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わたしは愛される実験をはじめた。第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」

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【読むだけでモテる恋愛小説4話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が〝愛される女〟をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」

■第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」

四条木屋町の“フランソア喫茶室”の時間は止まっているように感じた。愛されるとはどういうことか。それが明かされる瞬間だった。

「そもそもモテるとはどういうことかしら?」ベニコさんはひとさし指をたてた。

「いろんな男性に好かれるってことじゃないですか?」

「そうね」ベニコさんはワンカールした黒髪ボブをかきあげた。ずんぐりした体型ながら、仕立てのいいスーツを着こなして、なにかと海外映画のキャリアウーマンのような雰囲気だった。「じゃあ、どんな女がモテるの?」

「結局、可愛い子や美人ですよね。それから——」私は天井をみあげた。

「男がルックスで女を選ぶのはどうしてだと思う?」

「はい? それって遺伝子とかの話ですか?」

 ベニコさんはうなずいた。「若くて美しい女を選ぶのは、安全に健康な子どもを産ませるためだといわれている。そして——あと一つの理由はわかる?」

「いえ」

モテる遺伝子を残すためよ」ベニコさんはいった。「ようするに、生物は、自分の遺伝子がこれからも続いてほしいわけ。だから子どもは——遺伝子をのこせる——モテる人間であってほしい。そのために、モテそうな女の遺伝子を取り入れたいの」

「確かに。いくら健康でも、その子がモテなかったら遺伝子はのこせませんね」

 ベニコさんは考えるような顔でカップにミルクを入れた。スプーンでまぜると、珈琲に白い液体がとけた。「人間には、モテる異性を手にいれようという欲望がある」

「だから可愛い子ばかり得するんですよね。ずるくないですか?」

「そう?」

「顔って、たまたま生まれもったものじゃないですか」私はこれまでの人生を思いだした。ルックスのいい子に限ってそんなことないというけど、私からすれば、いつだって男性がその子の気をひきたがっているのがわかるというものだ。「学歴とか職業とか収入とちがって、努力して手に入れたわけじゃない。違いません?」

「違わないけど」ベニコさんは息をついた。「そんなパンケーキ女の理屈は、台所の三角コーナーのなかに捨ててしまいなさい」

「どうしてです?」私は同意されなかったので肩すかしをくった。

「あなたが吠えてもルールは変わらないからよ」ベニコさんは指先のコーヒースプーンをながめた。「いい? なにか不都合があったときに、それを否定しても、あなたの人生はよくならない。むしろ利用することを考える。それが生き方のコツ」

「利用?」

「生物は遺伝子をのこすために生きている。オスがモテるメスをほしがるのは当然のこと。これは不変のルール。だったら、それを利用すればいいだけじゃない

 黒いスーツをまとったベニコさんは不敵な笑みだった。思えばベニコさんだって、顔も身体も大きめサイズ。お世辞にもモテる女のスタイルじゃない。なのにイケメンをたぶらかしている——この魔法を学ぶためにきたのだった。

 ベニコさんはアイメイクの濃い瞳でみた。「ほかは?」

「ほか?」

「どんな女性がモテてるかって質問よ」

「外見以外にってことですか?」

 ベニコさんはそっと親指で唇にふれた。なぜかセクシーだった。「例えば、ほかの子の方が顔はいいのに、合コンで“あの子かわいい”といわせる女がいる。年齢なんか存在しないかのように、若い女をさしおいて、男に誘われる女がいる。街にでるだけで、五歳の少年から、八十歳の老人まで、やさしくされる女がいる」

「そういわれると——そういう人ってたまにいますよね」

「男はルックスで選ぶはずなのに、ルックスでないところで選ばれる女がいる。もちろんお金や肉体関係なしにね。そこに、なにかあると思わない?」

「いわれてみるとそうかも」

「じゃあ、そんなモテる女と、パンケーキ女のあなたは、なにが違うの?」

「それがわかったら苦労しませんよ」

「その頭は生クリームがつまってるの? だから苦労して考えなさいよ」

「はい」私はピーチミントをだして一粒をがりっと噛んだ。「え、性格とかですか?」

「それって悲しくならない?」

「なりました」

「安心して」ベニコさんはいった。しかしよく考えればフォローでなかった。「性格なんて言い訳だから。性格がよくてモテない人間もいるし、性格が悪くてモテる人間もいるわ。問題は、それ以前に異性をひきつけるものはなにかってことなの」

 私は室内をみた。古めかしい色の壁にフェルメールなんかの複製画があった。「えっと、なぜかモテる女性ですよね——なんとなくモテそうな雰囲気があるっていうか」

「そう」ベニコさんは珈琲カップをおいた。「雰囲気」

「はい?」

「じゃあ、その雰囲気ってなに?」

「え? 雰囲気は雰囲気じゃないですか? わかりません」

「わからないって悲しい響き」ベニコさんは首をふった。「雰囲気とは、認知を通してみた世界のこと——だと私は考える。それじゃ、そもそも男はどうやって、その女がモテるかを判断するのかしら? 遺伝子検査や精神分析でもするの?」

「まさか。それは男性にいいよられてるかとかですよ」

「後をつけて、どれだけ男が寄ってくるか数えるの?」

「そこまでしなくても一回みたらわかりますよ。普段の動きとか、雰囲気で感じるものですから——」

 はっとした。

「そうよ」ベニコさんは指を鳴らした。「男は、本当に、その女がモテているかをみてはいない。言動やふるまいからモテそうか——そんな雰囲気があるか——を本能で嗅ぎわけているにすぎない」

「そう、ですね」私はなんとか頭をはたらかせた。

「いい? この世界において“モテる女”と“モテそうな女”はおなじ意味なの。相手の認知がそう判断した以上、それが真実なのよ。そしてあらゆる手段を使って、男の本能に“モテそうな女”だと信じこませる一連のコミュニケーションシステム」ベニコさんは両肘をかかえて、にやりと笑った。「それが認知恋愛学よ」

 すでに京都は夜の時間だった。いつのまにかフランソア喫茶室には、夕食後に、上質な会話を楽しもうという住民たちのカップの音や声が増えた。

「どうやって、そのモテそうな雰囲気をつくればいいんです?」私はいった。「問題はそこだと思うんですけど」

「あら、パンケーキちゃん。雰囲気を操作するなんて簡単よ」

「よくわかりません」

「たとえば」と、ベニコさんはグラスを口につけた。「ここの水は比叡山の湧き水なの。だから軟水で口当たりがやさしい——わかる?」

 私もグラスをとった。その水は透明でキラキラしてみえた。口にふくむと、舌に、ほのかな甘みと冷たさを感じた。「たしかに、おいしいかも」

「嘘」

「え?」

「本当は違う」ベニコさんは微笑んだ。「それどころか、さっきハエが飛びこんでたわ」

 私は投げ捨てるようにグラスをテーブルにおいた。数滴飛びはねた。汚い汁のように口が苦くなる。ベニコさんをにらんだ。「ちょっと性格悪すぎません? なんで黙ってたんです?」

「っていうのも嘘」

「え?」

「全部嘘よ」ベニコさんは笑っていた。ブラックスーツを着た悪魔みたいだった。「この水は比叡山の湧き水でもないし、ハエがダイブしたわけでもない。ただの水よ」

「ただの水?」私は机の上のグラスをながめた。「本当ですか?」

「疑惑という名のパンケーキ」

「ミホです」

「そんな手品をみせられた猿みたいな顔しないで」

「ベニコさんのせいですから」

「パンケーキちゃん。その生クリームのつまった頭で考えなさい」ベニコさんは指をコンコンと頭にあてた。「はじめに“比叡山の湧き水”っていわれたときはどんな味がした? ハエがダイブしたっていわれたときは?」

「はじめは美味しい気がしました。ていうか、キレイにみえた。でも次の瞬間、ハエっていわれたときは——苦くて吐きだしたくなった」

「そうね」

「ベニコさんが変なこというからですよ。当たり前でしょ?」

「でもね」ベニコさんはひとさし指をたてた。「あなたは、ずっと同じグラスを手にしていたのよ。水の中身は変わらなかった。ほかの客や店員も断言するはず」

「それはそうです」私はうなずいた。

「これが大事なことなの」ベニコ先輩はこちらにひとさし指をつきつけた。「その瞬間、私の言葉によって、あなたの認知——世界だけが——変わったのよ」

 しかし私の頭はついてこなかった。「うん、つまりどういうことです?」

 たがいに顔をみつめた。沈黙のあいだをクラシックが流れた。

「国語力不足という名のパンケーキ」ベニコさんは哀れそうな顔をした。

「仕事おわりで頭が動いてないだけです」私は唇をとがらせた。「考えます」

 ベニコさんは息をついた。「今日は、あなたの頭がパンケーキしてるってことで許してあげるわ。いい? その水があなた自身なのよ。いかに“私はモテる女だ”という認知を自分にはりつけるか。“過去も現在も未来もモテる女だ”というシグナルを発するか——それが恋愛認知学じゃない

「なるほど」

 ベニコさんは直線の強い眉をひそめた。「本当にわかってる?」

「恋愛に関係あるんだとわかって頭が動いてきました」

「なんでもいいわ」ベニコさんは首をかしげた。「恋愛認知学とは、自分のことをモテる女だと周囲に思わせる技術よ。イコール、モテる女ってことになるから。この世ではモテそうな女こそ、モテる女なのよ」

「あ、それわかりやすいかも」

 私は“比叡山の湧き水です”とたすきがけする自分の姿を想像した。

 ベニコさんは心を見透かしたようにいった。「もちろん“私は比叡山の湧き水です”なんてラベルをアホみたいに貼るわけじゃないわ。それを巧妙にやるの。さっきみたいに言葉を使ってもいい。非言語のボディランゲージで示すこともできる」

「ボディランゲージ?」

「人間は言葉だけでコミュニケーションをしてるわけじゃないでしょう? たとえば——」と、ベニコさんはペンをだすと、伝票の裏になにかを書きつけた。

 そのあとベニコさんは珈琲を飲むと、急になにかを思いだしたように袖をまくった。けれど、そこにはなにもなかった。

「時計ですか?」と、私はスマホをだして十時ですと告げた。「大丈夫ですか? もう帰る時間ですか?」

 ベニコさんは笑顔になって椅子にもたれた。むっちりした足を組んだ。「帰る時間ではないけど、その伝票の裏を読んでみて」

 私はいわれた通りにした。

『パンケーキ女はスマホをだして時間を知らせたあと帰りの心配をする』

 おどろいた。

「これ、どういうことです? 予言? なんで先に書いてあるんですか?」

「簡単なことよ」ベニコさんはいった。「私が袖をまくって、時間を気にするふりをしたから。あなたは時間を教える気になった。そして、そんな言葉を口にした」

「いわれてみればそうですけど」

「そして私はひとことも話さなかった。これが非言語ボディランゲージよ。私たちは言葉なしにも十分、コミュニケーションをしてるし、ときには影響されて操られてもいるってこと。たとえば誰かが、うちわみたいに手で顔をあおいで、窓の外をみたら、窓をあけてあげたくなるでしょ? それは自然の流れだけど、それを利用することで、好きに相手を動かすこともできるわけ。催眠術師はこうやってコントロールするの」

「あ、でも、私がスマホで確認するかまではわからなくないですか?」

「それはオマケ」ベニコさんは鞄から時計をとりだすと腕にまわした。このために密かに外していたのだろう。「あなたが腕時計をつけないのと、この店に時計がないことはわかってた。だから時間を調べるにはスマホしかない。ついでにいうけど大人の女なんだから腕時計くらい買ったら? 時計はあとから選べる第二の顔よ」

「家にあるけどつけてないだけです」私は唇をとがらせた。

「ご自由に」ベニコさんはいった。「そして恋愛認知学のシステムは現代にも特化してる。なにも言葉や、いまのような対面のボディーランゲージに限らない」

「どういうことです?」 

「ちょうどいいからそのスマホを貸しなさい」

 ベニコさんは私の携帯をとると緑のアプリを押した。LINEをひらくと友人たちとのやりとり——悲しいことに女ばかり——をスクロールした。ある箇所でとまった。男性の写真アイコン。自転車の前で、照れながら微笑むオクムラさんだった。

「ちゃんと返信せずにいるじゃない」

「あれだけ追撃LINEはキモいキモいっておどされましたから」

「あら、そろそろ、あなたのキモい文面が無視されて一月になるのね」

「まだそれいいます?」

「安心しなさい」ベニコさんはにやりと笑った。「恋愛認知学はLINEにも応用できる。とりあえず、あなたに完璧なLINEテクを教えるから、この男を釣りあげましょう」

■今日の恋愛認知学メモ

・男性は本能的に“モテる女”を好きになる。

・そして言動やふるまいから、その女がモテそうかを判断する。

・だから言動やふるまいを〝モテる女〟らしくすることで“モテる女”だと思わせる。

・【ボディランゲージ】日常にあふれる言葉を使わないコミュニケーションのこと。手をうちわのようにあおいで「暑い」と伝えたり、ちらちら時計をみて「もう帰りたいのかな」と知らせたりなど。

・【恋愛認知学】自分のことをモテる女だと周囲に思わせる技術。説明されると、本当にあるのかもと思えてくる。しかも、それをLINEでも使えるってどういうこと?

第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」

https://p-dress.jp/articles/6076

【読むだけでモテる恋愛実験小説5話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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