1. DRESS [ドレス]トップ
  2. 恋愛/結婚/離婚
  3. わたしは愛される実験をはじめた。第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」

わたしは愛される実験をはじめた。第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」

Share

【読むだけでモテる恋愛小説15話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」

合コンのあとにきたのは一番人気のダイチさんからのLINEだった。

『今日はおつかれ! ちゃんと帰れた笑? すごい楽しかったよ。また飲みいこう!』

 なんと。これが合コンの奇跡か。

 私はスマホをにぎりしめてダイチさんの顔を思い浮かべた——髪の先から、足の爪まで女性ホルモンがかけめぐり昇天するかと思った。この四月にいよいよ春の風が吹いている。彼氏に捨てられたが、恋愛の神は私を見捨てていなかった。私は速攻で「はい! いまでも明日でも!」と返事しようとした。

「そこのパンケーキ女」ベニコさんの声がした。「ストップ」

 私は顔をあげた。わけもわからず骨をとりあげられた犬みたいになった。次には、謎の怒りがこみあげた。「私が簡単にモテたから気にくわないんですか?」

 ベニコさんは息をついた。ワンカールしたボブ。バッチリと濃いアイメイク。ずんぐり体型ながら、ぼっちゃりした足を組んで、アメリカンドラマのキャリアウーマンのような雰囲気だった。「すぐに返信するなんてポジンションをさげるだけ。そんな恋愛認知学の基本もわすれた? それに——その文面が自分だけにきたと思ってるの?

 私は首をひねった。頭にクエスチョンマークが浮かんだ。

「こんなパンケーキ女がいるから」ベニコさんは空中に花を咲かせるようにエレガントな感じで指をひろげた。「男もスパムLINEを送るんでしょうね。かくも、この世は悲しみに満ちている」

「そんな詩人みたいなこといわないで——スパムLINE? なんです?」

「そのダイチって男は遊び目的っぽいわ」

「そうですか? エネルギッシュでカッコいい感じでしたよ?」

「それは返事として成立してないけど」ベニコさんはいった。「ようするに女全員におなじようなLINEを送って食いつきのいい女に手をだそうってわけよ

「でも」私はむっとした。「ダイチさんが私を好きになった可能性もあるじゃないですか」

「それは、いまこのフランソア喫茶室に人工衛星ひまわりが落下するくらいの確率ね」

「なんで合コンに参加してない人がわかるんです?」

 ベニコさんは、赤い布ばりの椅子に肘をついたまま、仕事のできない部下をみるような目をした。そのメイクの濃さに気圧されそうになった。というか気圧された。

「あなたの個人情報にふれてないから」ベニコさんはいった。「本当に興味があるなら、それをアピールするために飲み会で知った情報を入れるでしょう? 思いつくままに打ったような勢いだけの文面だし、こんなのコピーペーストまるだしじゃない。それに、話を聞くかぎり、あなたがモテる要素は皆無だった」

「そんなこと——」と、そのときスマホが光っているのに気づいた。

 チヒロとカナが女子だけのLINEグループで会話していた。チヒロが「ダイチさんからLINEがきた!」とスクリーンショットを投稿したのに「私も同じのがきてる」とカナが返信していた。そして、やっぱり遊び人だったんだ、そういえばそんな感じあったよね、ひっかからなくてよかったあ——と続いていた。

 その画像はまったく私のとおなじだった。むしろ、ダイチさんの送信順は一分おくれて私が最後だった。

「そのダイチって男もなかなか雑な攻め方するのね。女が情報交換してるなんて常識なのに。それでも美味しい思いできてきたのか、正直、今回はどうでもよかったのか——」と、ベニコさんはあごに手をそえた。

「この五分のあいだ調子こいたことは謝りますから傷口をえぐるのはやめてください」

 ベニコさんは肩をすくめた。海外映画みたいな仕草だった。「女には女の合コン戦術があるように、男にも男の戦術があるってことよ。それを読み解かないと

「ていうか、これ、どう返信したらいいんです?」

「しなければいい」

「失礼じゃないですか?」

「もちろん、この状態から狙う手もあるけど——わざわざ、めんどくさい案件に首をつっこむ必要はないわ。社交辞令か——既読スルーでほっときなさい。暇で死にそうなときに相手すればいいわ。モテる女ならそうするでしょ? つまりモテる女のふるまいを真似ることでモテるという恋愛認知学的にも、それが正しいアクションになる」

「それはまあ」私は指で髪をつまんだ。「私がいうのもあれですけど——ずっと放置するくらいなら練習相手にでもすればいいんじゃないですか?」

 ベニコさんはきっぱり首をふった。ワンカールした黒髪がゆれた。

「いい?」ベニコさんはひとさし指をたてた。「合コンは取捨選択。慈善事業じゃないの——すべての男を相手してる暇はない。だれかを選ぶってことは、その他の男を、はぶくってこと。男連中だって女子みたいにつながってることを考えると——いまだって作戦会議中かもしれないくらい考えないと——ビギナーは一つの合コンにつき攻めるのを一人にした方がいいわ。これは恋愛認知学の〝タイマンセオリー〟よ」

「なんの話ですか?」私は首をかしげた。

「今回、狙うべきはその男じゃない」ベニコさんは私のスマホをとるとグループのメンバー一覧をひらいた。「この男にLINEを送りなさい」

 三日後、月曜の夜。頭にタオルをまいて風呂あがりにスマホをにらんだ。〝十時すぎの黄金時間メソッド〟を活かして十時すぎにした。目の下にクリームをぬりながら、考えた文章を打ちこむ。さぞかし合コンは挙動不審な女だったろう。しかし一人の相手にむけてLINEするなら、そこそこ修行してきたつもりだ。

 当日にLINEしなかったのは理由がある。

 第一に、合コンのあとは、それぞれ生活にもどるのに忙しいから、いいかげんな対応をされやすい。第二に、がっついてる印象をあたえる。第三に、ほかの女性とのやりとりに——みんなすぐに送るから——埋もれてしまう。だから、合コンのあとにLINEするなら後日の方がいい。これは恋愛認知学の〝遅れてきた存在感の法則〟だった。

 だから当日はグループLINEも「今日は楽しかったです。ぜひ、また飲みにいきましょう」という投稿だけにした。それ以来、はじめてのアクションになる。

『ミホです。こないだは、おつかれさまでした』

 私は〝短文のメソッド〟にてシンプルなLINEをおくった。これでも返信はくるだろう。むこうの立場上、返信しない理由がないから。さっそく返信がきた。

『お、ミホちゃん。来てくれてありがとね! また飲もう!』

『ぜひぜひ。ヒロトさんもナイス幹事でしたよ笑』

『うれしい笑』

『よく合コンしてるんですか?』

『飲み会は好きだねー。先月は、週三のときもあった笑』

 私は幹事のヒロトさんに近づくことにした。恋愛目的じゃない。ベニコさんいわく、キャラクター的にも、彼は〝当たりの幹事〟だというのだ。人付き合いが多く、出会い目的というより楽しむために主催しているタイプ。

「ゲームに勝つ最短の方法はなんだと思う?」フランソア喫茶室で、むっちりした足を組みながらベニコさんはいった。「合コンでも——それ以外でも」

 私は二十秒くらい考えた。「練習して、上手にやるしかなくないですか?」

 ベニコさんは首をふった。

「あ、攻略本を買うとか。ネットで探す。あとは上手な人に助けてもらう」

「最後のはマシね。50点」

「あ、はじめて0点以外もらった気がする」

「いい?」ベニコさんはひとさし指をたてた。「ゲームマスターになるの」

「ゲームマスター?」

「そのゲームをつくる側にまわるのよ。ルーレットやポーカーをプレイするんじゃなくて、カジノのオーナーになるの。馬券を買うんじゃなくて競馬場の胴元になるの。アイドルと握手してよろこぶんじゃなくてプロデューサーになるのよ」

「はあ」私はぽかんと口をあけた。「ちょっと規模が大きすぎません?」

「アナロジーよ」ベニコさんは水のグラスの上に手をかぶせた。「場の支配側に立つこと。なにかと有利なアクションができるし、心理的にもポジションがある。例えばパーティで、あれが主催者の女性だといわれたのを想像してみて。その女のまわりには活きのいい男が群がってると思わない? それがポジションの力。まさに恋愛認知学のセオリーどおりね。これを〝ゲームマスターメソッド〟という。つまり合コンの場合は?」

「幹事になれってことですか?」私はめんどくさそうな顔をした。居酒屋を予約して、メンバーを探して、複数人に連絡して、考えるだけでしんどかった。

「ねえ、受け身なパンケーキちゃん」

「はい?」

「これまでなにを学んだの? これもデートプランを練るときと同じじゃない。だれもやりたがらないからこそ、率先して、みんなを楽しませる側にまわるのよ

 私はさんざん言われてきたことを思いだした——人生を変えるのはリアクションでなくアクション。すぐに責任から逃げて、受け身にまわるのを反省した。「すいません」

「けれど」ベニコさんはひとさし指を唇にふれた。「合コンは女だけが努力してもできないもの」

「男性は集められないですもんね」

「そこで、あなたは男の幹事を——男側のゲームマスターを——味方にする必要がある

「はい? それって女の子集めますよって声かけるんですか?」

 ベニコさんは首をふった。「それじゃむこうも、よくある出会いのない女からの合コン依頼にしか感じないでしょうね。本当にいい男を連れてこさせるには、もっと近づく——いわば戦友になるのよ」

「戦友」私は慣れない言葉のようにつぶやいた。「でも、どうやって?」

 ベニコさんはにやりと笑った。「人間はメリットに逆らえないものよ」

 私は部屋のなかで、ピーチミントを一粒がりっと噛んだ。ベニコさんのメソッドを胸に、まずヒロト君を釣りあげることにした。どんなメリットを提示するのか? テンポよくLINEを返しながら、化粧品や文房具の散らばった机のメモ帳を何度もながめた。

■今日の恋愛認知学メモ

・【スパムLINE】男性が合コンのあとに一斉送信するLINE。食いついた女を釣りあげようという作戦。おなじ文面から内容を変えるものまで。

・【タイマンセオリー】ビギナーは一つの合コンにつき、攻めるのをひとりにした方がいいという法則。男性陣も女子みたいに情報交換してるから。

・【遅れてきた存在感の法則】合コンは、後日LINEした方が相手をしてもらえるという法則。

・【ゲームマスターメソッド】合コンを主催する側にまわり、なにかと有利な場に自分をおくこと。心理的にもポジションが得られる。幹事はめんどくさいけど、だからこそ引き受けられる人間は強い。

・男側の幹事を味方にするのはわかった。でも、どう交渉すれば食いつくんだろう?

わたしは愛される実験をはじめた。第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」

https://p-dress.jp/articles/6726

【読むだけでモテる恋愛小説16話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

Share

浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

Latest Article