマのキャリアウーマンという感じなのだろう。「どうせOKの返事がきただけでしょ? さっさと日程を決めなさい。ここでグダるとフェードアウトもありえるわ

「たしかに」私は二秒くらい口をあけた。まだデートが実現するか決まったわけではなかった。私たちは気がのらなければ約束を破ることだってある。

「当日、待ち合わせ場所で、相手の顔をみるまで気をぬかないこと」

「え、それって、どうすればいいんです? なんか怖いんですけど」

「恐怖する女という名のパンケーキ」

「ミホです」

「いい?」ベニコさんは私の抗議を無視した。「とにかくデートの許可がでたあとは、さっさと日程を決めなさい。友人との約束でさえ、なんとなくスケジュールが決まらなくて、ナシになったことなんていくらでもあるでしょう?」

 私は思いかえした。確かに集まる約束をしていたのに、日程が決まらなくて、いつのまにか消えた約束がたくさんあった。「そうかも。てか大人になると、みんな忙しいから、決まらないときは決まらなかったりしますよね。それも社会人あるあるっていうか」

「ノン」ベニコさんはいった。「それはパンケーキちゃんが、いつまでも〝逆に空いてる日はいつですか? 教えてくれたらあわせますよ〟なんて甘ったるい台詞を吐いてるからよ

 私は図星すぎておどろいた。おもわずスマホを耳にあてながら、この部屋に監視カメラでもあるんじゃないかとみまわした。「え、どうしてわかったんですか?」

「私だからよ」

「それ説明になってません」

「はなから説明する気ないわ」

「え、でも、相手の予定を聞くのも──親切っていうか。やさしさのつもりなんですけど」

「いいえ」ベニコさんはいった。「自分でものごとを決められない弱さね

 その言葉は胸の中心に刺さった。確かにそうかもしれない。日程を決めるのって勇気がいることかも。あとで急用ができたらとか不安になるし、責任持てないし、先のことを考えるのはめんどうだから──だから相手に決めてほしくなる。

「ああああ」私はひざから崩れおちた。「やっぱり私は受け身なパンケーキ女でした」

「大事なことをおしえてあげるわ」

「はい?」私は顔をあげた。

「この世に果たされなかった約束なんていくらでもある」ベニコさんの声は不思議なやさしさに満ちていた。「でもね、これからの約束を実現させられるかは貴女にかかってるのよ」

 その言葉は救いのように胸に響いた。いつだって私たちはかんたんに約束を交わしてしまう。今度いこう、教えてあげるね、また会おうよ、というふうに。でも、ほとんど実現しなかった。それは偶然や、現代人の忙しさや、誰もリードしてくれなかったからじゃない。

「いままで私が約束を守ろうとアクションしてなかったんですね?」

「かもね」ベニコさんはいった。「小さな約束でも守れる女になりなさい。少なくとも守れない約束はしないことね。果たせなかった約束は自分の価値を下げるわ」

 次の瞬間、私は、デートの日程の取りつけ方をたずねていた。

■今日の恋愛認知学メモ

・デートの約束のあとは日程まで決めてしまう

・デートは、当日、相手の顔をみるまで気をぬかないこと

・「空いてる日を教えてくれたらあわせます」はものごとを決められない弱さ

・でも、デートの日程を決めるのってグダらない?

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「まだフラれてることに気づいてないの?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」
第45話「LINEは疑問符をつければ返事がくると思ってない?」
第46話「男に未読スルーされないLINEを作ろう上級編」
第47話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」
第48話「イケメンのLINEを既読スルーできる?」
第49話「愛される女は自分ばかりを愛さない」
第50話「モテる女のスリリングなLINEの作りかた」
第51話「彼と距離を縮めたいならLINEで〝悪口〟を共有する」
第52話「デートの約束は日にちまで決めてしまうこと」

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛について語りまくってます。アイコンをおすと飛べるよ。

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