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わたしは愛される実験をはじめた。第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」

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【読むだけでモテる恋愛小説20話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

わたしは愛される実験をはじめた。第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」

【エピソード】

第1話「黙って座りなさい、モテる女にしてあげるから」
第2話「モテたくない? だからあんたはパンケーキ女なのよ」
第3話「みつめるだけで男を口説き落とす方法」
第4話「この不公平な世界で女がモテるには?」
第5話「魔法のように男を釣りあげるLINEテクニック」
第6話「なぜモテる女は既読スルーを使いこなすのか?」
第7話「男に愛想をつかされないデートプランの作り方」
第8話「デートは5分遅刻する女が愛される?」
第9話「モテたいなら男と恋バナをすること」
第10話「ボディタッチを重ねても男は口説けない」
第11話「愛される女はさよならを知っている」
第12話「パンケーキ女、ひさしぶりの合コンで撃沈」
第13話「合コンでサラダをとりわける女子がモテない理由」
第14話「合コンに100回いっても愛されない女とは」
第15話「合コンのあとに男心を釣りあげるLINE術」
第16話「合コンにイケメンを呼びよせるLINE誘導術」
第17話「合コンには彼女持ちがまぎれているので要注意」
第18話「モテる女はグラスを近づけて男の本能をゆさぶる」
第19話「モテる女は自己紹介からデザインする」
第20話「顔をあわせて5秒で脈アリかをさぐる方法」
第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」
第22話「ひとみしりを克服する方法」

 合コンがはじまる直前の胸さわぎ。吐けといわれたら吐けそうな感じ。

 私たち女子グループは京都駅ちかくの居酒屋にむかった。入店して部屋番号をきいて、靴箱に靴をあずけて、ぶあつい将棋の駒みたいな木の鍵札をとりながらも心臓が鳴った。

「もう男子きてますかね?」年下のヒカリちゃんはすれちがう店員に頭をさげた。

「そうみたい」私は鍵札を鞄にいれた。「さっき全員集合したってLINEあったから」

「ねえ」スマホのカメラモードを手鏡のかわりにして、入念に髪をととのえながら肉食女子のショウコはいった。「ここじゃない? ちょっと先に入ってよ」

 私たちは個室の前でとまった。この奥に、どんな男性がいるんだろう?

 居酒屋のふすまをあける瞬間はどきどきだった。合コン自体緊張するし、幹事として「いい男がくるから」といったからにはプレッシャーもあった。参加するだけのときは考えもしなかったのに、幹事には、こんな責任感もついてまわるのか。

 深く息をすった。ふすまをあけた。

 男性陣3人がそろって一列にならんでいた。土曜日だから一人をのぞいて私服だった。その清潔感ある顔ぶれをみて「イエス」と心のなかでさけんだ。

「ミホちゃんひさしぶり」いちばん奥の席で男幹事のヒロトさんが顔をあげた。「いま話してたんだけどさ、男女交互にした方がいいかな?」

「いえ、とりあえずこのまま座っちゃいましょう」私は奥につめて、その前にすわった。

 よく〝合コンは男女交互にすわるべし〟といわれる。でも恋愛認知学ではボディタッチやらの接触技を使わない。だからこだわる必要はない——むしろ、さっぱりした感じを与えるのと、はじめるまでのスムーズさを優先した。

 さっと肉食女子のショウコが横にやってきた。けれど、それは私と一時も離れたくないからじゃなく、いちばん目立つ中央に座りたいからみたいだった。さっそく黒髪をいじって清楚ぶったりする。ころころ比叡山の天気みたいに態度をかえる女め。

 ドリンクすら注文してないこの状況でも、合コンははじまっているというわけだ。負けじと、私も、恋愛認知学の〝ルッキングサーチ〟を開始した。

 ぱっと男性全員を〝ルッキング〟して——むこうが顔をそらすまで目をあわせて——だれが脈アリかナシか探るメソッドだ。男性側だって、とっくに顔ぶれをみて、アリかナシか決めているもの。だから、まず、だれの心に〝刺さったか〟を確認する。

 男女平行にならんでいるから男性陣をまとめて観察しやすい。数分のうちに目の前の席から、ぴかぴかサーチライトで照らしていくみたいに視線をスライドしていった。

 一人目は、幹事のヒロトさん。

 そもそもの幹事仲間だ。手はじめに「なに飲む? 男子は全員ビールらしいよ」と、ドリンクメニューを受けとりながらルッキングサーチしてみる。するとヒロトさんは目をあわせたまま「こういうところのチューハイって薄いよね」と会話をつづけた。目をあわせたままなのは脈ナシのサイン。心理的に対等にあるということ——ていうか私も興味ないんですけど。

 二人目は、いかにも理系という感じの眼鏡男子クリタさん。

 ひとりだけスーツ姿。顔は悪くないのに両手をテーブルの下にかくして、場なれてなさそうだった。いい人なんだろうな。視線をあわせると——ぱっと顔をそらした。

 すぐに視線をそらすのは脈アリ。こちらの方が心理的にポジションがあるということ。でも、この場合脈アリというより、そもそも女慣れしてないだけの可能性も。そこまで考えて、おいおいなに偉そうなこといってるんだパンケーキ女よ、と、自分にツッコんだ。

 三人目は、細身で、がっしりした印象のあるテラサキさん。

 眉も厳しくて、ちょっと不機嫌そうな顔つきのイケメン。でも、ちゃんと場の空気もうかがってる感じだった。正直、ルッキングサーチどうこうの前に一番気になっていた。鼻の高い顔にみほれてしまう。もしかすると——ていうかこの歳になると自覚するけど——私はSっぽい男子が好きっぽい。

 ヒロトさんのチューハイトークの最中に顔をみた。不自然じゃない感じで。イケメンと目をあわせるだけで呼吸困難になりそうだけど。これも愛される女になるためだ。カッと彼の目の奥をにらんだ。気配を察してか、すぐに彼は視線をあわせた。

 勝負だ。さあ、存分に、その涼しげな瞳をそらすがいい。

 気をぬくとイケメン光線に熱せられて、表情筋がトマトみたいに赤くなるかチーズみたいにとろけそうだった——その直後、私の顔のなかで、ぼっと炎がもえあがった。一気に体温上昇。こらえきれず速攻で顔をそらしてしまった。急に恥ずかしくなって前髪をさわった。

 あっけなく撃沈。タイプの男性と目を合わせるのがこんなに難しいとは。これじゃ私が「脈アリです」とサインを送ってるようなものじゃないか。その一部始終を、テラサキさんに、にやりと笑われた気がして、キモいけど、それもぞくぞくした。

「このルッキングサーチってやばくないですか?」このメソッドを習ったとき、私は、とにかく興奮した。「ぱっと脈アリかどうか、わかるなんて超便利じゃないですか。一分くらいで密かにできるし。バレないし。あと脈ナシは放置で、脈アリを攻めたらいいだけですよね?」

「愚かな女という名のパンケーキ」

「ミホですけど」私はいった。「なんですか? ていうかストレートすぎません?」

「パンケーキ女」フランソア喫茶室の椅子にかけてベニコさんは珈琲を飲んだ。ワンカールしたボブ。欧米風のばっちり濃いアイメイク。ぱっちゃり体型ながら、アメリカンドラマのキャリアウーマンみたいな雰囲気だった。「恋愛認知学は魔法じゃないの」

「これは魔法レベルですって」

「いい?」ベニコさんはひとさし指をたてた。「ルッキングサーチは優秀よ。けれど正確には〝脈アリか脈ナシか〟というより〝心理的に優位かそうでないか〟を調べるものなの。基本的には、これで脈のアリナシを判定してもいいわ。でも、目をそらしたから〝こいつは脈アリだ〟なんて即決はだめ。足下が気になったのかもしれない。あなたの財布から一万円盗んだから負い目があったのかもしれない。あなたがキモいから目をあわせたくなかった可能性もある」

「例えがひどくないですか?」

 ベニコさんは抗議を無視した。カップを手に、むっちりした足を組みかえた。「あくまで基本。たくさん例外はある。それを解読するのも女の仕事——おわかりパンケーキちゃん?」

 私は角砂糖をつまんで珈琲にいれた。「たぶんですけど」

「それに、これは、あくまで第一印象を調べているにすぎない。この結果が脈ナシでも落ちこむことはないわ。はじめのフィーリングがいまいちでも、そこから発展する恋なんていくらでもあるから。もったいないと思わない?」

「たしかに」私はうなずいた。合コンにすごくタイプな男性がいて、これで〝脈ナシ判定〟だとしても、あきらめられると思えない。「好きって気持ちはとまらないかも」

「とはいえ、パーフェクトに脈ナシな場合はあきらめなさいね」ベニコさんは笑いながら肩をすくめた。まるでアメリカンドラマのワンシーンだった。

「そこは攻めちゃダメなんですか?」

「女だって、どうしても無理な男はいるでしょ?」ベニコさんは首をふった。「それが真実なら受け入れなさい。だめなものはだめ。思春期なら、それも楽しいでしょうけど——もう時間を無駄にしてはいけない。合コンは、つねに有利なアクションを選択するゲームよ。大事なのはルッキングサーチで得た情報をもとに、どう作戦をたてるかなの

 居酒屋の席で、私は、腕時計をみておどろいた。開始五分にもならなかった。

 それなのに頭はさっきから京阪の駅にあるジューサーバーのミックスジュースみたいに高速回転しっぱなしだった。ここまで合コンで考えたことはなかった。いままでの自分だったら「はやくお酒こないかなあ」「緊張するなあ」「だれか話しかけてくれないかなあ——上手く話せないけど」「気まずいなあ」なんて、パンケーキ女の受け身精神まるだしでいただろう。

 恋愛認知学を学んだことで——ベニコさんと出会ったことで——いままでの景色がちがってみえるようになった。そして、私は、この合コンでもなにかを得られるはずだ。

 ルッキングサーチの結果が微妙なのはしかたない。私はルックス勝負できるタイプじゃないから。そこは認めようじゃない。かわりに作戦を考えよう。現在、それぞれ男性は私のことをどう感じているのか。どの男性と仲良くなりたいか。どの男性となら仲良くなれそうか。この合コンで、どうふるまうべきか。

 女慣れしてなさそうな眼鏡男子のクリタさんが攻めやすいかもしれない。悪い人じゃないだろう。でも——心のなかで答えは決まっていた。入口側の席にいるSっぽい顔のテラサキさん。こうなると女はだめだ。心がいうことをきかないのはわかりきっていた。

■今日の恋愛認知学メモ

・かならずしも合コンで男女交互にすわる必要はない。

・【ルッキングサーチ】ルッキングの応用技。ざっと男性全員と目をあわせて「だれが脈アリで脈ナシか」を判別するもの。すぐに目をそらしたら脈アリ。そらさなければ脈ナシ。

・もちろん例外もある。第一印象をみているだけなので気にしすぎはだめ。

・どうしよう。このドキドキのまま進めばいいの?

わたしは愛される実験をはじめた。第21話「なぜ空気を読める女はモテないのか?」

https://p-dress.jp/articles/7184

【読むだけでモテる恋愛小説21話】30代で彼氏にふられ、合コンの男にLINEは無視されて……そんな主人公が“愛される女”をめざす奮闘記。「あんたはモテないのを出会いがないと言い訳してるだけよ」と、ベニコさんが、あまえた“パンケーキ女”に渇を入れまくります。恋愛認知学という禁断のモテテクを学べます。

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浅田 悠介

マジシャン。日本催眠心理協会認定 心理療法士。いつも「ウインナー珈琲を飲みたいな」とか考えながらコミュニケーションについて書いてます。おかげさまで「最近なにしてるの?」「愛について考えてるよ」が鉄板の返しです。

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