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わたしは愛される実験をはじめた。第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」

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【読むだけでモテる恋愛小説】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が〝愛される女〟をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた〝パンケーキ女〟に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」

【読むだけでモテる恋愛小説(全11話)】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」

■第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」

「愛される女になった感想は?」

「わかりません」私はいった。「正直、モテるモテないって、どうでもいいなって。そう思います。なんていうか、仕事も楽しいし。休日も充実してる」

「その通り。モテる女ってのは、なにも男に食事を奢らせて、週末はデートで埋まってる女のことじゃない。モテるなんて人生のなかで、大したことじゃないっていえる女のことをいうの」

「そうかも。前は、ずっとこのまま孤独なのかなとか、私なんかに恋愛は無理だって気持ちもあったけど、そんな不安はなくなりました」

「それで、まわりの男に愛されはじめた女が、わざわざ報告って?」

「ええ」私はとなりで笑みを浮かべる女性をみた。彼女との時間は、まさに人生を変える、めくるめく魔法の旅だった。「たったひとりの人をみつけました」

 彼女と出会うまで、私は、いわゆるモテない女の一人だった。

 いや、そんなこと認めようともしなかった。気軽に男性を誘うこともできず、受け身でいることを、女の子らしいと言い訳していた。そして流行の雑誌を読んで、流行のファッションをして、流行のグルメの列にならんだ。そうすればいつか——白馬の王子様とまでいかないけれど、自分にふさわしい相手があらわれるものだと信じていた。

 一年前、この町で彼女と出会った。彼女に教わった〝恋愛認知学〟の数々は、この私をあっというまに別の人生に招待してくれた。何人もの男性に愛をささやかれ、憧れの目をむけられるのは、こんなにも満たされることだと知らなかった。本当の人生が——ずっと待ちのぞんでいた——これからはじまると思うとドキドキする。

 私は大勢から愛される術を身につけて、たった一人から愛される幸せを学んだ。だから、もう私には必要なくなった、この経験が、かわりに誰かの役にたてばいいのにと思う。

          ※

 プロポーズだと思った私をなぐってやりたい。

 付き合って四年のヒロミツは温泉旅行で、露天につかって、宿の夕食のあと「俺、東京に転勤になった」とビールに口をつけた。それを聞いたとき、私は、ついに30歳にして結婚を申しこまれたのだと思った。けれど実際に彼の口からでた言葉は「だから、もう付き合えないかも」だった。

「忙しくなるし」だとか「お互い年齢もあるから」だとか、なんだかんだとヒロミツは理由をいった。私は脂っこい宝石みたいな、お刺身の上に、お箸を浮かせて「ようするに捨てるってことでしょ」という言葉を飲みこんだ。

 その夜、布団にもぐりこんでこようとするヒロミツに背中をむけながら、なんで明日も観光しなきゃいけないこのタイミングでいうんだろう、そういう無神経なところが嫌いだったのにと泣いた。

 四年と二ヶ月ぶりに、三十代で、恋愛に取り組むはめになった。

 まず何年も「私には彼氏がいるから」と胡座をかいているまに、恋人の作り方がわからなくなっていた。どこで、いい歳した女は彼氏をみつけるのだろう? 

 そう考えると京都という街は広くて冷たかった。毎朝通勤で乗る京阪電車のなかでも、職場近くの三条駅の地下道でも、休日に河原町通りを歩くだけでもステキな男性はいる。なのに、彼らと知り合う術はなかった。

 そして休日に友達とあつまると「なんで私たち彼氏できないんだろう」「そろそろ好きになるって感情を忘れそう」「いまやりとりしてる男いる?」なんて笑いあって、ため息する——それが私の恋愛活動だった。

 二月に一度くらい、合コンに呼ばれることもあった。そんな日は朝から気分がよかった。この美術品販売会社の営業総務の平社員に、たまった書類を一気に押しつけてくる上司や、取引先の壁に車をぶつけた同僚の男子にもやさしくなれた。

 でも大抵、気になった男性は、みんな自分以外のものだった。

 親しくもない女たちの独特の空気のなか、大皿料理をわけるとか、ドリンクをたずねるなんて努力もむなしく——緊張してろくにできなかったけれど——そのあと男性陣は彼女たちにだけ連絡して、いつのまにか勝負は決まっていた。

 そんな夜は、とぼとぼ三条大橋の上から、鴨川のほとりに等間隔に腰かけては愛をささやく男女たちの群れをみて、さみしさで一杯になった。この寒さだというのにカモップルめが、と叫びたくなった。次に盛りあがる席のすみでニコニコしていた自分が恥ずかしくなった。なにかあるかもと髪や服装に気をつかったぶんだけ余計みじめだった。

 飲み会のあと、たまには男性からLINEがくることもあった。しかし一通目で返事がなくなれば、一日一通、夜にやる気ない返信があって、いつのまにか既読スルーで終わることもあった。むこうから連絡して、どうして男は無視するのだろうと、そのつどスマホをにらんだ。

 ある日、いいなと思っていた、オクムラさんから、LINEがきた。

 商工会議所の職員だった。合コンでは口数も少なかったけれど、よくいる男子のように自慢話もなかった。細身なのに「たまに自転車で琵琶湖を一周するんです。考えごとも整理できるし」という話が印象的だった。ほかの女性陣は興味なさそうで、その話題はそこまでだったけれど、私は、彼がどんなことを考えるのか知りたかった。

 次の水曜日、高瀬川沿いのイタリアンに誘われたときは、もう告白されたような気分だった。お店で、私が上手く話せずにいると「僕も緊張してるから大丈夫です」とフォローしてくれた。そのとき、私の頭のなかに北白川通りの教会のベルが鳴った。

 なのに、なぜLINEよ、こない?

 二月の上旬。私は職場のパソコンに伝票を打ちながら、なにげなく机の影においたスマホをのぞいた。返信はなかった。

『昨日はごちそうさまでした! 御馳走してもらったイタリアンすごく美味しかったです(絵文字)(絵文字) 緊張して、うまく話せませんでしたが、お会いできてうれしかったです(絵文字) こんど私も自転車に乗ってみたいなって思いました(絵文字)(絵文字) 来週からの出張でお忙しいと思いますが、ぜひぜひ、また誘ってください!』

 その下についた〝既読〟を何度にらんだだろう。

 会社の帰り、にぎやかな河原町通りで「お姉さん居酒屋ですか?」と、次々あらわれる客引きに頭をさげていると、ふと一人暮らしの部屋が浮かんだ——だれの姿もない。この歳で、ふられた女に温かいのはトイレの便座くらいだった。厳しい風にコートをひきしめて、とたんに酔っ払いたくなった。

 目についた建物の二階、アイリッシュパブ〝HUB〟の扉をあけた。めずらしく客は少なかった。ビールを買った。テーブルの上にスマホをおいた。

 壁のモニターに、外国のサッカーの試合を映していた。一人の選手がみごとにゴールを決めたのをみて「恋愛もこれくらい単純だったらいいのに」と思った。

 また手癖でスマホをとった。 Facebook をみると、地元の友人が、二人目の子供の出産報告をしていた。そもそも一人目がいたのも知らなかったのに。そのキラキラした写真に耐えられなかったので、いいねも押さず画面をふせた。

 大きく息をついた。これからも、ずっと一人なのかもしれない。

 鞄からビーチミントをだして、その粒をがりっと噛んだ。いや、そうだ。一人で海外旅行にいくのはどうだろう。人生のペースなんてそれぞれだ。恋人なんかいなくても生きていけるし、正直、しばらく恋愛をしないのもいいかも。

 そのとき、店内に、二人組の男がやってきた。

 なぜ気になったかというと、どちらも高身長イケメンだったから。年下だろう。そんな気分でなくともつい目がいってしまう。悲しい女の性だ。

 イケメンコンビは、ドリンクができるのを待つあいだ周囲をみわたした。どの席に声をかけるか物色しているのがわかった。私は直感的に、まんなかのテーブルで買い物袋をひろげている、二十代前半くらいの女子たちのところにいくだろうと思った。

 事実、彼らは、その方向に歩きはじめた。

 しかし数秒後、そのテーブルの横をとおりすぎた。その足で、吸い寄せられるようにむかったのは壁際の席だった。その席の主に「すいません」と声をかける。

 目を疑った。

 そこにいたのは、可愛い子でも美人でもなかったから。ずんぐり体型、ブラックスーツ、立てたシャツの襟。ワンカールした黒髪ボブ、赤い唇、濃い眉とアイメイク。まさにアメリカ映画のキャリアウーマンという雰囲気だった。

 ぱっと見は決して、男の目をひく存在にみえない——まだ私の方がマシかも? なのにイケメンコンビは腰をかがめて媚びるように気をひこうとする。どんな魔法を使ったというのだろう?

 数分すると、彼女は、ようやく左右にイケメンを座らせた。彼女が発言するたびに彼らは大げさに笑った。途中、彼女はグラスからサクランボをつまんで、長い爪で、ひとりの男の口にくわえさせた。私はいけないものでもみるようにドキドキした。その男はうれしそうにしていたし、もらえなかった方はうらやましそうにしていたから。

 やがて男の方からスマホをだして、連絡先を交換したがるのがみえた。彼女は、この三十分ほどで人生のプレミアムチケットである、イケメンの連絡先を二つゲットしたことになる。二人組は壁の時計をみると、なごりおしそうに外に消えた。

 私は自分と彼女のグラスが空になっていることに気づいた。その瞬間、財布と鞄を手に、バーカウンターにむかった。自分でも理由はわからなかった。

「ビールのおかわりと——あそこの女性が飲んでいたのはなんですか?」

「オリジナルカクテルですよ」店員はその方向をみて、それを飲まれているのが光栄だというふうに誇らしげな顔をした。「エレガント・ルージュ」

 勇気をだして、購入したビールと、そのサクランボ入りのレッドカクテルを手に壁際の席にむかった。彼女は、なにか私の知らない人生の秘密を知っているようにみえた。

 私は、どんとテーブルにグラスを二つおいた。すると彼女は、おどろきもせずに私をみあげた。その海外風の濃いメイクは微動だにしなかった。けれど、不思議と拒まれている気もしなかった。むしろ、さきほどのイケメン二人組のように、私も彼女の魔法に吸いよせられただけで、すべて彼女の計画通りなのではと感じた。

 次に私の口をついたのは、なんともなさけない言葉だった。この歳になって、あっさり彼氏にふられた。合コンも上手くいかない。どうにかデートできた男性からはLINEの返信もない。そんなありさまだった。でも、だからこそ、だれにもいえなかった、とうに大人の年齢になった女の叫びだった。

「私、さみしいんです。この歳になって、どうしたら愛されるかもわからないんです」

 その女は微笑むと、脚の長いカクテルグラスから、サクランボをつまんだ。

「とにかく黙って座りなさい。そうすればモテる女にしてあげるから」

■今日の恋愛認知学メモ

・まだ女の正体はわからない。

・イケメン二人組をあっさり口説いてたけど——もしかして魔法かも?

第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」

https://p-dress.jp/articles/6062

【読むだけでモテる恋愛実験小説2話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が〝愛される女〟をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた〝パンケーキ女〟に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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