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わたしは愛される実験をはじめた。第48話「イケメンのLINEを既読スルーできる?」

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【読むだけでモテる恋愛小説48話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第48話「イケメンのLINEを既読スルーできる?」

■第48話「イケメンのLINEを既読スルーできる?」

 イケメンをデートに誘う日がくるなんて。

 合コンで知り合ったテラサキさんとLINEが続いていた。京都タワーの下にある屋台村〝京都タワーサンド〟についてだった。正直、盛りあがってると思う。

 どう考えてもデートに誘うチャンスだった。

 ただ、ここで「ぜひ行きましょう!」と食いつくのは恋愛認知学的にアウトらしい。モテない女だと価値を下げることになるから。特にモテる魅力的な男性(タイガー)はそういう匂いに敏感だ。あっというまに軽くあつかわれてしまう。

 とにかく食い付くタイミングを〝スカす〟のが大事。すぐには食い付かないこと。反応するタイミングをずらしてポジションを作ること。そして余裕をみせつける。

「ベニコさん」私はスマホを耳にへばりつけた。「すでにテラサキさんとは京都タワーサンドで盛りあがってます。ここで食いつくのを〝スカす〟のが大事なのもわかりました。この話題も続いてるわけだし──すでにスカしてることになるなら──そろそろ誘うタイミングってことですか? それとも、さらに話題を変えてからですか?」

 私の頭は混乱しっぱなしだった。すぐに食い付かない方がいいのはわかった。でも、どれくらい時間をおけばいいのかはわからなかった。ベニコさんが送ってくれた一覧(1.誘いのLINEから3〜5往復してから反応する。2.しばらくして話題が変わってから誘いかける。3.後日誘いかける)を読んでもピンとこなかった。

「パンケーキちゃん」電話のむこうでベニコさんはいった。ぽっちゃり体型ながら、ワンカールした黒髪、欧米風メイクで、あいかわらずアメリカンドラマのキャリアウーマンという感じなのだと思う。「人間の価値は、なにを答えるかでなく、なにを問えるかよ」

「はい?」

「そのLINEをいかに〝スカす〟のが正解か?」ベニコさんはいった。「たとえ答えが思い浮かばなくとも、それを問うことができている時点で価値があるわ」

「そうなんですか? いまも頭のなかでヒヨコがぴよぴよいってる感じなんですけど」

「とにかく」ベニコさんは私のたとえを無視した。「それを問えている──なにがわからないかわかっている状態──は限りなく正解に近いわ。昨日のパンケーキ女のあなたなら、そもそも、なにが問題かすら認識できてなかったわけだから。だから〝スカす〟という発想を身につけただけで十分な進歩よ」

「変ないいかたしますね。どういうことです?」

「テラサキをどうすればデートに誘えるかはわからないということよ」

 私は五秒ほど口をとじた。「マジですか?」

「マジよ」

「あのベニコさんにもですか?」

「あのベニコさんにもよ」ベニコさんは笑った。「男だって──人間だって──生き物。最後は神様のサイコロ次第ね」

「そんな」私は比叡山の谷底につきおとされた気分になった。恋愛認知学をマスターしたベニコさんなら、いつでも百点の答えを教えてくれる気がしていたから。「こうすればテラサキさんとデートできるっていう答えはないんですか?」

恋愛に正解はない」ベニコさんはいった。「けれど確率を高めるマインドやメソッドは存在する──それが恋愛認知学。魔法のようにみえるけれど魔法とは違うわ」

 私は部屋のなかで思わず立ちあがった。しかし理由はなかった。カーペットの上を、京都市動物園の檻のなかのミーアキャットみたいにうろうろすると、また座椅子にすわった。われながらアホみたいだと思った。

 しかし、その言葉はちょっとした衝撃だった。いわれてみれば当たり前のことなのかもしれない。けれど心のどこかでは〝絶対こうすれば正解!〟みたいなものがある気がしていたから。恋愛に正解はない、ということがすでに発見だった。

「そうですよね」私はいった。「百パーセント成功する方法なんてありませんよね」

「あやしいセールスレターのなかにしかないでしょうね」

「あ、絶対やせるみたいなサプリ買ったことがあります」

「広告文に釣られる女という名のパンケーキ」

「ううう、われながら安っぽい」

「リアルを生きるってそういうことよ」ベニコさんはいった。「あえて正解というなら。覚悟をもって最善だと思うアクションをとりなさい。リスクを負ってね

「リスクですか?」

「リスクを負っている人間は魅力的にみえるわ。逆にいえば、つまらない人間は、ビジネスでもコミュニケーションでも、リスクを負えてないってこと。いい? ここぞというときにはリスクを負ったアクションをしなさい。でないと人間の魅力はコーラの炭酸の泡のように消えてしまうわ──そのための武器は教えたつもりよ──それが、あなたの正解になる」

「私の正解?」その言葉にどきっとした。

「そうね。ひとそれぞれの正解がある。もちろん、いつものように私の考える正解をすすめることもできる。けれど、あなたは今回テラサキというタイガーを狙おうとしているの。いつまでも私の顔色をうかがってるようではいけないわ。真に愛される女になるためには、あなたが、自分の正解をみつけられるようにならないといけないの

「そっか」と、私は考えた。

 確かに、いつまでも答えを待つばかりではいけない。これから強敵テラサキさんを狙おうというのだから。例えばデートできたとしても──ほんと例えばの話なんだけど──いちいち質問はできない。私自身、正解をみつけだせる女にならないといけないんだ。

「必ず成功するなんて保証はどこにもないわ」ベニコさんはいった。「けれど、どんな結果になっても後悔のない選択はできるはずよ。恋愛認知学を活かして、感情にふりまわされることなく考えぬければね」

「わかりました」私はうなずいた。「やってみます」

「泣きつかない?」

「いえ泣くかもしんないけど。そのときは、よろしくお願いします」

「いいわ」ベニコさんは電話を切りながら笑った。「何度生まれ変わっても、おなじ選択をして、おなじ場所に立っていると胸をはれる人生をめざすことね」

 そこで通話は切れた。部屋のなかは静かだった。テーブルには、ダイレクトメールやレシートや謎の容器やどこでもらったのかわからないお菓子が散らばっていた。どれほど経験をつめば、これほど、やさしい人になれるんだろうと思った。

 私はスマホをみつめた。深呼吸をした。再度、LINEをひらいた。

 テラサキさんとのラリーをストップしていた。文面は京都タワーサンドで盛りあがっているところだった。『京都の有名店をつまみ放題』というテラサキさんに『大人になっても楽しいやつじゃないですか』と返して『ほんとそれ。軽く飲みすぎた』と返事がきたところだった。まだ既読もつけていない。

 私は座椅子にすわりなおした。どのように〝スカす〟かを考えることにした。

 私が「こんどいきましょうよ!」と、食い付くことなく京都タワーサンドの話が続いている。
すでに〝スカして〟いるわけだ。だから、ここで食いついてもいいのかも。がっついている──モテない女みたい──とは思われないだろう。むしろ雑談をつづけてから、さっと誘いかけるなんて余裕を感じさせられそう。

 私はピーチミントをとりだして一粒がりっとかんだ。

 どうするのが正解なのかな。こうしている間にも、テラサキさんを待たせていると考えると、ソワソワする。はやく決めないと悪い気がしてしまう。

 そのとき、頭の奥にぴこんとライトグリーンの光が浮かんだ。あれ。もしモテる女だったら、そんなこと気にするだろうか? いつLINEを返信するかどうかなんかで──デートに誘えるっぽいときでさえ──不安になるのかな?

 そこで「モテる女のふるまいを真似ることでモテる女になる」という恋愛認知学のセオリーを思いだした。いつだって、この原点に、どうすればいいかのヒントがある。そう考えると力がわいてきた。私はLINEをひらくと『ほんとそれ。軽く飲みすぎた』に既読をつけた。

 そして布団の上にスマホを放った。

 部屋のすみの洗濯物の山からタオルをとると、シャワーを浴びることにした。もし私が愛される女だったら、あれこれ気にもしないだろう。明日にでも返信すればいいかと思った──そう行動することにした。

 まさかイケメンのLINEを既読スルーする日がくるなんて。正直、心臓はドキドキしっぱなしだった。でも風呂場でメイクをおとしながらワクワクしていた。

■今日の恋愛認知学メモ

・恋愛に絶対の正解はない。

・どうやって〝スカす〟ことが正解かは誰にもわからない。しかし〝スカす〟というメソッドを身につけていることが大事。

・迷ったときは「モテる女のふるまいを真似ることでモテる女になる」を考える。

・絶対にテラサキさんとのデートにこぎつけてやる。

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」
第45話「LINEは疑問符をつければ返事がくると思ってない?」
第46話「男に未読スルーされないLINEを作ろう上級編」
第47話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」
第48話「イケメンのLINEを既読スルーできる?」
第49話「愛される女は自分ばかりを愛さない」
第50話「モテる女のスリリングなLINEの作りかた」

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛テク語りまくってます。

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