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わたしは愛される実験をはじめた。第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」

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【読むだけでモテる恋愛小説16話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」

 私は日付がかわる前に、部屋で、男側の幹事であるヒロト君とLINEを続けた。女幹事として——いい男を合コンに呼ぶために——彼を味方にする作戦だった。

『週三で合コンって、めちゃくちゃ大変そうですね』

『そう! 隠れた努力があったりする笑』

『隠れた努力ありそう笑 でも幹事ならモテるんじゃないですか?』

『いやいや!』

『いやいや?』

『俺は基本、その場が楽しければokだから! 理想が高いのもある笑』

『あー、顔が広い人って、そうなりますよね!』

『わからないけどそうかも笑 ミホちゃんも出会い探してる系?』

『バッチリそういう系です笑』

『そういう系って笑 じゃあ、また飲み会あるけど誘うよ』

 LINEは内容よりテンポだ。

 くすっと笑えて返信しやすいのが大事。恋愛認知学の〝短文の法則〟や〝鏡の法則〟も使った。とにかく形をまねる。相手のフィーリングにあわせる。今回はヒロト君の返信のはやさと「!・笑」を多用する癖をまねた。あとは「隠れた努力・いやいや・〜系」のようなフレーズそのものもオウム返しする。

『ていうか、私も女の子あつめますよ』

『ほんと? そういう女子めっちゃ貴重なんだけど笑』

『私、そういう女子みたいなとこあります笑』

『たすかります!』

『男目線でチョイスしますから笑』

『まじ笑』

『なぜか、まわりにがちで可愛いのに彼氏いない子多いんですよ』

 今回、はやい段階でアピールしたいのは三点だった。幹事をひきうけるタイプの女子であること。男目線でチョイスできる幹事であること。まわりに可愛い子が多いこと。男の幹事にとって、のどから手がでるほどのメリットだ。

『男連中めっちゃテンションあがりそう笑』

『そういうの好きなんです笑』

『なに笑?』

『いや、どうやったらみんなの満足度があがるかみたいな笑』

『おー、さすがだね。めっちゃ俺も考える』

『ほら、ぶっちゃけ合コンってメンツ次第なとこあるじゃないですか』

『ほんとそれ笑! 男は可愛い子が一人いたら文句いわないからね』

『女子も笑』

『笑 なんかミホちゃんは、サシで飲んでも楽しそうだな!』

 ぐんぐん食いつきを感じた。こちらの要望をとおすには、まず、あちらの要望をきくべし。いかに自分は役立つかを語る。たとえば単純にレベルの高い子をそろえますと宣言するだけでも、男幹事は、それにレベルをあわせないといけない心理になる。これが〝ギブアンドテイク合コンの法則〟だった。

 私は壁のプーさんの絵の時計をみた。十一時すぎだった。ここで、さらに恋愛認知学のメソッドを投入する。やらしくなく男幹事にむかって、いい男を集めるように誘導できるLINEテクニックだ。

 そっと入力したあと送信ボタンを押した。

ヒロトさん、どういうタイプがいいとかあります?

『え、まじですか笑?』

『わりとまわりいるんで笑』

『佐々木希がいい!』

『がっつりキレイ系じゃないですか笑』

『かつ可愛いみたいな笑』

『めっちゃ注文する笑』

『すげえファンなの。謎にクリアファイルめっちゃもってる笑』

『わかりました。さがしてみますね。他にあります?』

『まじ? なんか期待。ていうか、むしろ女子側もどんなタイプがいいとかある?』

『まじですか』

『そらそうだよ。なんかハイレベルな雰囲気してきたし悪いし』

『やった』

『がんばる! んで、ご要望は?』

 私はスマホを手にガッツポーズした。ロフトで買った丸いクッションを胸の下において、カーペットに寝ころびながら足をばたばたさせた。心のなかで勝利のワルツをおどった——ワルツの意味もよくわからないけど。

 これが必殺技〝タイプクエスチョン〟だった。

 こちらから進んで「合コンに連れてくるのは、どんなタイプがいいですか?」と、質問することで「じゃあ、そっちはどんなタイプがいいの?」と質問させるメソッドだ。まだ道なかばだけど、ややこしい国家間の交渉をなんとかする外交官の気分だった。

「相手にいうことをきかせるにはね」フランソア喫茶室の扉をしめたあと、ベニコさんはいった。ワンカールした黒髪ボブ。欧米風のアイメイク。ぽっちゃり体型ながら、アメリカンドラマのキャリアウーマンみたいな雰囲気だった。「さしだすこと」

「さしだすこと?」

 すこし肌寒い春の夜のもと、ベニコさんはスーツの袖をなおした。「人間は欲しがるくせに、いざ、ぽんと与えられると受けとりっぱなしができない。なんとか恩を返したくなるもの。たとえば引越しを手伝ってくれた友人がいたとしましょう。嫌な顔せず、ずっと家具を運んでくれた。作業がおわり夜になった。お腹がすいた。どうする?」

「せめて焼肉でも御馳走してあげたくなります」

「でも、それもいらない。手伝いたかっただけだから——なんて言われたら?」

「え?」私はまばたきした。「なにかはしてあげたいですよ」

「そういうこと。受けた恩は返さないと気持わるいのよ。心理学では〝返報性の法則〟といわれるものね。携帯会社や保険でも新聞でも、なにかと粗品をプレゼントしてくるのは、それを狙っているのよ。ちょっと物をもらったからにはアンケートくらい答えてあげるか——そうやって転がしていくわけ」

「ほんとですか」私は口をあけた。「ていうかイオンでクッキー配ってて、いつのまにかクレジットカード作ってたことありますよ」

「クッキーで釣られるパンケーキ女」

「われながらすごく安っぽいですね」

 私たちは、すぐ側の、京都の四条木屋町をながれる高瀬川をのぞいた。夜の色の水面に、無数の桜の花びらがピンクの液体をとかしたように流れていた。

「だから、私たちは、相手のために行動してあげるべきなのよ。お礼をもらわずにね——意地でもうけとっちゃだめ」ベニコさんは私の首筋にひとさし指をはわせた。その赤い爪のつつつという感触にぞくぞくした。「とにかく信用をためるの。それがたまりたまって、あなたの人生を動かす、みえないエネルギーになるわ」

「それはわかりましたけど」私は首をおさえて一歩さがった。「私、そんな可愛い子ばかり集められるか不安ですよ? 苦労しそうで」

「じゃあ苦労なさい。あらゆるツテをたどりなさい。あなたは男側の幹事にも同じことをさせるんだから。幸せをつかみたければ——これは合コンにかぎった話でないわ——とにかくWin-Winの関係をつくること。共犯になるの。そこに受け身だ、人見知りだ、なんてパンケーキ女みたいに甘えてる暇はないわ」

「わかりました」私はしばらく連絡してなかった女子の顔を浮かべた。「でも、どうやって誘えばいいんです?」

「それこそ〝レベルの高い男がくるから〟といえばいいじゃない」

「なるほど。ていうか男女ともに〝レベルの高い相手がくるから〟と伝えるのって面白いですね。それで本当にレベルがあがるわけだし」

「幻想みたいね」ベニコさんは頭上から舞いちる桜の花びらながめた。「いい? レベルの高い女を呼べる女は重宝される。ますます男の人気もあがるわ。私たちも、今回イケメンをそろえてくれたら、その幹事のヒロトを重宝するようになるでしょう? 気前がいいって。さらに彼はハイレベルな合コンに参加できることになる——場数がふめてスキルもあがる——これと同じこと。男が口にする〝どうせ女の幹事は自分よりレベルの低い女しか連れてこない〟なんてたわごとを壊してやりなさい」

「結局、顔なんですかね?」

 夜の木屋町を背景に、そっとベニコさんは首をかしげた。

「ほら」私は耳をつまんだ。「男性側がよろこぶのは、結局、可愛い子じゃないですか。幹事として力をつけるために集めるけど——なんだかなあって」

「女側もイケメンだ高身長だなんて、好き勝手、男を評価してるでしょう?」

「それは、そうですけど」

「その気持ちは大事よ」ベニコさんの顔がやさしくなった。「でも、私たちは、もう大人だから〝人間は外見じゃない〟なんてきれいごとはやめましょう。本当の意味で幸せになるためにね。まちがいなく人間はルックスや上辺の情報で、異性をえらぶ生物よ。そもそも出会った瞬間なんて、それくらいしか判断する材料がないもの。それなのに〝もっと本当の私に気づいて〟なんて実におもいあがった考えだと思う。でも、もちろん——それが全てではない。それを証明するために私は恋愛認知学を実験してるわけだから」

「そうなんですか?」

「理由のひとつね」ベニコさんは高瀬川の水面をながめた。「私たちは変えられないことを受け入れる冷静さと、変えられることを変える勇気と、そのちがいをみわける知恵を持つしかないのよ」

 私は何度か夜の空気をすった。大事なことはゆっくり飲みこむべきだから。

「わかりました」私はうなずいた。ベニコさんは、本当にわかったのかしらという表情をしたが気にしないことにした。「じゃあ気をとりなおして質問しますけど〝タイプクエスチョン〟を使って〝どんな男を連れてこようか?〟と男幹事にいわせたとします。ここでおもう存分、ジャニーズ系でも、エグザイル系でも、公務員でも、塩顔でも、なんでも好みを注文すればいいってことですよね?」

 ベニコさんは首をふった。ワンカールした黒髪がゆれた。

「どうしてですか? ここまですれば、ちゃんと連れてきてくれるでしょう?」

合コン最大の罠があるから」ベニコさんは太い眉をよせた。「それを排除しないと女は食いものにされるだけ——悲しい結末になる。だからこの段階で、男幹事に、ある言葉をぶつけておく必要があるのよ」

 合コン最大の罠? 食いもの? 悲しい結末? 

 私は夜の風にコートをひきしめた。合コンの経験なんか数えるほど。イケメンがくればラッキーくらいに考えている身としては、まったく想像できなかった。けれど、その濃いメイクと厳しい表情の奥には、よほどのものが隠されているのだと思った。

■今日の恋愛認知学メモ

・まず女幹事として重宝されること。

・【ギブアンドテイク合コンの法則】合コンでは女性側の要望をとおすために、男性側の要望をきくべしという法則。たとえばイケメンを連れてきてもらうなら、まず可愛い子をつれてくると宣言すること。男幹事はレベルをあわせないといけない心理になる。

・【タイプクエスチョン】「合コンに連れてくるのは、どんなタイプがいいですか?」と質問することで「そっちはどんなタイプがいいの?」と質問させるメソッド。

・とにかく相手のために行動すること。やらしいけど自分のためになるから。

・合コン最大の罠って? ちょっとこわい感じがする。

わたしは愛される実験をはじめた。第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」

https://p-dress.jp/articles/6776

【読むだけでモテる恋愛小説17話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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