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わたしは愛される実験をはじめた。第58話「モテる男をドキドキさせる話題の作りかた」

【読むだけでモテる恋愛小説58話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第58話「モテる男をドキドキさせる話題の作りかた」

 待ち合わせ場所にデートの相手がいなかったときの対処法なんて知らなかった。

 マーク・バイ・マークジェイコブスの腕時計をみた。八時十九分。待ち合わせは、八時十五分だけれど──恋愛認知学の遅刻メソッドに従って──数分すぎてから到着したわけだ。

 テラサキさんはいなかった。

 スタバの店内、ガラス扉の前、テラス席、左右の建物、むかいの道路までみたけれど、いなかった。完全に。おでこに汗がじんわり浮かんだ。やばい、これ。

 すぐに考えたのは「変に遅刻したから怒って帰ったのかな」ということだった。でも数分待たされただけで帰る人じゃないと思う。まだ来てないんだろうな。

 そこで次には「今日がデートだって忘れてるんじゃないかな(いや昨日リマインドしたからそんなはずない)」とか「まだ仕事が長引いてるんじゃないかな」なんて、Yahoo!知恵袋のトップページみたいに、いろんな声がぐるぐる頭のなかをまわった。

 スマホにも連絡はなかった。なにか連絡すべきなのかな。なにげなく「ついたよ!」くらいの感じで──負けな気もする。

 そのままスタバの前に立ち尽くした。約束をすっぽかされた女には、立ち尽くす以外にすることがなかった。愛しそうに腕を組んでいる男女カップルや、大声でさわぐ学生たち、乾杯のビールを楽しみにしている顔の会社員の集団など、平日の夜らしいにぎやかさだった。

 さらに時間がすぎた。八時二十二分。

 あんなに約束したのに。ふと自分の身体をみると、当たり前だけど、この日のために考えぬいたファッションで──リブタートルの半袖ニットはこの日のために買った──それが視界に入ると一層みじめになった。スタバの緑のマークに背をむけて、もう泣きそうだった。 

 その瞬間、横断歩道の奥から、早歩きにやってくる男性の姿がみえた。

 先に本能がびびっときた。そのスーツ姿は──テラサキさんだった。どう考えてもテラサキさんだった。そこからは十五秒くらい時間が透明のまま止まった気がした。

「遅れちゃった」テラサキさんはいった。黒のスーツに紺のネクタイ。Sっぽい顔で憎らしいほどのイケメンだった。「オンライン会議で白熱してたら時間すぎてたわ」

 私は脳の処理がおいつかないままに「ああ、いええ、ええ、はい」と意味不明な声をもらした。

「待った?」

「いえ、大丈夫です」どうにか次に口をついたのもそんな言葉だった。

 心は跳ね馬のように飛びあがった。正直、もう来ないとあきらめていたところにスーツ姿のイケメンを撃ちこまれて動揺しないわけがなかった。もう完全に、お越しいただきありがとうございますの精神で土下座したくなった。ドキドキだ。このまま手をひっぱられたらどこにでもついていくだろうなと思った。

 そこでハッと気づいた。これじゃだめだ。

 これは恋愛認知学の〝遅刻メソッド〟じゃないか。少し遅刻して、ああ、ごめんねと軽くだけ謝ってみせるなんて。すると待たされた側のポジションがさがって──案の定、私はドキドキしてしまっている。

 そこで気づいた。恋愛認知学のメソッドは〝モテる人間のふるまいを真似ることでモテる〟というもの。つまりタイガー(モテる男子)は、ナチュラルに同じことをしてくるのだ。

 ちょっと怖くなった。これがタイガーとのデートなのか。なにも知らないままだったら、この出会い頭からドキドキさせられて、ふりまわされたまま一日が終了していただろうな。なんとなく剣豪同士の戦いで、はじめの一太刀で、あっさり勝負が決まるみたいに。

 心を強くひきしめた。すううと鼻から息をはいて、余裕の表情をつくろった。

「いえいえ」私はペースを取りもどそうといった。これは〝出会い頭の三手メソッド(あらかじめ話題を三つほど考えておくというもの)〟だった。「なんか今日ぬくいですよね」

「うん? 確かに」

「ていうか、スーツだとなんか雰囲気いい感じですね」

「え、マジで?」

「マジですよ。500億円くらい動かしてそう」

「まだ言うのかよ」テラサキさんは笑った。「めっちゃいじってくるじゃん」

 私は続けた。ここまで考えていた台詞だった。話を先に運ぶほどに、少しずつ緊張がほぐれていくのを感じた。「ていうか、めっちゃお酒のむテンションなんですけど」

「だね。俺も仕事終わって、めっちゃ飲みたい」

「お、ビールですか? 日本酒ですか?」

「あー、一杯目だけビールかな。ミホちゃんは?」

「日本酒の気分だったけど、いまの話きいてビールもいいなと思ってしまった感じです」

「つられたパターンだね」

「ですね」と、私たちは笑った。「行きましょうか」

 とにかく「LINEで作ったフランクシップ(何でもいいあえる関係)を会ったときにも続けること」に気をつけた。ここで、おどおどしていたら「なんだ。スマホのなかでだけ威勢がいいのか」と軽んじられるから。一気にポジションダウンだ。

 デート序盤のポイントは「LINEや前の会話で盛りあがった話題」に触れること。

 これは恋愛認知学の〝リプレイ・メソッド〟になる。過去のウケた会話をくりかえすことで、そのときの空気感を再現するというもの。話題にこまったときは新しいネタをさがすときじゃない。過去の盛りあがったやりとりを思いだすときなのだ。

 例えば一回目のデートが上手くいったとする。そこで二回目のデートの序盤で──普通なら再度改まってしまうけれど──そのときに盛りあがった話題を持ちだしてみる。すると一気に〝一回目の良いムード〟にもどるというわけだ。

 今回は以前のLINEから「500億円くらいの商談」というワードを引っぱってきた。そのままLINEでつくりあげたノリ(フランクシップ)を火の鳥みたいによみがえらせるわけだ。

「可愛い店多いよね」京都タワーに入ると、テラサキさんは左右をみた。

「なんか新しくなりましたよね?」

「うん。リニューアル感ある。ずっと工事してたもんな」

「リニューアル感ありますね」

「真似した」テラサキさんは笑った。つくづくイケメンだった。「お、あっちだ」

 私たちは観光気分で盛りあがりながら歩いた。京都っぽいスイーツをならべた、一階の、お土産売り場をとおりぬけて──ラスク屋の女の子がテラサキさんをちらっと見上げたのに優越感をおぼえたのは内緒だ──エスカレーターで地下におりた。

 京都タワーサンド。

 大人のフードコートが広がっていた。レストランみたいな照明のもとで、背の高い椅子とテーブルがそこらにあって、あちこちに寿司、焼き鳥、焼肉、ラーメン、蕎麦、ステーキ、餃子、エスニック、デザート、バーまで──京都の有名店の看板がならんでいた。

 壁際でテーブルを挟んでビールと餃子をつついているカップルもいれば、中央エリアでは団体が笑っていて、蕎麦屋のカウンターで会社帰りにひとりで食べている女子社員もいた。 

「お、あそこしよっか」と、テラサキさんはいった。

 メキシコ料理屋の前のテーブル席だった。あ、はい、と流されるまま椅子にかけた。ナチュラルに奥側の席にとおされて、あら、なんて紳士なのとキュンキュンした。

 しかし、またもハッと我にかえった。恋愛認知学の「デートはカウンター席にすべし」という原則に反していたから。顔をみない方が緊張しないし──真正面にイケメンがいて冷静に食事できる女など地球にはいない──声も届けやすくなるのに。

「好きなお店で買って、ここで食べる感じなんだよ」

 そこでテラサキさんはジャケットをぬぐと──我ながらパンケーキ女なのはわかってるんだけど、その動作がセクシーすぎたのと男性の匂いがして鼻血を4.5リットルだして死ぬかとおもった──席をキープするために小さくたたんでテーブルの端においた。

「買いにいこっか」と、歩きだすテラサキさんの背中をみて、ぶるっとした。

 そうだ。本番なのだ。この日のために恥も汗もベソもかいてきた。このままテラサキさんのペースに巻きこまれて終わっちゃいけない。私の愛される実験は、いま、まさに本番中なのだ。さっと七センチのヒールを前に動かした。

■今日の恋愛認知学メモ

・タイガーはナチュラルに恋愛認知学のメソッドを使うことがある。

・【リプレイ・メソッド】過去の会話をくりかえして、そのときの空気感を再現する。

・私だってがんばってきたんだから!

【祝・わた愛が書籍化しました!】

貴女の恋を叶える「魔法の本」を書きました。

楽しみながら(ときに共感して泣きながら)恋愛を学べます。ミホやベニコさんも登場しますが、恋愛の相手や、解説するメソッドは異なります。ストーリーの違いも楽しみながら、貴女も愛される実験をはじめませんか?

・恋愛がうまくいかない
・デート中に何をしゃべればいいかわからない
・付き合ったあとに関係を長続きさせたい
・脈ありサインの一覧がほしい
・デートでするべき会話の話題リストがほしい
・振り回される恋から逆転したい
・いつも悪い男性を好きになってしまう
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・自信をつけたい
・LINEの返信がないところから復活したい
・じっくり紙の本で「わた愛」を読みたい

という方にオススメです。恋を叶えたい方は、いますぐ下の詳細をクリックしてください!

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「まだフラれてることに気づいてないの?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」
第45話「LINEは疑問符をつければ返事がくると思ってない?」
第46話「男に未読スルーされないLINEを作ろう上級編」
第47話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」
第48話「イケメンのLINEを既読スルーできる?」
第49話「愛される女は自分ばかりを愛さない」
第50話「モテる女のスリリングなLINEの作りかた」
第51話「彼と距離を縮めたいならLINEで〝悪口〟を共有する」
第52話「デートの約束は日にちまで決めてしまうこと」
第53話「最短で好きな人とのデートの日程を決めるには?」
番外編「モテる女は付き合う前にクリスマスプレゼントをわたすのか?」
第54話「デートをドタキャンさせないためのLINEテク」
第55話「まだ恋に駆け引きは邪道とかいってるの?」
第56話「私たちは恋が叶いそうになると不安になってしまう」
第57話「デートの待ち合わせで心を奪うためにできること」
第58話「モテる男をドキドキさせる話題の作りかた」
第59話「なにを考えているかわからない女がモテない理由」
第60話「モテる女の脈ありサイン徹底解説」
第61話「モテる男には恋愛の舞台裏トークが刺さる」

浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛について語りまくってます。アイコンをおすと飛べるよ。

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