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わたしは愛される実験をはじめた。第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」

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【読むだけでモテる恋愛小説31話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」

 どうしようもない遺伝子たち。

 女の本能は〝モテそうな男性=タイガー〟に惹きつけられてしまうものらしい。生物として、モテる子孫がほしいから。思えばいままで好きになってきたのも——学校とかサークルとか——その集団ごとに存在感を放つ〝タイガー〟だった。

 そして同時に、タイガーは浮気をする生物でもある。遺伝子をばらまくのが男性の本能だし、それができる立場だから。どれだけ信じたくなくても、その危険性はあるのだとか。

 そんな現実に立ちむかうために、女には、ふたつの道が許されているらしい。

「女が愛される道は、この、どちらかしかないわ」鴨川の河川敷にむかいながらベニコさんはいった。ワンカールのボブ。ばっちり濃いアイメイク。ぽっちゃり体型ながら、あいかわらずアメリカンドラマのキャリアウーマンみたいな雰囲気だった。「あらゆるリスクや難易度を覚悟でタイガーを狙うか、そうでない男を狙うか

「タイガーか——それ以外か?」

「イエス」ベニコさんはいった。「いいかえると女の恋愛戦略は〝難しいけれど価値の高い男を口説くか〟と〝簡単だけれど価値の低い男を口説くか〟のどちらかってことよ」

「えっと」私はまばたきした。京都のあわい空をみあげて頭のなかを整理した。「一つ目の道は、難しいのを覚悟でタイガーを狙う——ですね?」

「文字どおり作戦をつくして虎を狩るのみよ」ベニコさんはうなずいた。「少なくとも、ほかの女がやるように、なんの考えもなしに突っ込むのはオススメしないわね。タイガーは、そんな女を無数になぎ倒してきたわけだから」

「なんか三国志のゲームみたい」

「恋愛なんてルール無用の戦争よ」

 私はゴクリとのどをならした。「ちなみに、それって、どうやるんです?」

「とにかく恋愛認知学を駆使して〝ああ、こいつは特別だ。大切にしないといけない。そろそろ俺の冒険を終わらせてもいいのかもな〟と思わせることね」

「あ、いまの想像してちょっとキュンとしたかも」

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ」ベニコさんはぴしゃりといった。

「怒られた」われながらアホみたいだなと思った。「ちなみに二つ目の道として〝そうでない男を狙うか〟とか〝簡単だけれど価値の低い男〟っていってましたよね?」

「さっきのが狭く険しいワイルドでゴリゴリの茨の道なら、こっちは、この恋人たちと鴨が昼寝してる日曜の河川敷くらいのどかな道でしょうね」

 私は鴨川をみまわした。きれいに舗装された道を、夫婦やカップルが歩いていた。その横を、大学生の自転車集団がエヴァンゲリオンのパチンコかなんだかのマニアックな会話をしながらぬけていった。もちろん等間隔になることを夢みて川辺に座りこむカモップルもいる。

「めっちゃいいじゃないですか」

「モテない男を狙う戦略よ。彼らは普段女にいいよられることもなくて、あんたら欲求不満のパンケーキ女の男版みたいなもんだから恋愛認知学どおりに攻めればいいだけよ」

「なんか言葉にトゲありません?」

「薔薇みたいってこと?」

 私は言葉につまった。「ベニコさんって、ほんと口ゲンカ強いですよね」

「パンケーキちゃんが弱いだけかも」ベニコさんは笑った。「そしてモテず、女性経験もさほどない、浮気したくてもできない——そんな男のことを恋愛認知学では〝フィッシュ〟と呼ぶ」

「フイッシュ——魚ですか?」

「その他大勢のね」

「はあ」私は男性に失礼なんじゃないのと心配したけど、なんとなくわかる気もした。

「彼らは浮気したくてもできないから主導権をにぎりやすい。さらに生物学的にも、モテないオスは遺伝子をばらまけない以上、ようやく手にいれたメスを死守しようとする。つまり一度付き合えば、それこそ純愛モードになって大事にしてくれるでしょうね

「なんか」私は息をついた。「さっきまでのタイガーの話とまったく逆って感じですね?」

「ほっとする?」

「大事にしてくれて——いい家庭になりそうって感じ」

「だったら」ベニコさんの濃いアイメイクがみひらいた。挑戦するような、なにかを企んでいる顔だった。「フィッシュと恋に落ちることができる?」

「はい?」

「例えば、ここが男女のBBQ会場だとしましょう」ベニコさんは河川敷をみまわした。「あなたは呼ばれてやってきた。徐々にグループができてくる。一時間後、ふとまわりをみた。テーブルの中心で、堂々と、まわりの女子を楽しませている男がいた」

「そういうハイスペックな男子っていますよね」

「人生の勝者、タイガーそのものよ」ベニコさんはうなずいた。「反対に、会場のすみをみると、テーブルも飲みものもないような場所で、居心地わるそうに、無地のTシャツをきた男たちが紙皿にのせた肉をつついていた。ちらちら中心を羨ましそうにみている——」

「なんか想像できるんですけど」

「これがフィッシュの群れよ。女に近づくこともできないってわけ」

「近づかれてもこまるけど。なんか好きになれなさそうかも」

「でも、さっきパンケーキちゃんは〝大事にしてくれそう〟だとかいって褒めたのよ?」

「え?」私はまばたきした。「そりゃ言葉だけで説明されたときはそうですけど。実際イメージすると違ってくるっていうか——」

「じゃあ、実際、パンケーキちゃんは、そのBBQ会場にいたらどうふるまうわけ?」

 私は目をぼんやりさせて想像力をはたらかせた。やっぱりフィッシュの群れには近づかないだろうなと思った。というか、視界にも入らないかも。それより、やっぱりテーブルの中心で盛りあがってる男子のところに近づいてしまう気がする。あたたかく歓迎して楽しませてくれそうだし。そういう場所を盛りあげられる男子ってカッコよくない? 運がよければスマホをだして「LINEおしえて?」なんて言ってもらえるかも。

 そこで嫌な予感がしたので我にかえった。

 おそるおそる視線を前にやると——アイメイクばっちりのベニコさんが完全に見下す目つきをしていた。すっごい顔だった。酔ったあげく社長の顔面にカスタードパイをぶつけた部下にクビをつきつける直前のキャリアウーマンはこんな感じだろうなと思った。

 私は自分のしでかしたことを悟った。声のかわりに、ハッ、ハッ、という謎の音がでた。数秒の沈黙のあと自首することにした。「だから、わたしはパンケーキ女なんですね?」

「オフコース」

「もうしわけございません」

 私はパンケーキ女の妄想を話すことで懺悔した。

「そう」ベニコさんはいった。「あなたたちパンケーキ女は口では〝大事にしてくれる人がいい〟〝私だけを愛してほしい〟とか壊れかけのレディオみたいに垂れながすくせに、いざ場にでると、大事にも自分だけを愛してもくれなさそうなタイガーに惹かれてしまうの

「はい」私は肯定することしかできなかった。「それはもう」

「はじめに話したように、それも一つの道よ。でも、それだって冷静に〝なぜ惹かれているのか?〟〝どれくらい好きか?〟〝感情をコントロールできそうか?〟〝本当に狙うつもりか?〟を考えないといけない。不幸なシナリオをさけて、本当にタイガーを手にいれたければね」

「おっしゃるとおりです」

「フィッシュについてもおなじことがいえるわ」

「そうなんですか?」

「なんとなくモテない空気を感じとって、フィッシュの群れをひとまとめにして〝あれはナシ〟〝そもそも視界にも入れない〟なんて愚の骨頂よ。雰囲気だけで——本能のシグナルだけで——タイガーに惹かれるのと同じくらい幸せを逃すわ」

 その言葉は胸に響いた。確かに、この世界にひとりとして同じ男性はいないはずだ。私たちだって、それぞれ違う女なんだから。なのに、あれは楽しくなさそうな男性たちだ、と相手を知ろうとすることから逃げていた。勝手に決めつけてさけようとしていた。いや——私は首をふった。これまでも、そうやって出会いを逃してきたのかもしれない。

 考えてみれば、どれだけ楽しませてくれそうかで、その男性を格づけするのもおかしな話だ。何様のつもりなんだろう。私だってそんなことできないくせに。こっちが楽しませるという発想もあっていいはずなのに。なんて私はパンケーキ女なんだ。自分の顔面にカスタードパイをぶつけたい気分だった。「反省します」

「あなたの速度で学べばいいのよ」ベニコさんの声はやさしかった。「先は長いわ」

 鴨川の時間はゆったりだった。観光客や、付近の住民たちが午後を楽しんでいる。あまりにのどかな光景なので、このなかで、私だけが、まだまだ子どもなんじゃないかと思えてくる。

 ぶんぶんと首をふった。一歩ずつ成長するしかない。

■今日の恋愛認知学メモ

・【フィッシュ】女性経験の少ない男性。女は本能的にみすごしやすい。

・それでも関わってみないと、どんな人間かはわからない。

・でもフィッシュとタイガー、どちらを選べばいいの?

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。あとツイッター...

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