1. DRESS [ドレス]トップ
  2. 恋愛/結婚/離婚
  3. わたしは愛される実験をはじめた。第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」

わたしは愛される実験をはじめた。第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」

Share

【読むだけでモテる恋愛小説26話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」

 なんて言葉をぶちこんでくるのか。

 合コンもあと半時間ほど。私は席がえで、イケメンのテラサキさんのとなりになった。恋愛認知学のメソッドをつかって、恋バナや、人生の話をくりひろげた——男心を手にいれるには、そういう話をしなくてはいけないから。ラストスパートだった。なのに、そのタイミングで声が響いた。「ずるいなあ。ねえ、私たちも会話にまぜてよ」

 胸が破裂するかとおもった。その猫なで声の主は、ティラノサウルスみたいに暴れまわったあげく遠くの席に強制送還された肉食女子ショウコだった。イケメンを手にいれられないくらいなら、遠くの席から、私たちを邪魔してやるぞモードだった。

「あ、え、なに?」おもわず私は聞きかえした。でも、よく考えたら相手の言葉を聞きかえすときは、だいたい自信がないときかも。

「だって席がえしてから、ずっとテラサキさんとしゃべってない?」ショウコは合コン用の笑顔だった。あどけない感じだけど、冷静に、答えられないことをいってくる。

「そうかな?」ブラの内側に汗がしみるのを感じた。

「なんの話してたの? 気になるなあ」

「いや、とくに普通の話をしてただけだから——」私はがんばって普通の顔をつくる。元カノの話をきいて、めちゃくちゃ情報収集してましたとはいえなかった。

「え、なになに? 普通の話って?」

「なんか、まあ人間関係とか」やっとのことで笑顔をつくる。

「それって、おもしろそうじゃん——どんなの?」

 すっかりショウコのペースだった。せっかくできた壁にドリルをつっこむように、ぐいぐい会話をおしひろげてくる。あくまで、私とテラサキさんの会話をこわしたいみたい。全員でのテーブルトークにひきもどす狙いのようだ。

「もしかして恋バナ?」ショウコの声はますます大きくなる。嫌がらせが効果てきめんなのを確信したみたいだった。「え、テラサキさんの恋バナとかきいてみたいなあ」

「いや、そんな——」

 ちらっと私は反対側のテラサキさんをみた。ほとんど真顔で、場のながれを冷静にみている感じだった——その眉をよせた顔もイケメンで1.5秒くらいみほれてしまった。

「たいした話はしてないよ」テラサキさんは笑った。「デートのときの話とかさ」

 その表情はどっちにころんでもいいけど、という感じだった。ちょっとは「二人だけで話をさせてくれよ」なんて味方してくれるかと期待してたのがばかだった。もしかして二人だけの会話にこだわってたのは私だけなのかも。

「ええ、ほんとですかあ」テラサキさんの反応をひきだせたことで、ショウコの声が、ますます媚びるようになる。「ききたい、ききたい」

「いや、ドライブしたとか——そんなんだよ」テラサキさんはグラスをとった。

「ええ? すごいおもしろそうじゃないですかあ」

 もはや進撃のショウコをとめることはできなかった。すこしずつテラサキさんと会話が生まれつつあった。このままでは、せっかくの二人きりの時間を失うことになる。手にいれた恋愛情報ももれだしてしまう。ブラの内側の汗がじんわり増えた。

「あ、そういえば——」なにかいわなければと、つい、私の声はうわずった。

「なに?」すかさず、ショウコがわりこんでくる。

「いや、テラサキさんに、さっきの続きで気になることがあったから質問を——」

「ずるい」

「え?」

「ていうか、めちゃくちゃ二人だけで話そうとしてない?」ショウコは私の顔をのぞいた。両目がひろがる。もはや復讐に燃える劇団四季のオペラ座の怪人みたいだった。「もしかして——テラサキさんのこと狙ってるわけ?」

 ここぞとばかりに放たれた、その言葉は強烈な一撃だった。あう、あう、と、私は死にかけの金魚みたいに口をぱくぱくさせた。

 合コンの席で、そんなの答えられるわけがなかった。ずるいのはそっちじゃない。口を硬直させて、顔があかくならないように願いながら——身体まで、うごかせなかった。ひざの上で、右手をにぎると爪が手のひらにくいこんだ。

 こんなとき恋愛認知学マスターのベニコさんなら、とっさに気の利いた返答をできるのかもしれない。たったひとことで相手をやりこめて、同時に、男性陣からの株もあげたりできるのかもしれない。愛される女の魔法のように。

 でも、くやしいことに、私は、ただの甘ったるいパンケーキ女だった。

 そこそこ上手くいって「もう十分、いい女になってない?」と、優越感にひたっていたツケがまわってきたのかもしれない。まだまだなにもわからないくせに。現実というのは、いつも最悪なタイミングで、最悪なプレゼントをおくりつけてくる。

 私は合コンの席で息をついた。いつもこうやって、しあわせが、ほかの子のほうに逃げていくんだよなあ。なんだかんだ自己主張できる子のほうが——ちょっと自分勝手なくらいが——恋愛も成功したりするし。そう考えると、今日までの努力がみじめにおもえて、目の奥に涙がたまっていくような感触があった。

「ああ、まあ」そのとき声がした。「いいんじゃないですか?」

 私は顔をあげた。おずおずした声は眼鏡男子のクリタさんのものだった。

「なにが?」おだやかながらショウコの目がにらんだ。

「いや、あの」女慣れしてないクリタさんは視線をそらした。眼鏡にふれる。「ミホさん、すごくがんばってくれてたし、なんていうか——べつに悪いことではないんじゃないですか?」

「でも、ずっと二人だけでしゃべるのって変じゃない?」

「そもそもこれは、そういう会合だから——」と、クリタさんは高校教師の口調になった。

 後輩のヒカリちゃんもこくこくうなずいてくれる。ショウコは不服そうにクリタさんをみた。みんな大人だから、あくまで普通のトークという感じだった。

「てかさ」そのとき、テーブル上にやけにウエルカムな笑い声が響いた。「まあ男女のことだし、俺の飲み会はなんでもOKだよ」

 みると男幹事のヒロトさんがビールを手にしていた。そのムードにつつまれて——やっぱり幹事の発言は重い——一気に風むきがかわった。ちらっと場の全員が「めんどくさいこというなよ」みたいな顔色をショウコにおくった。

 そこからはあっというまだった。その視線にさらされ「なに? 私がわるいの?」みたいな顔をしたあと、ショウコは、だまってカシスオレンジを飲むことになった。

 私は、その成り行きにおどろいたままヒロトさんをみた。目があうと、ジョッキをかかげて下手なウインクを飛ばしてきた。ほれそうになった。まさか女幹事として男幹事と共犯関係になるという〝ゲームマスターメソッド〟がここで生きるとは。

 ここにきて、恋愛認知学の合コン戦略の、意味が、すこしわかった気がした。

 ベニコさんの教えは、どれも個人戦に走らずに、あくまでテーブルの空気をだいじにするというものばかりだった。たとえば合コンの場では、エゴイスティックな行動はいけないという〝ノン・エゴイスト・セオリー〟が重要だとか。正直、もっと個人戦に走ったほうが、おいしいのではと感じることもあったけど。

 それじゃだめっぽい。自分だけ得しても、それは、まわりに損をおしつけているだけだから。たぶん、いつまでも続かない。それどころか、いつか大きなしっぺがえしがくる気がする。

 だから恋愛認知学では、とにかく場の空気をだいじにするのだ——とおもう。その場のみんなで楽しんだほうがwin-winの関係をつくることができる。そして空気というものは、大事にしてあげただけ、いざというときに味方してくれるものらしい。

 今回も、私が女幹事として、セッティングからテーブルトークまで、みんなのためにがんばったから、ヒロトさんやクリタさんも、人として味方してくれたんだとおもう。

 なんだろう? 私は、この合コンで、すごく重要なことを学べた気がする。合コンとかなしにも人間関係の極意というか。あとで、じっくり考える必要があるかも。

「なんで笑ってるの?」また二人で会話する感じにもどったあとテラサキさんはいった。なぜか小声だった。「たのしそうだけど」

「いや、そういう——」と、そのとき胸さわぎがした。

 なんだろう、この感覚? 胸の奥がうずうずする。その原因を探すようにまわりをみた。なんとなく空気はもどって、テーブルで、ほかのメンバーが盛りあがっていた。

 はっと気づいた。そうか——このままじゃだめだ。

 私は首をふった。まわりも楽しそうにはしていた。でも、そこに私たちだけ参加しないのは、やっぱり気分のいいことじゃない。

 私は恋愛認知学のセオリーをおもいだした。合コンの席だけで完全に口説こうとしないこと。むしろ場の空気を大事にできる〝いい女〟でいること。こっちは次のデートにさえつなげられたらいいんだから。

「なにか考えてる顔してるよ」テラサキさんはいった。「気になることがある?」

「あ、えと」私は笑った。ベニコさんみたいに海外映画の主演を気どったつもりだった。「まあ、そろそろ、みんなともしゃべってあげようかなとおもって」

「なるほどね」と、イケメンらしい流し目で、テラサキさんもくすっと笑った。

 私たちは、しばらくぶりにテーブルの会話にもどった。学生時代の合宿で、途中、こっそりぬけだした男女が、夜中にくすくす笑いながらしれっともどる、みたいな感じだった。

 そのまま合コンが終わるまで全員で盛りあがった。空気を導ける女として、お店をでる瞬間まで、つまらない顔をするひとがいないように気をつけた。あれだけバチバチやりあった肉食女子のショウコにも話をふってあげた——えらくない? でもショウコが、いまさらテラサキさんに「すごいすごい」と媚を売っても、もう勝ちこしている自信はあった。

 最後、居酒屋をでると路上で円になった。酔っぱらった顔のならぶなかで、男幹事のヒロトさんがしめの言葉を口にしていた。それを話半分にきいていると、テラサキさんと目があった。なにかの共犯者みたいに笑みを浮かべあった。

「ミホちゃん」そのときヒロトさんの声がした。「それでいい?」

「あ、はい? なんです?」私はびっくりした。

「あとでLINEグループつくるから、そこに女子もいれといてよって」

「あ、わかりました」

「てか、十時か」ヒロトさんはスマホをみた。「どうする? 二軒目いく?」

 みんな、それぞれの思惑をこめて空気をうかがうような感じだった。明日はやいのにとか、もっとしゃべりたいのにとか。その全員の視線があつまった——女幹事の私に。

 あれ、私が決めるの?

■今日の恋愛認知学メモ

・合コンは場の空気を味方につけるべし。

・場の空気はだいじにしてあげると、いざというときに味方してくれるから。

・え、合コンって——二軒目にいくべきなの?

わたしは愛される実験をはじめた。第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」

https://p-dress.jp/articles/7451

【読むだけでモテる恋愛小説27話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」

https://p-dress.jp/articles/7608

【読むだけでモテる恋愛小説28話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが甘えた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

Share

浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

関連するキーワード

関連記事

Latest Article