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わたしは愛される実験をはじめた。第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」

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【読むだけでモテる恋愛小説18話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」

■第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」

 私はイケメンにほめられていいと思う。

 合コンの幹事を引き受けたものの、男目線でメンバーをそろえるのは大変だった。大学の後輩をFacebookで探したり、友人の友人まで呼ぶことになった。ルックスがよかったり、とにかく空気を読めるらしい子たちを集めた。

 正直、なんでこんな苦労してるんだろうと思った。でも次の瞬間、それだけ、いままで他人にまかせっぱなしでいたのだと気づいた。そのつど受け身なパンケーキ女じゃだめだと自分のほほを叩いた。

 それでも、あの子は自分から話すタイプじゃないから横にしゃべる子をおいて、それか男女が交互にすわるパターンだったら——なんて妄想するのは楽しかった。

 そんな平日の夜、仕事おわりに、ベニコさんから顔をみせなさいと連絡があった。私は三条木屋町のイタリアン〈サルヴァトーレ・クオモ〉におとなしく出頭した。町を流れる高瀬川に面して、その光景をガラスばりの店内からのぞける。ピザで有名な店だった。

「お連れさまはこられていないようです」と髭の濃いスタッフはいった。

 案内されたのは四人席だった。食器も四人分あった。首をかしげながら席につくと鞄からビーチミントをとりだして一粒がりっとかんだ。

 五分後、ベニコさんがやってきた。

 そこで理由がわかった。そのゴージャスな光景をみて、土下座しながら虫みたいに地面をはって逃げようかと思った。年下っぽいイケメン二人組を後ろに連れていた。洋楽でも響きそうなくらいパンチ力ある構図だった。

「会ったことあるはずよね?」ワンカールしたボブ。ばっちり欧米風のメイク。ぽっちゃり体型ながら、ブラックスーツを着こなして、ベニコさんは、アメリカンドラマのキャリアウーマンという雰囲気だった。「どっちかがシュンスケで、どっちかがトモヤよ」

「ベニコさんはひどいなあ」コートを脱ぎながら優男風のシュンスケはいった——一度、会ったことがある。「ねえ、パンケーキさん?」

 その横で「ああ、やっと会えたな」と、ワイルド系で身体のひきしまったトモヤはじろっと私をみた。その無骨っぽい笑い方にちょっとどきどきした。

 私は、なぜか席を立って「あ、はい、あふ、あう」と声をあげた。こんな日にかぎって、朝遅刻しそうだったからメイクが雑なのを思いだして死にたくなった。

 私はベニコさんをひっぱった。ガラスのむこうの高瀬川を背景に、店の奥から、ちらっと席をのぞいた。イケメン二人組がメニューを手に会話していた。

「どういうあれはこれなんですか?」

「パンケーキ女」ベニコさんは私のあごに指をつきたてた。「混乱しすぎよ」

 私はそれをはらった。「当然でしょう? いきなりイケメンをぶちこまれて——せめて口紅とか用意できたじゃないですか? あらかじめ教えてくれたらいいのに」

「あんたが合コンにいどむから練習になればと思ったの」

「そんな——」

「いい?」ベニコさんはひとさし指をたてた。「合コンの鉄則——場の空気にのまれてはいけない。不必要に合コン用のキャラクターを演じる必要はないわ。媚びるような合コンテクもいらない。そんなの男の側もおみとおし。心の底で、ころころ態度をかえる女だと思われてる。もちろん場にあわせてくだけるのは大事よ。それでも芯を感じさせる女になるの。あなたのなかで培った〝モテる女〟として合コンでふるまうこと——迷ったときはこの考えにもどりなさい」

 私はその師弟愛に心を打たれた。両手をにぎった。「私のためにありがとうございます」

「と、まあ、それはついで」

「はい?」

「優雅な晩餐は人生の祝福よ」ベニコさんは笑った。「人数がいた方が、たくさんピザを楽しめるじゃない」

 四人で食事がはじまった。前菜に、ピザの皿がテーブルにならんだ。シュンスケとトモヤも——さすがベニコさんにしつけられているからなのか——気さくに話しかけてくれた。こうして複数の男性と料理をはさんでいるだけでも会話はスリリングだ。ピザやグラスをとるのも気をぬけない。たしかに合コンの練習になる。

 途中、私の合コンの話になった。

「僕もいきたいなあ」優男系イケメンのシュンスケはマルゲリータをとった。皿にこぼれたチーズをフォークですくった。「その合コン、何対何なんですか」

「3人ずつです。男女いれて6人」私は口のなかのピザがなくなってから答えた。「合コンとか、よくいくんですか?」

「僕は呼ばれたら——かな。人数あわせに呼ばれて気がむいたらって感じ。自分からガンガンいくほどではないですね。最近いってないけど」シュンスケはトモヤの方をみた。

「先週いった」ワイルド系イケメンのトモヤはいった。「バイク仲間に呼ばれて。つまらなかったから二次会にいかずに帰った」

「どうしてですか?」私は身をのりだした。合コンの男性事情に興味津々だった。

「みんな同じことしか喋らないから」トモヤは水を飲んだ。「地元はどこかとか、最近はどこに旅行したとか。うすっぺらくて。結局、顔も名前もおぼえてない」

「でもモテたんじゃないですか? LINEきたでしょ?」

 トモヤは眉をよせた。「顔も名前も一致しないのに返信のしようもなくないですか?」

「そっか」私はうなずいた。「男性も合コン苦手な人いるんだ」

「だれだってそうですよ」トモヤはいった。「男だって人間なんだから。ああ——一部の飲み会マニアをのぞいて。それでも、他人としゃべるのは苦手だけど、恋人がほしいから何度も参加してるやつもいますね。合コンしか出会いがないからって」

「ねえ、ベニコさん」マイペースにピザを堪能していたシュンスケはおもしろそうにいった。「パンケーキさんにぴったりの合コンテクってあるんですか?」

 ベニコさんはナイフとフォークをとめた。上品にピザを丸めようとしていた。ずっと私たちのやりとりを楽しんでいるみたいだった。「そうね」

「でも、もう教わったつもりですけど?」私はフォークをおいた。

「それじゃ半分よ。合コンは戦略と戦術をわけて考える必要がある」

「はあ」私はわり算をおそわった小学三年生みたいに口をあけた。「戦術と戦略」

「わからない単語はグーグルで調べなさい。言葉は一生身につけられるファッションよ? 合コンは〝はじめるまでのセッティング〟と〝はじまってからのアクション〟の二つにわかれる。前者が戦略、後者が戦術。そしてあなたに教えたのは片方だけ」

「はじめるまでのセッティングってことですか?」

 ベニコさんはうなずいた。ピザを一口かじる。テーブルの全員が次の台詞を待つことになった。「モテる女はギャンブルをしない。合コンに、いい男がくるのを待つんじゃない。連れてこさせるの

 シュンスケが口笛をふいた。ちらちら横の席の女子がこちらをみていた。

「そして〝どんなメンバーがくるのか?〟をクリアしたあとで、ようやく〝その場でどうふるまうか?〟のフェイズに移ることができる」

「恋愛認知学のメソッドがあるんですね?」私は身をのりだした。

「もちろん」ベニコさんは赤い液体の入ったワイングラスをとった。それを私のグラスの前においた。チェスで一気に敵陣に攻め入ったようだった。「たとえば会話しながら自分のグラスを、なにげなく相手のグラスに近づけて、その心に、無意識レベルで近づく技もあるわ。まさに〝チェックメイト〟というメソッドよ」

 もう一度、シュンスケが口笛をふいた。今度は、イケメン二人組がにやにやして、私とベニコさんのやりとりを楽しむ番らしかった。

「それって、どういうことなんですか?」

「この〝チェックメイト〟は心理療法のアナロジーという原理よ。食事の席では、互いのグラスが、それぞれの心の分身になる——それを近づけるということは?」

「二人の心が近づくってことですか?」

「相手も気づかないうちにね」ベニコさんはうなずいた。「気づかれないように、口につけるたびに置きなおして、数センチずつ、何回にもわけるのがコツよ。相手がグラスを遠ざけたら、また一から距離をつめていくの」

「すごい」私はグラスを手にした。いつもより輝いてみえた。「魔法ですね」

「そんなもの存在しないわ」ベニコさんは首をふった。「なにかを求めるときに私たちはすぐに魔法のようなものを求める。身体をきたえるのやダイエットも、すぐに効果がでるものを知りたくなるでしょう? 本屋やネットでは〝すぐに〟〝だれでも〟〝30分で〟なんて文句がおどってる」

「思わず手にとっちゃうやつですよね」

「それがありえないのよ」ベニコさんはワインに口をつけた。「そんな夢をみることはできるけれど」

「ありえない?」

「実際の話、あなたのまわりに一瞬でやせるか筋肉のついた女はいたの?」

 私は目線を手をふいた。「いわれてみれば——いないかも」

「これだけはおぼえておいて」ベニコさんはフォークをたてた。「もし、あなたの人生になにかをおこすとすれば、それは、地道な行為をつみかさねるしかありえないの。一瞬で、あなたをどこかに連れていってくれる魔法なんて存在しないのよ」そこで天井をながめて感慨深そうな顔をしたあとつけたした。「いえ、むしろ——みえない努力をつみかさねて、それが表にあらわれたときにはじめて、人は、それを魔法と呼ぶのでしょうね」

「どうしてですか?」私は両手にグラスをもった。

「なに?」

「どうして人は魔法を求めるんですか?」

「そうね」ベニコさんはにやりと笑った。「あなたが考えなさい」

 三条木屋町の夜のもと、店内の、オレンジの照明はあかるく感じた。ガラスのむこうの高瀬川も照明を反射させて、さらさら町の木の葉を流していた。

 視線をもどすとイケメン二人組が次のピザの相談をしていた。それをベニコさんは楽しそうにながめている。ふとメニューから顔をあげて「パンケーキさん、なんでにやにやしてるんです?」とシュンスケはいった。あわてて私は「いえいえ、なにも」と首をふった。なんとなく、今日のことは忘れないだろうと思った。

■今日の恋愛認知学メモ

・合コンの鉄則。場の空気にのまれてはいけない。くだけるのも大事だけれど、芯を感じさせる女になること。

・男性だって合コンが得意なわけじゃない。

・【チェックメイト】自分のグラスを、こっそり相手のグラスに近づけるメソッド。その心に無意識レベルで近づくことができる。

・魔法なんて存在しない? ちょっとだけ、その意味もわかる気がする。いよいよ本番だ。

わたしは愛される実験をはじめた。第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」

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【読むだけでモテる恋愛小説18話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「まだフラれてることに気づいてないの?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない?」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」
第45話「LINEは疑問符をつければ返事がくると思ってない?」
第46話「男に未読スルーされないLINEを作ろう上級編」
第47話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」
第48話「イケメンのLINEを既読スルーできる?」
第49話「愛される女は自分ばかりを愛さない」
第50話「モテる女のスリリングなLINEの作りかた」

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛について語りまくってます。アイコンをおすと飛べるよ。

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