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「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~」 ― 第20話

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伊藤有紀、フリーライター。50歳を目前に控え、慌てて婚活を始めてみるが……。「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~」 ― 第20話をお届けします。

「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~」 ― 第20話

●第20話の登場人物
伊藤有紀(いとうゆき/49歳・フリーライター・50歳を目前にして婚活を開始)
伊藤陽向(いとうひなた/19歳・有紀のひとり息子。受験を終え大学入学を控えた春休みを、友人たちと満喫中)
曽我真之(そがまさゆき/55歳・有紀の昔の彼。20年ぶりに再会を果たした曽我はどうやら妻と不仲。もしかしてやり直せるのではと有紀の期待は膨らむも、連絡は気まぐれで曽我にその気はない!?)
矢野瑛子(やのえいこ/48歳・結婚相談所付属の婚活マナー教室講師・有紀の婚活を全面的にバックアップしてきたが、曽我を批判したことで絶好状態に。結婚相談所で偶然再会して……)
リア充KY(りあじゅうケーワイ/53歳・町田で飲食店を経営するセレブ。有紀に会うなり「ただの主婦」「不倫願望?」と目を背け侮辱。有紀を深く傷つけた)
バカリズム似NH(バカリズムにエヌエイチ/48歳・知財法律関係の会社員。高年収で心やさしきセレブ。LINEのやりとりで有紀と恋が始まったはずだったが、いざ会ってみるとプロフ画像との差が大きく有紀はショックを受ける)



●ここまでのあらすじ 
わたしは伊藤有紀、仕事はフリーライター。10年前に夫を交通事故で亡くしてから、ひとりで息子を育ててきました。50歳も目前になって、急遽婚活を開始することに。親友・瑛子のアドバイスで、マッチングサイトPairs(ペアーズ)に登録。ここまでふたりの男性と実際に会ってみたが、ひとりめのKY氏からは「ただの主婦」とバカにされて拒まれ、ふたりめのNH氏はLINE越しのやりとりでやさしさに惹かれるも、いざ会ってみると容姿を受け入れることができず。自力での再婚は無理と、瑛子が勤める婚活会話教室の母体である結婚相談所へ登録に。そこで絶交していた瑛子と久しぶりに再会して──。

■親友の瞳にはいたわりの色が。あたたかなもので胸が満たされて

この街を訪れるたび思う。「品」とは一体何なのだろう。
銀座四丁目にあるドトールのテラス席で瑛子を待つ間、わたしは道ゆく人々を眺めながら考えていた。



「品」。それは絶対的な価値基準として、人の格を分けるもの。社会的地位や経済力のある者に宿るとは限らない一方で、不遇をかこつ暮らしに身をやつしていながらも、品格をたたえている人はいて。
心の気高さが、見えざる気配となって人をつつんだもの。それが「品」の正体なのかもしれない。
「お待たせ!」と聞き覚えのある声が近づいてきて、わたしは物思いから我にかえった。



「瑛子。あの、ごめん、さっき花瓶……」瑛子が勤める婚活会話教室の母体である結婚相談所に登録にいったわたしは、慣れないパンプスのせいで派手に転び、飾ってある花瓶を落として割り、騒ぎを起こしてしまったのだった。



「いいって。大丈夫」瑛子はからりと笑う。「それにしても有紀のドジは本物だよね。でもってあれだよ、いっそちょっと華があるかも」
「華? なにそれ」つられてわたしも笑うことができた。「それよりちゃんと謝らなきゃ。婚活のことさ、瑛子、いつも心配して、応援してくれて。なのにわたし、曽我さんのことで、あのとき……」
まだ離婚もしていないのにわたしに気をもたせる曽我はクズだと、電話で瑛子にそしられて、つい頭に血がのぼったわたしは、「瑛子には関係ない」と声を荒げて一方的に電話を切り、それきり連絡をしなかったのだ。



「もう済んだことはどうでもいいって。それより曽我……さんとその後どうなのよ。うまくいってたら、うちに来るはずない……よね?」
こちらを覗き込む瑛子の瞳にはいたわりの色が見て取れて、わたしは胸がひたひたと、あたたかなもので満たされてゆくのを感じた。

「うん。あれから、ね──」
曽我さんからの連絡は気まぐれで、わたしを本気で相手にしているようには思えないこと。その後Pairsでつながったふたりの男性、リア充KYさん、バカリズム似NHさんと会ったけれど、どちらともうまくいかなかったこと。瑛子と会わずにいた間に起こったことを、わたしはかいつまんで話した。



黙ったまま、時折おもむろに頷きながら聞いていた瑛子は、話が終わると「なるほど」とひとこと口にするなり、小気味よいほど歯切れよく、すべてをさばいてみせてくれたのだった。



「まあまず曽我さんに関しては想定範囲内よね。そのまましばらく泳がせておけば? 中年過ぎた夫婦なんてどこだってそんなものでしょ。離婚までいく話かどうかわからないから、期待しちゃだめよ。誘われたらたまに食事くらい行ってもいいんじゃない? 食事だけなら不倫ってわけじゃないしね」
うん、わかったと頷く。今となってはわたしにも異論はない。



「で、そのKYって人の件はさ。有紀、ぎりセーフよ。わかってる? あんたがもし、美人~ってタイプだったら、遊ばれてポイの典型的パターンでしょ。まったく気をつけなさいよね。これだからほっとけないのよ」そうだったのか。面目ないことです。



「それから、バカリ似のNHさんだけど。それがアラフィフの婚活で一番多いパターンだな。人間性は好きになれても、外見を受け入れられなくてってやつ」
「え。こういうの、よくあることなの?」狭量な自分を責め続けていたわたしは、瑛子の言葉に驚いた。
「そうよ。一般に、歳を取るって女に不利なように思われがちだけど、実は男のほうがよっぽど不利かもしれないよ?」
「え、どういうこと」意外な展開に、わたしは思わず身を乗り出す。瑛子大先生との一問一答が続いた。

■「婚活における見た目問題は、女性が有利!」瑛子と有紀の一問一答

Q(婚活劣等生・有紀)「婚活の場における見た目問題では、女性だけが一方的に苦労させられているのではありませんか? 男性はとにかくひたすら、1歳でも若いほうがいい、ちょっとでも美人なほうがいいとかばっかりほざ……いえ、おっしゃるのですから」


A(瑛子大先生)「いえいえ、そんなこたあございません。婚活で男性と会うとなると、女性はあらゆる手段を駆使して見た目を一気に磨きあげるでしょ? ダイエットするエステ行くまつエク着けるネイル行く、おしゃれパトロールでデパートからセレクトショップから回りまくって自分に似合う一着を探し出して着用。おまけに当日はヘアメイクをプロにまかせて自分史上最高美人に大~変身。完全武装して現場に挑むわけです。これが最強でなくて何が最強?」


Q「なるほど。寝て起きて顔洗ってとりあえずクリーニングの袋を破ってシャツ着たどー、ジャケットも羽織ったどーくらいのことでは、男性は到底女性には太刀打ちできないと?」


A「ええ、そうですとも。見た目のセルフプロデュース能力が高くて、発動できる手数を山ほど持っている女性のほうが、婚活の現場で相手をノックアウトする『惚れさせ力』は、男性などよりよ~っぽど高いわけですよ」

Q「先生、なるほどです! がぜん勇気がわいてきました。変身しまくって美女レベルを爆上げして、もう鏡を見ても自分だってわからないくらいの美女になりきって、婚活の現場へ急行すればよいのですね?」


A「んーとなんかちょっと違う気もするけど、まあ大体そんなとこですね!」


Q「そっかぁ。女性って、見た目を作り込んで武器にできるぶん、男性よりずいぶん有利なんですね。となると女性は、わたしの方が得してるんだなってことを理解したうえで、ほぼ素手で勝負の場に現れる男性の見た目上の美点を、むしろ自分から積極的に探して、見つけ出そうとするべきなんだな。わたしもバカリズム似NHさんに会ったとき、もっともっと一生懸命、好きになれる部分を探してみるべきだったんですよね。目、鼻、口、どこか好きになれるところはないかって……」



A「それはちが~う! いいですか? 相手の見た目を好きになれるかどうかは、長~い結婚生活において非常に重要なポイントなのです。必死に探し出してなんとかパーツひとつは好きになれたなんて、そんなレベルでは全然だめ。顔全体を自発的に好きになれるようでないと。だってね、同じように脱いだ服をぽいぽいその辺に投げておかれても、岡田准一くんなら許せるけど、古田新太だったらこの野郎って思うでしょ?」


Q「思う、思います! そういうものなのですね?」



A「ええ。だから『顔は好きになれないけど、人間性が好きだし』とか、まして『顔はかなりいやだけど高年収だから』なんて理由で結婚相手を選んではいけないのです。遠からず関係が破綻して、自分はもちろん、相手の人生まで台なしにしてしまいますからね。すごく好きとまではいかなくても、まあまあ好きだと思える顔の人を選ばないとね」


Q「深い……。わかりました。しかと胸に刻んでおきます。ところで先生、お腹が空きました。今夜、陽向(ひなた)は友達のとこ行ってて、夕飯いらないの。何か食べに行かない?」


A「いいね。ベトナム料理でも行く? 野菜いっぱい食べて、女子力上げよっか」
いつものようにきっちりワリカンで支払いを済ませ、わたしたちは店を後にしたのだった。

■婚活カップル発見! 直ちに尾行を開始

さて、それでは数寄屋橋へ向かおうと歩き出した瑛子大先生の足が、ほどなくピタリと止まる。
「え、何?」戸惑うわたしを、「しっ!」と制する。「見て。あれ婚活カップルだよ。今日会ったばかりと見た」赤信号で足止めされている一組のカップルの後ろ姿をそっと指して、声を潜める瑛子。
「なんで婚活カップルだってわかるの?」というわたしの問いかけを無視して「あと、つけるよ。婚活の現場、有紀に見せたげる。ついておいで!」



信号が青に変わると同時に横断歩道を渡り始めたカップルの後ろを、瑛子がさりげなくついていく。「ちょっと待って」とつられてわたしも声を潜めながら、生まれて初めての探偵ごっこが始まった。
大人なのに何やってんだろう、わたしたち。でも不思議。なんだかちょっと楽しくなってきたぞ。
他人の婚活は蜜の味!? 





(第21話につづく)



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伊藤 有紀

フリーライター。 39歳のとき、夫が急逝して、わたしは突然ミボージンになりました。以来、ひとり息子をなんとか一人前に育てあげなくてはと、仕事と子育てに多忙な日々を過ごしてきたのです。あっという間に月日は流れ、息子がようやく...

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