帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます
イラストレーター・ヤベミユキさんが街で見かけた素敵なひとを紹介する、『素敵なひとの素敵な生活』。今回は、朱赤の帽子×ブラウンの配色でオシャレを楽しむひと。帽子のある生活で、眠っているおしゃれ心を呼び覚ましたい。
街を歩いていて目を引くあの人。なぜその人に惹かれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。その人からイメージをふくらませて、素敵な生活を想像してみた。
■朱赤の帽子を主役に、絶妙な配色を楽しむひと
先日、街で見かけた、帽子を主役にした配色が素敵なひと。
目の冴えるような朱赤のニット帽は、ヨーロッパ製だろうか、ウールの発色が美しい。
そこにキャメルがかったブラウンのアウターを合わせていて、朱赤×ブラウンの配色が目を引く。
インナーに着たシフォンのチェックシャツの裾からは、レギンス1枚の脚が伸びていて潔い。
彼女の帽子ありきの配色のチョイスから、日頃からいろいろな帽子を楽しんでいるのが感じられる。
私のように、外出前に帽子もあったほうがいいんじゃないかと悩み出し、気恥ずかしくなって出先で外す、なんてことはないのだろう。
彼女のように帽子を自然に楽しめたらどんなにいいだろう。
■自分に魔法をかけてくれる偏愛アイテム
そう、たとえば、
春夏になったらラフィア素材のつば広帽を楽しむ。
日よけのためだけではなく、顔まわりを美しく彩るため。
そのためには日差しが強ければ強いほどいい。
ラフィアの隙間から落ちる光と影が、あなたをアンニュイでドラマチックな雰囲気に引き上げてくれる。
クラシカルな洋服が増える秋冬は、仕立ての良いウールの帽子を楽しむのもいい。
ベレー帽はエレガントな、ハット系はジェンダーレスなムードを纏える。
パンツスーツにベレー帽、ロングドレスには中折れ帽と、真逆のイメージのかけ合わせるとお互いが引き立つ。
帽子を買うときに合わせて購入したいのが、専用の帽子箱。
帽子のシルエットを保ってくれるので、長いスパンで美しく使える。
何よりも、置いておくだけでインテリアを彩ってくれるビジュアルが嬉しい。
ところで。
帽子のおしゃれへの情熱を一番持っているのは、間違いなくマリーアントワネット時代の貴婦人たちだと思う。
このファションが好きかどうかはともかく、ここまで作り込める情熱に敬意を感じる。
おしゃれは楽しんだもの勝ちだと証明してくれている。
私はおしゃれを楽しんでいるのだろうか。
前職のアパレル時代で集めた洋服はクローゼットに眠っているし、 今日に至っては朝からメイクすらせずに原稿を描いている。
昔は私こそ帽子を偏愛していて、買い集めるだけでは物足りず自作すらしていたのに、その情熱はどこへやら。
忙しさを理由にしているが、本当は自信がないのだ。
そんな自分を大いに反省する。
思い切ってクローゼットを開けてみる。
チュールのついたRADAのベレー帽、 これが好きだった。
かぶるだけで理想の自分に近づける気がして、勝負の日には必ず身につけていた。
偏愛アイテムはいつだって自分に魔法をかけてくれる。
気づくと冬も終わろうとしている。
絵を描いて満足していてはいけないのだ。
来週は春の偏愛アイテムを探しに行こう。
いつか着たいと思っているmameの服を、「いつか」ではなく今年こそ買おうと誓った。
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。