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わたしは愛される実験をはじめた。第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」

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【読むだけでモテる恋愛小説17話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」

 私はためらっていた。

 幹事ヒロトさんに、どんな男を合コンに連れてこようか聞かれていた。普通なら即座に飛びはねるべきだろう。ホテルのオーダービュッフェみたいに、好き放題、身長170以上、公務員、ひとり暮らし、京阪沿線、薄顔イケメンなんて注文するところだろう。

 しかし、ベニコさんは首をふった。

 それでは女は食いものにされる。ここで、ある言葉を男幹事にぶつけておく必要があるらしい。その正体をきいたとき——まさかと信じられなかった。

 ベニコさんに電話した。

「楽しんでいるときに限って呼びだされるものね」ため息をついた。近くで男性の笑い声がしたけれど、たしなめてベニコさんは通話にもどった。「パンケーキちゃん」

「すいません」私はいった。「いまヒロトさんとLINEしてます」

「そんな気がしたわ——それで?」

「どんな男性を合コンに連れていくべきか質問されたところです」そこで私は十秒くらいだまった。「その、やっぱり〝あの言葉〟をいう必要ってあるんですか?」

「オフコース」

「でも——」

「こわくなって電話してきたわけ?」

「そうです」私は電話ごしなのにうなずいた。「もう普通に、イケメンがいいとか、おもしろい人がいいとか、好みのタイプを返したらだめですか? 悪くないでしょ?」

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ」

「ミホです」

「なにもいわないわ」ベニコさんはいった。「あなたに必要なことは伝えてある。あとは、そのホイップクリームのつまった頭で考えなさい」

「ええ、ひどくないですか?」

「ひどくない」

「見放さないでくださいよ」

「最後の瞬間まで手をにぎってくれるものなんてありはしないのよ」

 受話器のむこうで空気が響いた。風とバイクのエンジン音みたいだった。

「ていうか、いまどこにいるんです?」

「夜の海をみてるの」ベニコさんは受話器のむこうで、わかってるわと、だれかに返事をした。「そろそろ切っていいかしら?」

「じゃあ、せめて考るヒントでも」

 自分でもなにをすがっているのかわからなかった。現実と顔をあわせようというとき、人はこんなにも弱いのか。つくづく情けなかった。

「そうね」ベニコさんは数秒だまった。「風のことでも考えなさい」

 通話は切れた。

 そのまま窓に手をついた。ガラスに自分の顔が映っていた。あいかわらずの困った表情。私は、どうすればいいんだろう? いや、どうしたいんだろう? こんなときベニコさんならどうするだろう?

 心をおちつけながら、いろんなことを考えた。そして胸のなかにある、ベニコさんからもらった数々の言葉を思いかえした——たしかに必要なものは受けとっていた——あとは覚悟だけなのはわかっていた。私はビーチミントをとりだすと一粒がりっと噛んだ。

 LINEをひらいた。送信ボタンを押した。

『わりと真面目にいうと、がちで彼女がいない人がいいなあとは』

 それは〝サンダーボルトLINE〟という恋愛認知学の必殺技だった。男幹事に、彼女のいない男をたのんで——そういう事情もわかるけどと大人のふりして——はなから合コンに彼女持ちを呼ばせないメソッドだ。

 スクリーンに文字があらわれると心臓の音がした。どんな結果がでるか。恋愛認知学を信頼しながら、なんのことだと否定してほしい気もした。返信がきた。

『あー、なる。そういうのあるもんね笑』

 その瞬間、私は安全を確認してから、スマホを布団に投げつけた。どうやら真実らしい——合コンにくる男性に彼女持ちがいるというのは。

 息を整えたあと布団からスマホをひろった。衝撃だけど予想外ではない。シナリオ通り進んだわけだ。内心、あせりつつ組みたてたとおりの返信をする。

『あるあるですよ笑』

『ほんと男のことわかってるな笑』

『ヒロトさんほどじゃないですよ笑』 

『あたりまえ笑!』

 大人の女らしい対応を心がけた。そういう男の事情はよくわかってるんですと歩みよる。男の嘘を暴いて、一層、ヒロトさんに対してポジションが生まれた気がした。

『てか、ぶっちゃけ何割くらいです?』

『彼女持ち?』

『そうです』

『飲み会によるけど。毎回、ひとりふたりはいるかも笑』

『人数あつめるとそうなりますよね』

『なにも考えずに集めて、気づいたら全員彼女持ちだったときはあせった!』

『やば』

『まあ、三割くらいはよくある話かも!』

 こんなにぶっちゃけトークできる女子はいないぞ、というふうに、ちょっとした悪事を共有して一気にうちとけた感じだった。うちあけ話は心を近づける。

『基本は楽しめたらいいんですけど。今回は、佐々木希がくるからパスで笑』

『りょうかい笑 彼女いないイケメン集めます!』

『イケメンもだけど、いい男だなって感じの人も好みです』

『なるほど笑 いい男ね、りょうかい笑』

 すかさず〝イケメン〟だけでなく〝いい男〟という提案をした。この方がしっかりした大人の男を求めているイメージが伝わるから。〝いい男召喚のメソッド〟だった。

 このあたりで、また日程は決めましょうとLINEを終えた。もはや、かけひきの相手でないので恋愛認知学の〝モテる女の既読スルー〟は使わなかった。

 部屋着をぬいだ。お風呂に入った。

 髪を洗いつつ、いまさら〝合コンにくる男子に彼女もちがまぎれている〟という事実の重さを感じた。合コン女子のチヒロやカナには教えることもできない。信じようともしないだろう。目をとじて頭からシャワーをあびる。

 恋愛認知学を習いはじめて、いろんなことがみえるようになってきた。すこしは恋愛や男性も理解できるようになってきた——と思う。でも、キレイなことばかりではなかった。シャンプーを流しおえた。目をあけると、生活感だらけの風呂場だった。

 なんだか遠いところにきてしまったなあ、と思った。

 それをきいたとき、私は、ありえないとすぐに否定した。あまり合コンに参加したことはない。それでも、いくつかの顔を思い浮かべた。すでに誰と誰に恋人がいたというの? 軽いパニックだった。「ていうか、そんなの嘘ですよ。ありえません」

「そう?」

「絶対にそうですよ。そんなの裏切りじゃないですか」

「裏切りよ」にぎやかな四条通を歩きながらベニコさんはいった。ぽっちゃり体型ながら、ばっちり欧米風のアイメイク、ワンカールした黒髪ボブ、品のいい黒のスーツ。アメリカドラマのキャリアウーマンという感じだった。「パーフェクトに」

「じゃあ——」

「だからと文句をいってもはじまらない。女は効率的にさばくだけよ。みぬく技術を身につける前に、そもそも呼ばせない戦略をとるの

 私はそれでも信じられなかった。「でも、ありえないですよ?」

「認めたくないことを正しくないことだと思いこむ。人間の悲しい性ね」

「だって合コンにくる男性に彼女がいるなんてひどくないですか?」

「だったら?」

「え?」私はいいよどんだ。「文句をいうとか——」

 四条大橋の手前でベニコさんはたちどまった。大正時代に建てられた建造物。レトロな砂色の東華菜館の前だった。京都住民や観光客の笑い声がとおりすぎた。

「いい?」ベニコさんはひとさし指をたてた。「私たちは、みんな正直者でいましょうね、なんて子どもの世界では生きてないの。むしろ、ここは嘘と欲望だらけの世界よ。どれだけ気にくわなくても、それが真実。悲しいけどそういうものなの——わかるでしょう?」

 私は時間をかけてうなずいた。それくらい理解できる年齢だった。

「むしろ、あなたは、これからも愛される実験を続けることで、さらに苦い真実を知ることになるわ。嫌気がさすくらいね」

 そのアイメイクの濃い表情は真剣だった。私はおもわず息をのんだ。「それが愛される実験をするということなんですか?」

 ベニコさんは返事をせずに、そこで会話はおわった。歩きはじめるも、どちらともなく四条大橋の途中で足をとめた。町のあかりを反射する鴨川をのぞいた。

「この世は醜悪よ」ベニコさんは欄干に手をついた。「だからと逃げて許されることにはならない。むしろ受け入れることのできた女だけが——本当の愛される女になる」

■今日の恋愛認知学メモ

・合コン男子には彼女持ちがまぎれていると頭に入れておくこと。

・【サンダーボルトLINE】男幹事に「彼女がいる男はNGで」とちゃんと伝える。それで彼女持ちを全滅させるメソッド。大人の余裕をみせること。

・【いい男召喚のメソッド】男幹事に〝イケメン〟でなく〝いい男〟と言葉にする。しっかりした大人の男を求めているイメージが伝わる。

・現実を受け入れられた女だけが——本当の愛される女になる? 

わたしは愛される実験をはじめた。第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」

https://p-dress.jp/articles/6821

【読むだけでモテる恋愛小説18話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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