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わたしは愛される実験をはじめた。第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」

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【読むだけでモテる恋愛小説29話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」

■第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」

 ほとんどの女が犯す悲劇?

 イケメンや、ハイレベルな男性を好きになることに関係あるらしい。いまいち恋人もできず、たとえ恋人ができても長続きしない女は、これをわかってないから——だとか。

 私たちは鴨川にむかってスタバのドリンクを手にしていた。

「そもそもの話をしましょうか」ベニコさんはいった。ワンカールしたボブ。ばっちり濃いアイメイク。ぼっちゃり体型ながら、あいかわらずアメリカンドラマのキャリアウーマンみたいな雰囲気だった。「女という生物は、どういう男を好きになってしまうのかを

「なってしまう——なんか微妙ないいかたですね」

「私たちは遺伝子の命令にうごかされているにすぎないからよ」

「あれ?」私は眉をよせた。「前もそんな話をしませんでした? ほら、はじめのころに」

「パンケーキ女にしてはよくおぼえてるじゃない」

「失礼な」

「あのときは男がどういう女を好きになるかを話したわね。そしてモテるための恋愛認知学を教えた」ベニコさんは指をならした。「いまここで、そのゲーム盤をひっくり返すのよ」

「ゲーム盤をひっくり返す?」

「立場をいれかえて考えるってこと——この場合は?」

 私は空をみあげた。京都の午後の空だった。「女がどういう男性を好きになるかですか?」

「オフコース。でも、あらためて説明するまでもないわ。この愛される実験によって、パンケーキちゃんも、もう気づいてるはずよ。生物としての原則は男も女もおなじだから」

「え? ぜんぜん」私は口をあけた。アホまるだしだった。「なんの話です?」

 沈黙になった。鴨川で、ぴちゃりと、なにかが跳ねる音がした。

 眉をぴくぴくさせたあと、ベニコさんは息をついた。あいかわらず、できの悪い部下を前にしたキャリアウーマンみたいだった。「少しだけレッスンをもどしましょう。そもそも、私たち、生物はなんのために生きているのかしら?」

「それって哲学的な話じゃないですよね?」

「あたりまえよ」

「だったら、たぶん、子孫をのこすことかなと思います」

「そう」ベニコさんはうなずいた。「私たちの遺伝子は〝子孫をのこす〟ようにプログラムされている。私たちが街にでたくなるのも、人とコミュニケーションをとりたくなるのも、その奥に〝遺伝子をのこせ〟という声がするから。無意識の欲求ってわけ」

「すごい科学的な話になってきましたね」

「これからよ」ベニコさんは笑った。「さらに生物の目的が子孫をのこすことである以上、生まれてくる子どもも〝モテる〟子どもでなければいけない——なぜかわかる?」

「えっと、まってください。おもいだしますから」私は抹茶ラテを飲んだ。「あ、子どもがモテなければ、せっかくの遺伝子も、そこで終わっちゃうからですよね?」

「エクセレント」ベニコさんはキューティクルのまぶしい髪をかきあげた。「やるじゃない」

「やった。ひさしぶりにほめられた気がする」

「つまりは」しかしそこで、ベニコさんは眉をよせて、こわい表情になった。おもわず姿勢をただした。「人間にはモテる異性——その遺伝子を——手にいれようという欲望がある

 私はうなずいた。返事できなかった。なんとなく自分の想像する以上のものが、その言葉の奥にこめられているのかもしれなかったから。

つまり私たちは〝モテそうな男〟を好きになってしまう生物ってことよ。とくに女は、子孫をのこすために大量のコストをかけなくてはいけないから、その傾向が強い。つまらない男の子どもをみごもってる暇なんかないってわけね」

「それって、スポーツができるとか、イケメンとか、お金持ちの男性ってことですか?」

「いえ」ベニコさんは首をふった。「それらと〝モテそうか〟は別物よ」

「なんで? どういうことです?」

「スポーツができても、イケメンでも、お金持ちでも、なんとなく無理だと感じる男はいるでしょう? 反対に、そうでないのに心をひかれる男もいる」

「そういわれると」私は髪先をつまんだ。条件だけをみると、とくにいいわけでもない男性にひっかかって、長年、ぐちゃぐちゃな恋愛をすることになった友人を思いだした。

「顔や職業などのスペックはあくまで材料にすぎない」ベニコさんはいった。「根本的に、その男が生物としてモテそうな匂いがあるか——それだけよ」

 私は抹茶ラテに口をつけた。いままで好きになった男性を思い浮かべた。学生時代は教室の中心にいる男子のことを目で追いかけていたし、大人になっても、合コンや街で目につくのは目立っている男性ばかりだった。

 彼らに共通しているのは、まわりの女性がさわいでいたり、自信に満ちた感じだったり〝俺は生物として上のランクにいるんだぞ〟みたいな空気があって、ずっと女にこまってないんだろうなという感じ。顔がそこまででも、会話がおもしろかったり、なんとなく魅力的な雰囲気で好きになることも。

 あれ? これって——モテそうな男性ってこと?

「ベニコさん」おどろきとともに、私は、なぜかむなしい気分におそわれた。「たしかに、ずっとモテそうな男性ばかり好きになってたみたいです。これがモテない女——幸せになれないパンケーキ女ってことなんですよね? 本能に逆らえないパンケーキ女なんですね?」

「そもそもの話をするけど」ベニコさんはまじまじとみつめた。「あなたは〝モテそうな男〟を好きになりたいの? それとも手にいれたいの?

 私は一瞬ぽかんとなった。首をかしげた。「それって——」

「そのふたつは似ているようで違うでしょう?」

「それは、手にいれたい、ですけど」

「いい?」ベニコさんはひとさし指を立てた。「私は〝モテそうな男〟を狙うなとはいってない。好きなものはしかたないんだから。むしろ愛される実験をするからには、ランクの高い男性を狙いなさい。恋愛認知学はそれすら可能にするコミュニケーションシステムよ」

「よかった。狙っていいんですね」私は息をついた。

「ただ——」ベニコさんは首をふった。そのあと獸が爪をたてるように指先をまげた。「狩人は自分がなにを狩ろうとしているのかを理解していないといけない。逆に狩られるだけよ」

「え、なにそれ。こわいんですけど」

「虎を狩るには、虎を狩る準備と心がまえがいるでしょう?」

「はあ」

「あんたみたいなパンケーキ女がまるごしで虎の前にでたら爆散するわ」

「虎なのになんで爆散するんですか」

「つべこべいわない」ベニコさんはぴしゃりといった。「いい? あなたが相手にしようとしてるのは間違いなく虎よ。生まれたときからモテる人生を歩んできたオスの虎。それを狩るには覚悟がいるでしょう。それなのになんの考えもなしに、へらへらした顔でつっこんでもゲットできるわけがない。たやすく好きにさせられたあげく、ドキドキするのが楽しいだとかいいだして、むこうからのLINEの一通一通にふりまわされて、いつのまにか返事もなくなって、とくに付き合うこともできずに人生の貴重な時間を無駄にして終わりよ」

 なんだか、やたらにグサグサ否定された気がしたので私は反論したくなった。「でもそういうドキドキを楽しむのも人生じゃないんですか?」

「なにが?」

「そりゃ、もう若くないかもですけど——」私は足下をみた。砂まじりの河原に名前も知らない草が生えていた。「カッコいい男性を好きになって。いちいちLINEのやりとりだけでも胸キュンして、毎日、がんばろうっていえるのも大事だと思うんです」

「パンケーキちゃん」ベニコさんはいった。「恋愛が人生の糧であることを否定はしないわ」

「あれ? そうなんですか?」

「それどころか人生の主題であってもいいと思う」

「じゃあ、どうして」

「言葉をかえてリピートするわ」ベニコさんはひとさし指を唇にあてた。お静かに、といわれているようだった。「あなたは夢をみていたいの? それとも夢を実現させたいの?

「夢?」私は言葉につまった。大人になってから口にするのも恥ずかしくなって、ひさしぶりに耳にする単語だった。「夢ですか?」

 ベニコさんはうなずいた。

「それは、えっと」

「花の命は短くて——女たるもの恋をしなくては意味がない」ベニコさんはいった。「ただ〝女はモテそうな男に惹かれてしまう生物だ〟という遺伝子の習性を知る必要はある。その黒い海におぼれないためにね。少なくともハイレベルな男を考えもなしに好きになるなんて、いままで、その男の前にあらわれては散っていった女たちと同じ道を歩むだけじゃない」

 その言葉はズブズブ鉛の弾みたいに胸の奥にめりこんだ。

「あらためていわれると——そっか」私はうなずいた。「えっと、心惹かれるような〝モテそうな男性〟をゲットするには覚悟がいるってことですよね?」

「好きになるだけでは足りないわね」

 私は息をついた。「なんかモテそうな男性をゲットするのって、すごく大変そう」

「パンケーキちゃん。この程度で怖がってたらほんとに滅砕するわよ」

「え? まだあるんですか?」私は紙コップを両手にびくっとなった。

「虎には、さらなる恐ろしさがひそんでいる」ベニコさんは顔の前に右手をひろげた。そのネイルの色は獣の血だとでもいわんばかりだった。「いまから、ほとんどのパンケーキ女が信じようとしない真実を教えてあげる——逃げだすならいまのうちよ?」

■今日の恋愛認知学メモ

・女は〝モテそうな男〟を好きになってしまう生物。

・ランクの高い男性を狙うには、その覚悟がいる。

・その男性を好きになりたいのか、手にいれたいのかハッキリさせること。

・ほとんどのパンケーキ女が信じようとしない真実って——なんのこと?

わたしは愛される実験をはじめた。第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」

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【読むだけでモテる恋愛小説30話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「まだフラれてることに気づいてないの?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない?」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」
第45話「LINEは疑問符をつければ返事がくると思ってない?」
第46話「男に未読スルーされないLINEを作ろう上級編」
第47話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛テク語りまくってます。

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