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わたしは愛される実験をはじめた。第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」

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【読むだけでモテる恋愛小説】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が〝愛される女〟をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた〝パンケーキ女〟に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」

■第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」

「愛される女になった感想は?」

「わかりません」私はいった。「正直、モテるモテないって、どうでもいいなって。そう思います。なんていうか、仕事も楽しいし。休日も充実してる」

「その通り。モテる女ってのは、なにも男に食事を奢らせて、週末はデートで埋まってる女のことじゃない。モテるなんて人生のなかで、大したことじゃないっていえる女のことをいうの」

「そうかも。前は、ずっとこのまま孤独なのかなとか、私なんかに恋愛は無理だって気持ちもあったけど、そんな不安はなくなりました」

「それで、まわりの男に愛されはじめた女が、わざわざ報告って?」

「ええ」私はとなりで笑みを浮かべる女性をみた。彼女との時間は、まさに人生を変える、めくるめく魔法の旅だった。「たったひとりの人をみつけました」

 彼女と出会うまで、私は、いわゆるモテない女の一人だった。

 いや、そんなこと認めようともしなかった。気軽に男性を誘うこともできず、受け身でいることを、女の子らしいと言い訳していた。そして流行の雑誌を読んで、流行のファッションをして、流行のグルメの列にならんだ。そうすればいつか──白馬の王子様とまでいかないけれど、自分にふさわしい相手があらわれるものだと信じていた。

 一年前、この町で彼女と出会った。彼女に教わった〝恋愛認知学〟の数々は、この私をあっというまに別の人生に招待してくれた。何人もの男性に愛をささやかれ、憧れの目をむけられるのは、こんなにも満たされることだと知らなかった。本当の人生が──ずっと待ちのぞんでいた──これからはじまると思うとドキドキする。

 私は大勢から愛される術を身につけて、たった一人から愛される幸せを学んだ。だから、もう私には必要なくなった、この経験が、かわりに誰かの役にたてばいいのにと思う。

          ※

 プロポーズだと思った私をなぐってやりたい。

 付き合って四年のヒロミツは温泉旅行で、露天につかって、宿の夕食のあと「俺、東京に転勤になった」とビールに口をつけた。それを聞いたとき、私は、ついに30歳にして結婚を申しこまれたのだと思った。けれど実際に彼の口からでた言葉は「だから、もう付き合えないかも」だった。

「忙しくなるし」だとか「お互い年齢もあるから」だとか、なんだかんだとヒロミツは理由をいった。私は脂っこい宝石みたいな、お刺身の上に、お箸を浮かせて「ようするに捨てるってことでしょ」という言葉を飲みこんだ。

 その夜、布団にもぐりこんでこようとするヒロミツに背中をむけながら、なんで明日も観光しなきゃいけないこのタイミングでいうんだろう、そういう無神経なところが嫌いだったのにと泣いた。

 四年と二ヶ月ぶりに、三十代で、恋愛に取り組むはめになった。

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛について語りまくってます。アイコンをおすと飛べるよ。

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