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わたしは愛される実験をはじめた。第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」

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【読むだけでモテる恋愛小説13話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」

■第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」

「なるほど」ベニコさんは珈琲を飲んだ。「ちょっと男に告白されたくらいで、私はもう恋愛慣れしたモテる女だと勘違いしたあげく、中途半端な恋愛認知学のメソッドも失敗して、合コンで桜みたいに散って、おまけに友人たちにダシに使われて、さんざん反省会でダメだしくらって、それでアホな負け犬みたいに帰ってきたわけね」

 いつものフランソア喫茶室にいくと、さっそくなじられた。ばっちりと濃いアイメイク。ワンカールしたボブ。ベニコさんは、ずんぐり体型ながら、ブランドっぽいスーツを着て、海外映画のキャリアウーマンという雰囲気だった。

「ベニコさん、なんかうれしそうじゃありません?」

「かもね」ベニコさんは笑った。「あいかわらずのパンケーキちゃんだから」

「ミホです」

「とにかく」ベニコさんは赤いネイルの両手をあわせた。「本当の反省会をしましょう——今回の合コンはなにが失敗だったと思う?」

「なにからなにまでって感じです。最後まで、かみあった感じがしませんでした」

「よくわかってないわけね」

「あの」私はテーブルから顔をあげた。「合コンでは恋愛認知学って使えないんですか? わざと遅刻しても意味なかったし、ルッキングも——ほかのメソッドは、だすこともできなかった。さすがの恋愛認知学も万能じゃないのかなって」

「あなたの敗因を一言でいってあげる」ベニコさんはいった。「技術におぼれすぎ」

 私はカップを手に数秒考えた。「おぼれすぎ?」

「人間は学んだことも、時間が経てば、都合のいいように解釈してしまうのね。あなたは恋愛認知学を勘違いしてるわ。いい? これはテクニックの寄せ集めじゃないの」

「でも、たくさんメソッドを教えてくれたじゃないですか」

「本末転倒という名のパンケーキ」

「はい?」

「恋愛認知学は〝モテる女のふるまいをすることで男の本能に訴えかける〟というコミュニケーションシステム。これは心理学や生物学に基づいているから、どんな時と場合でも、その本質がブレることはない。例えば、いきなり江戸時代やアマゾンの奥地に飛ばされてもモテることができるわ」

「それはわかりますよ。だったら、合コンでも使えないとおかしくないですか?」

「おかしいのは、頭にホイップクリームが詰まってるパンケーキちゃんの方ね」

「ちょっとホイップクリームって」

「質問」ベニコさんはひとさし指をたてた。「そもそも人間というものは、どんな場所にいっても同じふるまいをするものかしら? このフランソア喫茶室で珈琲を飲んでいるときでも、友達と居酒屋にいるときでも、イタリア人のイケメンとのデート中でも、恩人の葬式のときでも、江戸時代にタイムスリップしても、おなじ感じでいるわけ?」

「いえ」私は首をふった。「場所にあわせて変えると思います」

「社会性をおびた生物である私たちは、いくつもの仮面を使い分けている——そういうものよ」ベニコさんは顔の前に、仮面をかぶせるみたいに手のひらを広げた。「だからこそ合コンにいどむなら、その場にあわせた〝モテる女のふるまい〟が必要になる

「そっか」私は自分の両手をみくらべた。「私は、デートとか、普段の生活での〝モテる女のふるまい〟を合コンでやろうとしてたんだ。ちぐはぐなわけですね」

「それじゃなんにも刺さらない。そもそも合コンの〝モテる女〟になりきれてなかったんだから。それどころか技をだすことすら場違いになる。いい? その場その場にあわせた〝モテる女のふるまい〟をすること。どんな状況でも、あなたが本質さえ理解していればブレることはないわ。それが愛される女になるということ」

「本質ですか」

「その場に流れる法則をみぬきなさい。そのなかでモテる女の行動をとるの」

 ベニコさんはひとさし指を頭にあてた。にやりと笑った。レトロな店内に、その口紅が映えた。私はピーチミントをとりだして、がりっと一粒かんだ。TPOにあわせた行動をとる——そんな当たり前のことを見失っていた。

 私はカップをとった。「じゃあ、合コンでは、どんな女性がモテるんです?」

「あなたはどう考えるの?」

「えっと」私はチヒロのことを思いだした。今日も彼女たちにテクニカルノックアウトをくらったわけだ。「やっぱり合コン慣れしてる子は強いなって思います。サラダとか大皿料理をよそったり、空になったグラスをみつけたらメニューをみせたり——あと男性の話を、すごいすごいって、キラキラした目できくイメージです」

 ベニコさんは手すりに肘をついて、実につまらなさそうな顔だった。「それ本当?」

「なんです?」

「本当に、そんな女が合コンでモテると思ってるの?」

「え、だって実際に盛りあがってたし。すごくテクもありましたよ——あと話が弾んだときに肩にタッチもしてた気がする」

「しょうもない」ベニコさんは息をついた。「そんなマニュアルどおりの対応、とっくに男はみぬいてるわよ。悪い気もしないからそのままにしてるだけで、心のなかで浅はかだと思われてる」

「そうですか?」つい声が大きくなった。私の信じる合コンの黄金テクニックとは、とにかくボディタッチをしながら気の利いたあいづちをすることだった。「うまくいった話も聞いたことありますけど」

「どこかの想像で書いたようなネットや雑誌のコラムで?」

「ちゃんと調べて書いてますよ」

「それは願望でしょ?」

 私は唇をとがらせた。反論したくなった。「でも、そういう合コンテクニックをみぬけない男性もいるんじゃないですか?」

「じゃあ聞くけど」ベニコさんはひとさし指を拳銃のようにつきつけた。「そんな女からみても、しょうもない小細工にひっかかる男なんかつかまえて楽しいの?」

「それは——」と、私は言葉につまった。急に不安になった。「じゃあサラダはとりわけちゃだめってことですか?」

「なんで右がだめならすぐ左にいくの」ベニコさんは息をついた。「おもてなしや心づかいからあらわれた行動はすばらしいものよ。どんどんサラダをとりわけなさい。反対に下心からでた行動なんかバレバレよって話」

「サラダはとりわけていいんですか?」私は首をひねった。「難しいですね」

 ベニコさんは直線の太い眉をよせた。黒のスーツからのぞく、むっちりした脚をくみかえた。あいかわらず、できの悪い部下にどう説明しようかと考えているキャリアウーマンみたいだった。

「いい? 本来的に、合コンに慣れるかとモテるかは別問題なのよ。そうね——はじめて参加したような合コンで緊張して、まったく気の利いたこともできなかったのに、あとで男から連絡がきて、あっさり彼氏をゲットできた子なんかいなかった?」

「いましたね」

「いまどうしてる?」

「その子ですか?」私はいった。「Twitterみる限り、まだ付き合ってるみたいですけど」

「じゃあ合コン慣れしてない子が、合コンで一番おいしい思いしたってことね」

「うん」私はちらっと天井をみた。「どういうことです?」

「そうでしょう?」ベニコさんは笑った。「合コンの目的は恋人を探すことよ。飲み会を楽しむことでも、何度も参加してトークに慣れることでもない。ていうか合コン慣れしてるってことは、ずっと、いい恋人をゲットできてないってことじゃない」

「いわれてみれば——そうかも」

「その合コン女子たちはね。恋愛活動に熱心なようで、その実、おちついて恋人もできたことのない哀れなパンケーキ女たちなのよ」

「ベニコさん」私の声は強まった。

「なに?」

 私はカップをかたかたふるわせて感動していた。「私以外の女性が、パンケーキ女っていわれてるとすごくうれしいです」

「おだまり」

「はい」私は手をひざに姿勢をただした。「あ、でも、チヒロは、いい男がいないから何回も合コンするんだっていってましたよ?」

「そんなの言い訳よ」ベニコさんはいった。「あまったるいパンケーキ女得意のね。自分がモテないのを男やまわりのせいにしてるだけ。たんにモテなくて、ことごとく合コンで男を逃して、いまに至るってだけの話でしょ? その子たちにとっての〝いい男〟ってのは〝いい男で、かつ、ちやほやしてくれる男〟って意味なのよ」

「そういわれるともう弁護できないです」

「する必要もないわ。自分の弱さを理解できない女はギルティよ」

 私はチヒロやカナの居酒屋でのふるまいを思いだした。たしかに自己紹介から解散後にライングループをつくらせるまで、終始、合コン慣れした雰囲気をだしていた。それでも、それは幸せになりたいから必死でがんばっている姿だった。スタバで、ボコボコにマウンティングされたあとだとはいえ、ちょっと悲しくなった。

「あの、わからないんですけど」

 ベニコさんは、赤い布ばりの椅子にかけながら首をかしげた。

「どうして——彼女たちは、そんなことになるんです? 必死に恋人をつくろうとアクションしてる。ちゃんと恋愛活動するのって悪いことじゃないですよね? なのに、なんで、何十回、合コンにいっても幸せになれないんですか?」

「やさしいのね」

「べつに、気になっただけです」

「不正直なパンケーキちゃん」ベニコさんは笑った。それから少しだけミルクをそそいで珈琲を飲んだ。「それはね——彼女たちが合コン最大の幻想にとらわれているからよ」

■今日の恋愛認知学メモ

・合コンの目的は恋人を探すこと。合コン慣れすることじゃない。

・サラダをとりわけるだとか安っぽいテクは男性もみぬいている。同じことをするにしても心からのものじゃないと意味がない。

・合コン最大の幻想って——なんのこと?

わたしは愛される実験をはじめた。第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」

https://p-dress.jp/articles/6558

【読むだけでモテる恋愛小説14話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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