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「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~」 ― 第4話

伊藤有紀、フリーライター。49歳と10ヶ月。10年前に夫を亡くしてから、女手ひとつで息子を育ててきた。1浪の末、息子が大学合格。ほっと安堵する以上に、子育て完了の寂しさがこみあげて。この先40年も続くかもしれない人生、ひとりで生きていける気がしない。それならと50歳を目前に控え、慌てて婚活を始めてみるが……。<第4話>

「ラス婚~女は何歳まで再婚できますか?~」 ― 第4話

●第3話の登場人物
伊藤有紀(いとうゆき/49歳・フリーライター・50歳目前にして婚活を開始!?) 
矢野瑛子(やのえいこ/48歳・婚活マナー教室講師・有紀の親友)




●ここまでのあらすじ 
わたしは伊藤有紀、仕事はフリーライター。10年前に夫を交通事故で亡くしてから、ひとりで息子を育ててきました。息子・陽向(ひなた)が大学生になったのを機に、婚活を開始することに。婚活会話教室で講師を務める親友・瑛子のアドバイスで、まずはマッチングサイトPairs(ペアーズ)に登録。49.9歳の婚活は、さてどうなる?


■「面倒と 思う女は 嫁行けず」←大きく書いて壁に貼ること!?

 婚活鬼コーチと化した瑛子大先生の指示に従って、わたしはなんと50歳を目前にしてPairsというマッチングサイトに登録を果たした。そもそもが人見知りで、人と出会う、つながるってことに消極的なタイプのわたしとしてはですね。200年も続いた鎖国を廃止。艦隊率いてペリーが来たから決死の覚悟で開国しました、くらいの人生大変革となったのであった。

「Pairsね、後でログインして、年齢確認の書類送っておいてね。スマホで身分証明書の写メ撮って送信するだけ。簡単だから。それしとかないと、せっかくいい男から『いいね!』をもらっても、メッセージのやり取りできないからね。わかった?」と、瑛子。
 わー、まだ手間がかかるのか。つい正直に本音が顔に出てしまったらしく、たちまち瑛子の檄が飛ぶ。

「面倒と 思う女は 嫁行けず。これ婚活の常識。よぉ〜く覚えときなさい。おっきく書いて壁にでも貼っとく!」

 か、かしこまりました……。

■結婚相談所はどう選ぶ? 〈1〉まずは実績ある大手を押さえよ

「でね、次、結婚相談所の選び方。これ、ひとことで言うと相性だと思うんだよね。まずはいろんな相談所に相談に行って話を聞いてみて、『ここにお世話になりたい』って思えたところに登録するのがいいと思う。なーんて言っても、どうせ有紀はあちこち行ってみたりしないでしょう? まあうち大手だから、とりあえずうちのカウンセリング受けてみれば? 扱ってきた件数が違うからね。成婚に持ってく指導力は高いと思うよ」
「わ~、それ安心。うん。そうする!」わたしは、スマホにメモを取り続けた。カウンセリング受ける。瑛子のとこ、と。


「いまの婚活ってWeb検索が主体だって言ったでしょ? IBJ、日本結婚相談所連盟っていう日本最大の組織があってね。うちも含めて全国1100の結婚相談所が加盟してるんだけど、そこが運営してるサイトを利用してマッチングするのが基本なの。相手の顔写真、プロフとか見て『いいね!』じゃなく『お見合いの申し込み』をするわけ。あ、IBJのサイトでは、基本的に写真掲載は必要よ。うちが提携してるカメラマンが綺麗に撮ってくれるから任せて。
 で、有紀の写真、プロフを見た上で相手が承諾してくれたらお見合い成立。日程決めて、ホテルのラウンジとかでお見合いね。もちろん男性から申し込んでくれる場合もあるけど、そこで重要なのが女性の年齢。検索条件には大抵『49歳まで』って入力されちゃうからね。49歳と50歳では、お見合いできる可能性が天と地ほど違うの。だから、いい? しなきゃいけないこと、すぐに全力でするのよ。わかった?」


 ほほう。いまどきはお見合いなんてものもネット越しに決めるのね。時代は変わったんだなぁとやけにしみじみする。瑛子先生の解説は続いた。
「Pairsのプロフは自己申告だから、中には適当に書いてるひともいるの。でも相談所のはすべて証明書提出済みだから信頼できる。学歴とか年収証明とか。そんな労力を払って登録するからには、男性はみんな本気で結婚したい人ばかり。だから、お見合いで実際に会って意気投合となれば、話は早いよ」
 うわぁ。なんだか突然、再婚がすぐそこまで迫ってきた感じ。正直、緊張する……。

■結婚相談所はどう選ぶ?〈2〉新興勢力の長所を活かせ

 いや、そうでもないか。50歳目前のわたしとお見合いしてくれるひと、いるのかどうかわからないわけだし。
「でね、もうひとつ。40代のご夫婦が始めた小さな相談所はどうかな。まだできて1年くらいの新興勢力なんだけど。独自のルートで人脈持ってて、『この男性とこの女性、合いそう』っていうふたりを引き合わせてくれるらしいよ。霞が関系のキャリアと元CAの女性を交際半年足らずで成婚させたとかって聞いた。男性が50歳過ぎてて、女性も40代後半だとか。やるよね。だから、49歳のわりに面白いし、見ようによってはちょっとだけかわいいときもごく稀になくもない有紀には、ぴったりかもしんない」

「瑛子。日本語が高度すぎてわかんなかったけど。もしかして、いま褒めてくれた?」
「褒めたさぁ。ははは」
 そうか。やはり褒めたのか。瑛子が褒めてくれるなら、わたしだってまだ捨てたものじゃない(と思うことにしよう)。教えられた新興勢力とやらの名前をスマホで検索する。恵比寿駅から徒歩5分。なるほど。よし、ここにもカウンセリングのアポ入れをする、と。


 伊藤有紀、49.9歳。婚活で成果をあげる自信があるわけではない。でも、60歳、70歳になってから「あのとき、もっとがんばって婚活していれば」なんて悔やみたくないから。できることはすべてしてみよう。
 わたしはすっかり氷が溶けてしまった杏のサワーを口元へ運びながら、ちらっと瑛子の横顔を覗いてみる。ありがとう、瑛子。意気地なしのわたしを、いつも励ましてくれて。
 照れるしね。口にはできずにいるけれど。感謝の思いが胸を満たして、ほんとはちょっと泣けそうだった。ちょっとね。



(第5話へつづく)

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第1話(https://p-dress.jp/articles/2082
第2話(https://p-dress.jp/articles/2083
第3話(https://p-dress.jp/articles/2087
第5話(https://p-dress.jp/articles/2162
第6話(https://p-dress.jp/articles/2197
第7話(https://p-dress.jp/articles/2226
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伊藤 有紀

フリーライター。 39歳のとき、夫が急逝して、わたしは突然ミボージンになりました。以来、ひとり息子をなんとか一人前に育てあげなくてはと、仕事と子育てに多忙な日々を過ごしてきたのです。あっという間に月日は流れ、息子がようやく...

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