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わたしは愛される実験をはじめた。第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」

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【読むだけでモテる恋愛小説23話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」

■第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」

 私は、合コンで、いちばんモテる役割をとりにいくことにした。

 それは狙った男性と二人でしゃべることでもない。その席で一番めだつことでもない。それよりずっと、あいつはいい女だな、と思われるポジションがある。

パスまわしの達人になることよ」祇園四条駅の地下におりる階段の前でベニコさんはいった。ワンカールしたボブ。ばっちり濃いアイメイク。ずんぐり体型ながら、ブラックスーツを着こなして、アメリカンドラマのキャリアウーマンみたいだった。

「パスまわし?」私はいった。「え、なに? ワールドカップの話ですか?」

 四条大橋のたもとでシートをひいて手製の民族楽器を売る男がくしゃみをした。

「パンケーキちゃん」

「ミホです」

「レッドカードよ」

「いろいろ教わって混乱してるんです。イエローカードで許してください」

「いい?」ベニコさんはひとさし指をたてた。「テーブルのトークをつなげられる立場のことよ。全員がわかる話題を提供する。もし参加できてない人がいれば、その人が主役になるようにする。とにかく空気を導く女になること——すると、どうなるかしら?」

「よくできた女だってなるかも」

「そのとおりよ」

「それで自分のポジションをあげるってことですか?」

「オフコース」ベニコさんはうなずいた。「その合コンで、もっとも価値の高い女になるのよ。それが恋愛認知学的にもモテる女のアクション。これが〝グレイテスト・パサーの法則〟よ」

「あれ?」私はまばたきした。「でも好きな男性にアピールできなくないですか?」

「だから、あんたはパンケーキ女なのよ」

「ひどい」

「そのカスタードのつまった頭で考えなさい」ベニコさんはいった。「狙ったターゲットにだけくっついたり自分だけが楽しもうなんて論外よ。空気が読めない女だと思われるわ」

「じゃあ、どうしろっていうんですか」私は唇をとがらせた。

「合コンの秘訣を教えてあげる」ベニコさんはにやりと笑った。「モテる女は、狙った男だけを攻めるなんてしない——その場の男をまとめて口説くの

 居酒屋の席で、ベニコさんに教わったことを思いだした。そうだ。そもそも合コンでは無理してめだてばモテるとはかぎらない。男性だって、冷静に女のことを品定めしているから。それよりは、しっかり〝価値の高い女〟のふるまいをすべきなのだ。

「そういえば」私は声をあげた。「男性のみなさんの意見がほしいんですけど」

 その言葉にテーブルの全員がこちらをむいた。いまのところ肉食女子ショウコは、ねらったイケメン、テラサキさんとの地元トークに夢中だった。その他のメンバーは入れない。だから、まずは全員参加できる話題を投下したかった。

「お、どしたのミホちゃん?」さすがの男幹事ヒロトさんがひろってくれる。

実は、最近、友だちがフラれたんですよ」私は、新聞のみだしみたいに、キャッチーな台詞をなげかけた。「名前はユカっていうんですけど。すっごいベタベタしたがるタイプなんですよ。それで原因は彼氏とのLINEなんです。ユカは毎日LINEしたいタイプなんですけど。彼氏は数日に一回でいいじゃないかって。やっぱり男性ってそんなものですかね? 付き合ったらLINEの頻度とかかわります?」

 もちろん私にユカなんて友だちはいない。失恋した友だちもいない。ていうか、最近、フラれたのは私だ。

 これは〝マイ・フレンド・ユカ・メソッド〟という恋愛認知学の技だ。友人の話という体で、〝男性の意見がほしいんですよ〟と話題を誘導する。意見をいうだけだから、その場のだれでも参加できる。カウンセラーのテクニックを恋愛に特化させたものだ。

 今回の〝LINEのしすぎでフラれたユカの話〟の狙いはふたつ。

 ひとつめは恋愛に話題をシフトさせることができる。男性を口説くには恋バナをしなければならないという恋愛認知学の〝ラブリートークメソッド〟になるわけだ。あくまでユカという友人の話で、ここにいる人間の話じゃないから気軽にできる。

 ふたつめに相手の情報を得られる。ユカのエピソードの感想をたずねると「好きなLINEの頻度」「携帯電話をさわる時間」「恋愛観」「異性との距離感」「過去の恋愛」など情報を得られる。これが攻めるときの参考になる——めちゃくちゃ貴重。

「俺はめっちゃLINEするかなあ」男幹事のヒロトさんはノリノリだった。「前の彼女のときはお互いにそういうタイプだったからね。ラリーの頻度がやばいみたいな。一回、友だちに履歴みせたらキモいっていわれたことあるし」

 さらに元カノの話で盛りあがった。わかれた理由は飲み会をやめなかったことらしい。「飲み会は俺のライフワークだから!」がヒロトさんの捨て台詞だったとか。なんだそれ。しかしやっぱり、いくつになっても恋バナはだれでも参加できて盛りあがる。

 なんだかんだ肉食女子ショウコも恋バナは好きらしい。「どう思う?」と、意見をもとめるとよろこんでこたえた。パスまわしを狙う身としては大歓迎。むしろ適切なタイミングで、彼女や男幹事ヒロトさんに——しゃべりたがる人物に——質問を投げかけるのが、盛りあげるコツみたいだった。サポートに徹するくらいなら口下手な私でもなんとかなりそうだった。

「クリタさんはどんな感じです?」私は次から次にパスをまわすように気をつけた。一人だけが話の中心にならないようにする。「やっぱりLINEしてたい感じですか?」

「あ、はい、というか基本的にあわせると思います」女慣れしてない高校教師のクリタさんはビールをおいた。話をふってもらえて嬉しそうだった。

 それから授業をしながらもアップルウォッチを使って案外LINEをみているという話で場に笑いが生まれた。だれだって自分の話はしたい。その機会をつくる〝パスまわし〟はステキな役割なのかも。

「クリタさんって、どういうひとがタイプなんです?」私はいった。ここまでくると〝ユカ〟の話から好きなだけ脱線して恋バナをしていい感じになる。次の、本命、テラサキさんにおなじ質問をしやすくするためでもあった。

「いや、もう僕は選べる立場じゃないですから」クリタさんは頭をさげる。

「そんなこといわないでくださいよ」私はさらに話をひきだそうとした。「好みをいうだけなら自由じゃないですか——ねえ、ヒカリちゃん?」

「なんで、そこで私にふるんですか」ヒカリちゃんは笑った。

「特に意味ないけど」私も笑った。「ほら熱帯魚の話で盛りあがってたし」

「ミホちゃん、それ本当に意味わかんないよ」男幹事ヒロトさんも笑った。「ねえ、クリタ君も教えてよ。ミホちゃんは顔が広いから、いっといたほうが得だよ?」

 そんなことないですよ、と、私はいいかけた。でも、やめた。むしろ、ふふんという顔をしてみた。顔が広いと思われているなら、そのイメージを保つべきと思ったから。恋愛認知学的に、それがモテる女のふるまいになる。

「あ、じゃあ」なぜかクリタさんは頭をさげた。「しっかりしてる人がタイプなんです」

 そのタイプの話でも、ひと盛りあがりあった。理想を芸能人にたとえたりして。さっきまで会話に参加できていなかったクリタさんがいまはテーブルの中心で満足そうにしている。正直、パス職人として、かなりいい仕事をしたつもりだった。

 さっきから場の空気も、なんとなく私を認めてくれている感じがあった。男性が、女側陣に意見をもとめるときはまず私をみるようになった——こうやって全員の信頼を得ていくのかもしれない。

 なるほど——ベニコさんの〝その場の男をまとめて口説く〟というセリフの意味がちょっとわかった気がした。そもそも恋愛認知学は、合コンで、ひとりの男性を口説くことをめざしていないっぽい。むしろ場の全員が「あいついい女だな」と感じるような状態をつくる。そして、こっちは、そのなかから自由に選ぶだけ、という感じだ。

「それじゃあ——」私は口をひらいた。最後、本命のテラサキさんに話をふるタイミングだった。心臓がバクバクだった。「テラサキさんはどんな人がタイプなんですか?」

「俺すか?」あいかわらずイケメン男子のテラサキさんはいった。目がするどいから、ちょっと不機嫌そうな顔にみえる。口数が少なくても、その雰囲気で、女がほれてしまうのだろうと思った。「まあ、好きになった人がタイプですよ」

「そうなんだあ」肉食女子のショウコは満足そうだった。

 しかし私は満足しなかった。ベニコさんから〝好きになった人がタイプ〟という答えは、その場をやりすごすための方便だときいていたから——特にモテる男性に多い。自分の胸に質問をすればいい。本当の本当に、好きになった人がタイプなんてありえない。なんだかんだ好みのタイプはあるはずだ。

「いやいや」私はいった。なんとしてでも情報を得てやるつもりだった。「いままで、あ、こんな子のことばかり気になってきたな、みたいな傾向はあるんじゃないですか?」

「傾向って?」

「そうです。そういうのってあるじゃないですか。なんとなくの感じで」

「なんだろうな」テラサキさんは考える顔をした。その眉をよせる表情までイケメンだった。「あ、身長の高い子かもな」

「し、身長の高い子ですか?」ブラのなかに嫌な汗がしみた。

「そうすね。なんとなくだけど。いままで付き合った子って165以上の感じが多いんですよ」

「あ、すごい。私、それ、ちょうどです」その瞬間、ショウコが声をあげた。

 私はおどろいて、となりの席をみた。たしかに、この子はちょっと身長があった——ショウコはにやりと笑った。劇団四季のオペラ座の怪人みたいな、まがまがしい表情だった。ほらみろ。ザコ女はおとなしくひきさがりなさい。その顔は、そう高らかに勝利宣言していた。

 また話題をぶんどられるようにテラサキさんとショウコの会話がはじまった。私はショックすぎて参加できなかった。会話のパスまわしも放棄した。居酒屋の個室のすみで、沈没寸前の船みたいに頭のなかがぐらぐらゆれた。

 え、え、このまま私はゲームセット? 終わりなの? 身長がないってだけで——この肉食女子に負けちゃうの? 甘い夢は波にさらわれたの? いまから身長って伸ばせなかったっけ? 心のなかでベニコさんにたすけをもとめた。ベニコさん。たすけて。好きな人のタイプが自分じゃなかったときってどうすればいいんですか?

■今日の恋愛認知学メモ

・【グレイテスト・パサーの法則】合コンでモテるのは〝パスまわしの達人〟という法則。

・【マイ・フレンド・ユカ・メソッド】友人ユカの話という体で〝男性の意見をくださいよ〟と会話をはじめる。メリットは恋バナをしやすいこと。相手の情報を得られること。

・【LINEのしすぎでフラれたユカの話】マイ・フレンド・ユカ・メソッドのなかでも使いやすい話題。LINEや恋愛についての価値観をさぐりやすい。

・「好きになった人がタイプ」は方便かもしれない。もう一度つっこんでみること。情報を得るために質問してるんだから!

・え、この合コン——もう負けちゃったの?

わたしは愛される実験をはじめた。第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」

https://p-dress.jp/articles/7327

【読むだけでモテる恋愛小説24話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」
第23話「友人がフラれた話をして恋愛観をさぐりだせ」
第24話「相手の好みのタイプになれなくても逆転するには?」
第25話「モテる女はさらりと男から共感をひきだせる」
第26話「場の空気にすら愛される女はここがちがう」
第27話「愛されたいなら二次会にいってはいけない」
第28話「合コンの夜にLINEを送るとモテない?」
第29話「私たちはモテそうな男ばかり好きになってしまう」
第30話「まだ男は浮気しないと信じてるの?」
第31話「モテる男に挑戦する? モテない男を捕獲する?」
第32話「恋愛の失敗は、自分がなにをしているか理解してないときにやってくる」
第33話「優秀で私だけを愛してくれるオスはどこにいる?」
第34話「私たちは想いを言葉にすることで愛される女になる」
第35話「モテない男を捕まえるためにメイクより大切なこと」
第36話「なぜあの女はハイスペック男子に選ばれたのか?」
第37話「男との会話を笑顔で逃げる女がモテない理由」
第38話「男の機嫌をとるためだけに笑ってない?」
第39話「恋愛対象外の男子に失礼にふるまってない?」
第40話「まだフラれてることに気づいてないの?」
第41話「モテる女はLINE1通目から男心を罠にかける」
第42話「暴走しがちな恋愛感情をおさえるマインドフルネス?」
第43話「いい男はよってこない、いいよってくる男はつまんない?」
第44話「LINEで絵文字を使うほどモテなくなる?」
第45話「LINEは疑問符をつければ返事がくると思ってない?」
第46話「男に未読スルーされないLINEを作ろう上級編」
第47話「男の誘いLINEに即答でのっかる女はモテない」

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浅田 悠介

マジシャン。ツイッターで恋愛テク語りまくってます。

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