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わたしは愛される実験をはじめた。第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」

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【読むだけでモテる恋愛小説5話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」

【これまでの恋愛小説】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」

■第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」

「LINEについて」ベニコさんはいった。「ほとんどの女が勘違いしてること」

 ベニコさんは、私のスマホを手に、ひとしきり、キモいわ、キモいわ、と連呼しながら、LINEの履歴をみた。ずんぐり体型ながら、ワンカールしたボブ、襟を立てたスーツを着こなして、海外映画のキャリアウーマンみたいだった。

やりとりを積みかさねても、男心を、LINEでつなぎとめることはできない

「どういうことですか?」私は顔をひそめた。私の信じる恋愛テクニックとは、とにかく連絡をとることだった。「だってLINEして仲良くならないと恋人にもなれないじゃないですか」

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ」ベニコさんは息をついた。「いい? 文章をやりとりするうちに、ドキドキして、お互い好きになって——なんて、中学二年生の二学期じゃない。そんなの、愛のなんたるやもわからない時代の錯覚よ」

 私は中学生といわれて顔を赤くした。「じゃあどうしろっていうんです?」

「せめてパンケーキ高等学校に進学したら?」

「そんな学校ありません。ていうか、そういうことじゃありません」

 ベニコさんはひとさし指をたてた。「ねえ、パンケーキちゃん。あくまでLINEはね、デートにこぎつけるツールなの。これは大前提。いまから細かなテクニックも教えるけど、それはこの目的のためだと忘れないで。いい? 文章のやりとりだけで男心を奪うことはできないの。そんな錯覚をおぼえることはできるけどね——自分だけの世界で」

「でも、男の人で、LINEとかメールを好きな人もいるじゃないですか」

「本当に?」

「いますよ」

「その男は、本当にLINEが好きだったの? 女の側が付き合わせたんじゃなく?」

「それは、わかりませんけど」私は髪先をつまんだ。「たぶんいると思う」

「もちろん、そういう男もいるでしょうね——いい歳して、ずっとLINEしたがる男もどうかと思うけど。じゃあ、こう説明しましょうか。LINEのやりとりは恋人になれてから浴びるようにしなさいってこと。恋人ってのは、顔をあわせた状態でしっくりくるかどうかでしょ? たしかにLINEのやりとりは楽。相手の顔もみえないから緊張しない。断られてもダメージは少ない。でも、そんな責任もなくて、傷を負わない行為で男を手にできるわけがない。スマホをいじるだけの、ぬるま湯コミュニケーションはここちいいでしょう? でもね、最後は、この現実世界で決着をつけるしかないの」

 私はその熱量と濃いメイクにおされてうなずいた。「はい」

「もちろん」ベニコさんは、シャツの袖を折って、ジャケットの袖からだした。素直にカッコよかった。「LINEをするなってわけじゃない。気の利いた交流ができても浮かれちゃいけないってこと。心の底は、あくまでデートのためだと忘れないで。いい? 百回のLINEより一回のデートよ

「LINEの目的はデートにこぎつけること——わかりました」

「常になぜそれをしているのか自分に問いなさい」ベニコさんは口づけする男女のように左右のひとさし指をくっつけた。「男を口説くには、カフェ・オレのように、冷静と情熱が50%ずつ必要よ」

 そして私は、恋愛認知学に基づいたLINEテクニックを学んだ。といっても、まずは初級編だけれど。

 二日後の夜、私は、洗濯物の散った部屋のなかでスマホをにぎった。

 ターゲットは——ベニコさんは練習台といった——オクムラさんだった。一月前にデートをしたきり、お礼メールの返信がなくなった。それから、ずっと追撃LINEを我慢していた。ベニコさんが「キモい」というから。

 ハチミツに手をつっこんだプーさんの絵の時計をみた。もうすぐ十時だ。

 私は恋愛認知学の“十時すぎの黄金時間メソッド”に従うことにした。ある調査によると八時〜十時が会社員の帰宅のピークらしい。なので十時以降にLINEすると、男性の九割にとって返信しやすいタイミングとなる。

 メッセージを入力した。ベニコさん指導のもと、練りに練った文面だった。

 送信のときは手がふるえた。五分前から画面をにらんで、決めた時刻に、ミサイル発射のようにボタンを押した。スマホは手汗でぬるぬる。胸はひきつった。

『オクムラさんですか?』

 シンプルすぎると笑わないでほしい。これは疎遠になった関係を復活させる“ワンチャンLINE”という技術だ。

 ポイントは三つ。シンプルであること。くすっと笑えること。返信しやすいこと。あくまで、ひさしぶりに思いだしたからLINEしました、私はなにも気にしていませんから、という軽いニュアンスで。

 ビニール人形の空気がぬけたみたいにベッドの側面にもたれた。

 恋愛認知学のメソッド通りに“ワンチャンLINE”を送ったからには、しばらくなにも考えないことにした。ワンチャンでもネコチャンでもなんでもこい。雑誌や漫画のつまった本棚においた小さな仁王像のフィギュア——ガチャガチャの景品を職場の先輩がくれた——をながめているとスマホがなった。Wi-Fiに心臓をつらぬかれた。

『どう?』

 ベニコさんからのLINEだった。ドキドキを返せと肩をおとした。

『いま送ったところです。わかってて、このタイミングで連絡するなんて悪い人ですね』

『悪い人だけど、モテる女よ』

『慣れましたけど』

『どうせパンケーキちゃんのことだから。全力疾走したあとのカバみたいな顔で、スマホをにぎりしめてるんだと思ったの』

『なんでわかったんです?』

『疑問符という名のパンケーキ』

『ミホです』

『いい? 男にLINEを送ったら数時間は布団につっこんでおきなさい。アホみたいな顔で画面をにらみ続けるなんてモテない女のすること。モテる女のふるまいをするという恋愛認知学のセオリーに反する。余裕のなさは相手に伝わるし、なにより、あなたのセルフイメージをさげることになる』

『ふむふむ』

『自分自身、モテる女だと思いこまないと』

『わかりました!』

『一応いっておくと、うぬぼれた勘違い女とは違うから。いずれにせよ、むこうも生活がある。あなたも——』

 そのときスマホがふるえた。ベニコさんとのやりとりで油断していたので、なにがおきたか把握するのに三秒かかった。新着LINE。胸が鳴った。オクムラさんだった。

「イエス」家賃五万円の部屋のなかで私はさけんだ。「恋愛認知学!」

 私はスマホをにぎった手をふりまわした。本棚のなかで、小さな仁王像のフィギュアも左手のひらをむけて「ハァイ」と祝福してるみたいだった。

 しかしここで満足してはいけない。壁にはった“LINEの目的はデートにこぎつけること”という文字をにらんだ。これは釣りだ。こちらの針に、魚が、食いついたからと浮かれてはいけない。せっかくの獲物も逃げてしまう。

 私は二分ほど時間をおいて、そのLINEをあけた。すぐに既読をつけると返信を待ち望んでいたモテない女だと主張することになるから——その通りなのだけれど。

『オクムラですよ笑』

 投稿時間をみると、私がLINEを送ってから、二十四分後に返事があった。

 スケートの紐をむすぶようにはやる心をおちつけて、すぐにも返信を打とうとする指を押さえた。私も同じくらい時間をあけて返信するためだ。

 これは“鏡のメソッド”というものだ。カップルの空気感が似ているように、人間は、自分と似たペースの人間に好感を持つ。それを利用して、あえて返信速度をあわせることで「フィーリングがあうかも」と感じさせる。少なくとも、すぐに女側ばかりが返信して、男側にプレッシャーを感じさせる“重たいLINE”をさけられる。

『よかった。オクムラさんじゃなかったらどうしようかと笑』

『なんすかそれ笑』

 返事をすると二分ほどで返信がきた。むこうも会話モードになったのだろう。私も二分ほどで返事をする。LINEは内容よりテンポだ。

『いえいえ笑 サイクリングは順調ですか?』

『寒いんで、最近いけてないんすよ』

 ちなみに“鏡のメソッド”は返信のタイミングをはかるだけの技じゃない。

 文章そのものにも使える。メッセージの長さ。どの文字を、漢字で、ひらがなにするか。“!・?”の量。“笑・(笑)・w”のタイミングと、どれを使うかも。

『さすがに寒いですよね』

『ほんとそれです』

『そんな日は家のなかで腹筋とかするんですか?』

『どういうことですか笑』

 といっても、私から、気の利いた言葉がでるわけなかった。逐一、スクリーンショットをとってはベニコさんに泣きついた。はやくしないと時間が、と急かした。私がヘルプを求めるたびに、三十秒ほどで、ベニコさんは絶妙な返しをくれた。

 そうしながら、きっちり“鏡のメソッド”を守った。すると二分ずつだったLINEのテンポがはやまった。ついに会話のように一分以内でラリーするようになった。

『勝手なイメージです笑』

『身体を鍛える男みたいな?』

『ですね』

『自転車が好きなだけで、体育会系じゃないですから笑』

『とかいって、ほんとはいまも腹筋してるんじゃないですか?』

『なんでですか笑』

『床の上でLINEしながら腹筋』

 さらに“短文のメソッド”をこころがけた。LINEはメールとは違う。手軽なコミュニケーションツールなのだ。まず気がねなくやりとりできる関係をつくること。長文は、わざわざ距離を遠ざけることになるし、相手に、おなじくらいのものを求めることになり逆効果——たしかに考えてみれば友人とは短文だったりする。

『なんでやねん笑』

『あ、ツッコミでた笑』

『すいません』

『いえいえ、ふざけてしまいました』

『でもサイクリングじゃなくても外はでたくなりますよね』

『やっぱり男は飲みですか?』

『そんな感じです。同期でこっちに転勤になったやつがいるんですよ』

 狙った男子から返信がきて、ぽんぽんLINEできている状態。脳内でアドレナリンがでっぱなしだった。女性ホルモンも分泌されまくりだろう。明日の朝、肌もピチピチになってそうな気がする。

『いいじゃないですか』

『それが。ちょっと癖の強いやつなんですよ』

『十秒に一回しゃっくりするとかですか?』

『なんでやねん笑』

『二度目でた笑』

『そんな同僚だったら笑って仕事になりませんから』

 時計をみると十一時四十分すぎだった。一時間ほどやりとりしていたことになる。もう仕事なんか忘れて、一晩中、このままでいいと思った。

 そのときベニコさんからLINEがきた。気づけば下手なりにヘルプを求めなくなっていた。ちょっと前に、なんとか進んでいると報告したきりだった。

『既読スルー』

 はっとした。

 そのとき横をみた。窓の前においた姿見をのぞいた——その前には、ドライヤーと化粧品が散らばっている。その鏡のなかに、よだれをたらした犬みたいにスマホを握っている自分の顔があった。

『ベニコさん説明してくれなかったけど、それ本当に本当に本当ですよね?』

『あたりまえ』

『いま、上手くLINEできてるんですよ?』

『だからこそ』

『ベニコさんのこと信じますからね?』

『いいからパンケーキ女はだまって恋愛認知学を信じなさい』

『あとから、あれは嘘とかなしですよ? 既読をつけるってことは、こいつ読んだなって、オクムラさんにもわかるってことですよね? なのに返さないって嫌われません?』

『クエスチョンが多い女はうざくて嫌われるわよ』

『ねえ、じゃあ、せめて未読のままってのはどうです? このままLINEを開かないで。ほら、寝ちゃったと思われるかも』

『質問』

『はい?』

『あなたは、このままモテない女でいたいの? それともモテる女になりたいの?』

 ベニコさんの文字は、目の前で突きつけられた短刀のように胸にささった。そうだった。危なかった。私はモテる女に——愛される女に——なる実験をしているのだ。

 つばをのんだ。

 オクムラさんの画面にもどした。オクムラさんが、おかしな同僚についてLINEを送ってくれたところだった。既読をつけた。その文面を読んだ。

 そして、そのまま布団につっこんだ。

 モテる女は既読スルーを使いこなす。それも大事なところで——なぜ?

 心のなかは気が気じゃなかった。オクムラさんに、ごめんなさいの嵐だった。

 来週、絶対ベニコさんに種あかしさせてやる。鞄からピーチミントをとりだして、一粒がりっと噛んだ。部屋につんだ洗濯物の山からタオルをひっぱりだした。まずはシャワーを浴びてこよう。

■今日の恋愛認知学メモ

・LINEの目的はデートにこぎつけること。

・【十時すぎの黄金時間メソッド】夜の十時以降にLINEすること。男性にとって返信しやすい時間帯になる。まちがっても狙ったようにジャストに送ってはいけない。

・【ワンチャンLINE】疎遠になった相手にLINEをして関係復活を狙うこと。ポイントは三つ。シンプルであること。くすっと笑えること。返信しやすいこと。

・【鏡のメソッド】相手に返信速度をあわせること。フィーリングのよさを感じてもらえる。ほかにもメッセージの長さ、どの文字を漢字でひらがなにするか。“!・?”や“笑・(笑)・w”のタイミングや量、どれを使うかにも使える。

・【短文のメソッド】短文でやりとりすること。返信をもらいやすくなる。友人とのLINEを思いだすこと。

・なんで男性のLINEを既読スルーするんだろう? 大丈夫なの?

第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」

https://p-dress.jp/articles/6077

【読むだけでモテる恋愛実験小説6話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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