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わたしは愛される実験をはじめた。第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」

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【読むだけでモテる恋愛小説21話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」

 合コン開始から五分経過。

 お酒がくるまでは盛りあがりにくい空気だった。ひたすら個室の奥での、幹事ヒロトさんと私の会話に——唯一の知り合いだから——まわりが笑いをあわせる感じだった。

「いや、まじ、できる女子だから」と、ヒロトさんはもちあげてくれた。

 合コンをセッティングするさいのテキパキした感じをほめてくれる。へえ、そうなんだ、と男子にちらっと観察されたのを感じた。これが合コンにおける幹事の力なのかも。かといって自分だけが注目をあびているのはだめだと思った。

「でも」私はテーブルの反対側に手をひろげた。「奥のヒカリちゃんも、しっかりした子だってきいてますからね。学生時代の友人の後輩なんです」

「いえいえ、すみません」ヒカリちゃんは笑った。「私もミホさんの天然話きいてきましたよ」

「天然なの?」ヒロトさんが声を大にする。「ミホちゃんのエピソード教えてよ」

「ええ、わたしも聞きたい」と、そこに肉食女子のショウコが猫なで声でつっこんでくる。

 そこで、くしゃみした拍子に学食の味噌汁を頭からふりかぶった話をばらされながらも、とにかく場の空気のためにがんばった。会話に、全員が参加できるようにした。みんな話をふられるとほっとした顔で答えた。

 四条のフランソア喫茶室にて、その説明を受けたときベニコさんはいった。ワンカールしたボブ。ばっちり濃いアイメイク。むっちり体型ながら、アメリカンドラマのキャリアウーマンという雰囲気だった。「合コンを制するキーワードは〝場の空気〟よ

「空気を読むってことですか」私は鞄からメモ帳をとりだした。「そりゃそうですよね」

「ノン」ベニコさんは教鞭のように珈琲スプーンをつきだした。「おおいなる勘違いよ、そこのパンケーキ女」

「ミホです」

空気を読めるだけの女は無個性。まわりに流されて愛想笑いを浮かべてますっていってるのとおなじこと。ていうか空気なんて、ソフトバンクの前にいるペッパー君でも読めるわよ」

 私は唇をとがらせた。「じゃあ空気を読むなってことですか?」

愛される女は空気を導く」ベニコさんはスプーンを唇にふれた。にやりと笑った。「そもそも私たちは〝場の空気〟を、とても大切にする人種よ。だから、それを良くしようとアクションできる人間を評価するの。合コンの場は、それがシビアにあらわれる」

「それ、なんか深いですね」私は鞄からピーチミントをとりだして一粒がりっと噛んだ。確かに場所の空気をよくできるひとはモテる。「そういわれても空気って難しいですよ。私も、たまに空気読めないとかいわれるし——そういうのって勘がいい人しかできなくないですか?」

「空気を扱うのはむずかしい——パンケーキちゃん。それは空気がみえないからよ」

「はい?」私は眉をよせた。「それはそうですよ」

空気を、みんなの笑顔だと捉えなさい」ベニコさんは珈琲を飲んだ。「その場の全員が笑顔でいられることをするの。それが空気を導くということになる。そんな人間にこそポジションはあたえられるわ。だから決して合コンでは——少なくとも全員がいるその場では——エゴイスティックな行動をしてはいけない。おいしく映るのはいい。悪めだちはいけない。これが恋愛認知学の〝ノン・エゴイスト・セオリー〟よ

 ドリンクがそろうと乾杯になった。男幹事ヒロトさんが「じゃあ今日は楽しみましょう」と乾杯して、テーブルの上でグラスをぶつけた。

「さっそく自己紹介しようか」と一口ビールを飲んだあとヒロトさんは声をあげた。

 男性陣から自己紹介タイムになった。まずヒロトさんが薬剤師だといって、女なれしてない眼鏡男子のクリタさんが高校の化学教師といった。でも一番、心から耳をたてたのは最後のSっぽいイケメン男子テラサキさんのときだった。

「テラサキです」彼は場をちらりとみまわした。「鉄を売る会社で営業をしてます。結構アウトドアが好きで一人でキャンプしたり——あと、やっぱゴルフが多いですね」

「お、スコアは?」幹事のヒロトさんはビールを飲んだ。「テラサキ君は初対面なんだよね」

「90前後くらいです」

「めっちゃ上手いじゃん。こんど打ちっ放しいこうよ」

「ぜひ」そこでテラサキさんは恐縮したように笑った。そのギャップもたまらなかった。「高校のころサッカーもやってたんで球技系はわりと得意なんすよ」

 正直、ゴルフの話はさっぱりだった。90の意味も不明だった。でも、ぶっきらぼうにみえるだけで、実はいいひとなのかもしれない。さっそく彼と二人きりでキャンプにいって、飯ごう炊飯して、夜空の星をみながら、珈琲を手わたされたりなんかして、たき火が燃えつきるまで話しこんで、そのあとテントで眠りにつく妄想までしてしまった。キモいのは承知だ。

 女性陣が自己紹介する番になった。一番目は後輩のヒカリちゃんだった。印刷会社の事務をしていること、女子校時代は吹奏楽をしていたことを語った。楽器はトロンボーンで、トランペットみたいな形だとか。けっこう体育会系で走りこみまでしたとか。

「てか、ちょっと佐々木希感あるよね?」と、幹事のヒロトさんはいった。

 そして私をみて熱くうなずいた。「佐々木希がタイプ」だと注文された女幹事としては、いい仕事をしたようだった。正直、飲み会男子のヒロトさんは、女子校育ちのヒカリちゃんの好みじゃない気もするけど——がんばれ。

「ヒカリちゃん、今日なにしてたの?」ちゃんとヒロトさんは全員に質問していた。こういう気くばりはさすがだった。

「あ、はい。京都駅で買いものしてました」

「お、なに買った? 夏服?」

「えっと」ヒカリちゃんはグラスを手にいいよどんで笑った。「熱帯魚のエサを探してました」

 なんだよそれ、と、その場の全員が笑った。

 そこでヒカリちゃんは、最近、職場の先輩にエンゼルフィッシュの子どもをおしつけられたと説明した。「まだ五百円玉くらいで。ちゃんと飼ってあげたいじゃないですか?」

「あの」すると、むかいの眼鏡男子クリタさんが声をあげた。ちょっと高い声で、いまにもぺこぺこ謝りそうだった。「実は、僕、熱帯魚すごく好きなんです。中学生のころから。できれば、どの品種か写真をみたいんですけど」

 それで大文字山に火がついたみたいに場が盛りあがった。いちいち、エンゼルフィッシュの生態や飼育方法をきいたりして「さすが理科の先生」と、全員、きっかけがほしかったみたいだった。「だれかほかいる?」と、テーブルでお酒もおかわりした。

 私はカシスオレンジに口をつけた。楽しい飲み会になりそうで、ほっとした。

 そのとき真横の席で、ぞわりと負のエネルギーを感じた。ほかの女が、ちやほやされているのが気にくわない——肉食女子のショウコだ。にこにこしてるけど口角の位置がさっきからかわっていない。女にしか感じられないやばい信号を発していた。なにかしでかしそうな予感だった。

「私、魚の話されてもわかんないなあ」こそっとショウコはいった。

「あ、すみません」と、まむかいのクリタさんは口をとじた。その話題はそこまでになった。

 次は、彼女の番だった。ショウコは名前のあと高島屋の美容販売員だといった。すると男性陣から、おお、と息をつくような声があがった。なんの、おお、なのかは謎だった。

「メイク上手ですもんね。自分のところのブランドですか?」ヒカリちゃんは横をみた。

「そうなんですよ、あ——」ショウコは両手をあわせると鞄に手を入れた。化粧水の袋をだした。「そのおかげで、けっこうサンプルがあまっちゃうんですよ。他社さんの社員と交換もするんですけど。ちょうど鞄に入れてたんで、よかったらもらってください」

 ステキな笑顔で、ショウコは女性陣に配りはじめた。

 私もピカピカの小袋を受けとった——くやしいけどうれしかった。手のなかのパッケージをみた。もしかすると、ちょっと直球なだけで根はいい子なのかもしれない。さっきから疑いすぎていたのを反省した。「ありがとう」と、私はいった。でも、なぜかその言葉は無視された。

「あれ、余っちゃった。どうしよう?」そのかわりにショウコは声をあげた。こまったようにテーブルのむこう側をみる。「よかったら、みなさんも、もらってくれません? この化粧水、すごく高級品だから手にぬっても違いがわかるんです。びっくりしますよ」

 ショウコはひとつを破ると、その液体をヒロトさんの手につけた。両手をこすって「お、まじだ」とヒロトさんは声をあげた。

 そこからはあっというまだった。その流れで、クリタさんと、イケメンのテラサキさん——たぶん彼女も狙ってる——の手にも。そして、あたりまえのように「ごしごしするんじゃなく、しっとりなじませる感じです」と、テーブルごしに、テラサキさんの手をさすった。

 ぼ、ボディタッチだ。

 あいた口がふさがらなかった。いや、ほんとに。こいつは。この女はなんてことをしやがる。これは手強いぞと直感した。「そうですか? よろこんでもらえてよかったです」とショウコは男性陣に声をあげたあと、ちらっと、こちらをみて笑った。気のせいかもしれないけど、さっきのステキな笑顔ではなかった。

■今日の恋愛認知学メモ

・合コンは、みんなが会話に参加できるようにする。

・空気を読めるだけじゃだめ。空気は導くもの。

・【ノン・エゴイスト・セオリー】合コンではエゴイスティックな行動をしてはいけないという法則。おいしく映るのはいい。悪めだちはだめ。

・この肉食女子は手強いかも——この合コンどうなっちゃうの?

わたしは愛される実験をはじめた。第22話「ひとみしりを克服する方法」

https://p-dress.jp/articles/7227

【読むだけでモテる恋愛小説22話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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