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婚活は人生最高のリセットスイッチ「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~」― 第23話

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「婚内婚活」という馴染みのない言葉。今まで聞いたこともないような婚活の形に困惑する伊藤有紀……。胸の内にどこかモヤモヤしたものを抱えた有紀を気遣い、友人の瑛子が連れて行ってくれた場所は、銀座の高級サロンだった。婚活における瑛子の次なる戦略とは――? 連載「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~ 」第23話。

婚活は人生最高のリセットスイッチ「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~」― 第23話

第23話の登場人物
●伊藤有紀(いとう・ゆき)
49歳・フリーライター・50歳を目前にして婚活を開始。20年ぶりに再会したOL時代の先輩・曽我との未来を一時は思い描くも、偶然、曽我の信じ難い行状を目撃してしまう

●曽我真之(そが・まさゆき)
55歳・妻と不仲。20年ぶりに有紀を呼び出すもろくにフォローもせず放置。他の女性と婚活している現場で有紀・瑛子と遭遇してしまう

●矢野瑛子(やの・えいこ)
48歳・結婚相談所付属の婚活マナー教室講師・有紀の婚活を全面的にバックアップしてきた。有紀と食事に向かっていたところ期せずして曽我の行状を目撃


前回までのあらすじ
わたしは伊藤有紀、仕事はフリーライター。10年前に夫を交通事故で亡くしてから、ひとりで息子を育ててきました。50歳も目前になって、急遽婚活を開始することに。

親友・瑛子のアドバイスで、マッチングサイトPairs(ペアーズ)に登録。ふたりの男性と実際に会ってみたけれどうまくいかず、自力での再婚を断念。瑛子が勤める婚活会話教室の母体である結婚相談所へ登録に赴いたところ、絶交していた瑛子と再会。和解して食事へ行くことに。

途中、瑛子が見つけた婚活カップルを尾行。婚活の実態をこっそり学ばせてもらおうとするも、
その婚活カップルの男性は、既婚者である知人・曽我だった! 20年ぶりに会ったきり自分にろくなフォローもしないまま、今度は結婚詐欺を!? と責めると、曽我は苦渋の表情で「自分は婚内婚活をしているのだ」と釈明するのだった。婚内婚活とは、一体──。

■熟年夫婦の真実がにじんだような「婚内婚活」に困惑

仮面夫婦のまま、あと何十年も生きていくなんて耐えられない。
冷ややかな夫婦関係を清算し、離婚してもう一度人生をやり直すために、結婚生活を維持したままで次のパートナーを探すのが「婚内婚活」。


これから一緒に生きていく相手を見つけることができたら、長年連れ添った妻と別れて、離婚に踏み切る勇気が持てるから──。


しぼり出すように曽我さんが口にした理屈。いや、理屈にもならない身勝手な言い草には、けれどどうにもやるせなく、熟年夫婦の真実がにじんでいる気がして。わたしは言下に否定することができなかった。

店を出て、曽我さんと別れたあと、すっかり夜のとばりが舞い降りた銀座の街を、わたしはただ黙って瑛子と肩を並べ歩いた。

気重な沈黙を破り、瑛子が口を開いた。


「『婚内婚活』とか知ったこっちゃないって。ね、仕切り直してパーッと飲みに行こうよ……って、有紀、そんな気分じゃないか」
わたしの顔をのぞきこんだ瑛子が、気遣うようにちいさく笑う。


「じゃあほら、ヘッドスパでも行く? 頭ぐりぐり揉んでもらうとさっぱりしてさ、憂鬱なんてふっ飛んじゃうから。この近くにうまいサロンあるのよ」そう言いながらスマホを取り出し、瑛子は早速予約を入れようとする。

■お金をかけて自分を磨くほど、良い相手との縁につながる

「いいね。でも銀座でヘッドスパとか、きっとかなりの額……よね? わたし、婚活始めてからいろいろ経費かかっちゃってて。今日みたいな普通の日にそんな贅沢は……」

ためらうわたしを制して、瑛子が言った。

「いや、その考え方は違うな。いい? 婚活はね、経費をかけて自分をレベルアップした分だけ、ハイレベルな相手とご縁がつながるものなの。ヘッドスパする、きれいに髪をスタイリングしてもらう。そうしてプロの手でレベルを上げてもらわなきゃ」

「でも、レベル上がるっていっても一瞬でしょ? そんなの自分じゃキープできないし、やっぱりムダじゃない?」

瑛子先生が「これだから」とばかりに、首を横に振って笑った。

「だから、そこからは努力よ。プロが作ってくれた最高にきれいな有紀を自分で再現できるように、スタイリングの仕方とかちゃんと習って帰って、家で練習するわけ。最初は無理でも、徐々にできるようになってくものなんだから」

「わたしでもできるようになるかな……」

および腰のわたしに瑛子はこう言って、からっと笑ってくれた。


「なるって。プロみたいにはできなくても、それなりにヘアスタイル作れるようになると、見た目、全然変わるよ~。そうだ、ついでにちょっとメイクも習って帰りなよ。メイクが上達すると、オンナとしてのステージが一気に上がるわけ。言っちゃあなんだけど、曽我さんなんて目じゃなくなるかもよ。どうせならセレブ狙っちゃえ、セレブ。ははは」


ほんの数カ月前まで息子のお古のジャージを着ていた冴えないわたしが、50歳を目前にして一転セレブ妻に!? アラフィフの女にそんな奇跡をくれるのだとしたら、婚活って人生最高のリセットスイッチなんじゃない? 努力してみる価値、大ありかもしれない。

さすが銀座。瑛子おすすめのサロンは、いくつ星かのホテル並に豪華な内装の店だった。
個室で受けるヘッドスパはうっとりするほど心地よくて、曽我さんの一件でふりかかったストレスを、きれいさっぱり洗い流してくれた。


個室を出て、半身が映る大きな鏡と回転椅子の並ぶ、ヘアサロンらしい広い部屋へと移動した。瑛子の隣の席でヘアを美しく整えてもらい、わたしだけメイクもリタッチしてもらう。

「伊藤様の目の形でしたら、アイラインはまつげの間を埋める感じでごく自然に。チーク位置はご自分でなさっていたのより指1本分高い位置にのせてみてください。こめかみに向かって、こう、ふわっとコーラルを。これで5歳は若返りますよ。いかがでしょう?」

ヘアメイクの男性にうながされて手鏡をのぞきこむと、そこには見たこともないわたしが映っていた。

あえてナチュラルに崩したゆるふわヘアに、はにかむ少女を思わせるイノセントなメイク。こういう感じ、そういえば流行ってるかも。そうだ、あのひと。大人かわいい女子の代名詞、石田ゆり子もどき、とでも申しましょうか……。


「ほら、どうよ。自分でしてたのと全然違うでしょ? 写メ撮っといて、家で練習ね」わたしの婚活アドバイザーである瑛子が、スマホでてきぱきとメイクの写メを撮ってくれた。

「いやぁ、イケてるよ有紀。これなら男性が放っておかないんじゃない? さ、あらためて夜の街に出動しよう」

「うん!」

■出会いは突然……とは言ったものの、あまりに急展開

金曜の夜の銀座、4丁目の交差点あたりは、週末を満喫しようと集ったおとなの男女であふれかえり、人いきれがしている。交差点からほど近いバルのカウンターに席を確保して、瑛子とジン・トニックのグラスをそっと合わせた。


「えっと、有紀にいい男がみつかりますように。乾杯!」

「ありがと、瑛子。でもそう簡単にはね~」と小首をかしげるわたしの背後にちらりと視線をやった瑛子が、にやっと笑って小声でささやいた。

「いやいや、簡単にいくこともあるんだって。じゃ、がんばって!」

「え? がんばるってなにを?」

瑛子は慣れた様子で1000円札を2枚カウンターに置き、スツールを降りて店の出口へと向かった。
と、入れ替わるように背中から、低く響く男性の声が聞こえる。

「隣、いいですか?」

「あ、え? あ、はい……」

戸惑いを隠せないわたし。けれどさっきまで瑛子がいた席に、いまはスーツに身を包んだ男性が腰をおろし、身体ごとわたしのほうを向いてほほ笑んでいる。


瑛子は――と目で探すと、店の出口あたりで振り返り、片手を上げ軽く振って、「じゃね!」と笑って去っていった。

一体いまなにが起こってるわけ? 石田ゆり子もどきのヘアメイクが、早速男性を引き寄せたってこと?

なに? この状況……。



(第24話につづく)




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第1話(https://p-dress.jp/articles/2082
第2話(https://p-dress.jp/articles/2083
第3話(https://p-dress.jp/articles/2087
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第5話(https://p-dress.jp/articles/2162
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第21話(https://p-dress.jp/articles/2931
第22話(https://p-dress.jp/articles/3131


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伊藤 有紀

フリーライター。 39歳のとき、夫が急逝して、わたしは突然ミボージンになりました。以来、ひとり息子をなんとか一人前に育てあげなくてはと、仕事と子育てに多忙な日々を過ごしてきたのです。あっという間に月日は流れ、息子がようやく...

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