ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる
イラストレーター・ヤベミユキさんが街で見かけた素敵なひとを紹介する、『素敵なひとの素敵な生活』。今回は、忙しない年の瀬の街で出会った、ゆるいニットとアンニュイなスカーフアレンジが目を惹く女性です。そこだけゆっくり時が流れているような雰囲気をまとった彼女から、静かな年の暮れの過ごし方を想像します。
街を歩いていて目を惹くあの人。なぜその人にひかれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。
その人から感じられる素敵な生活を妄想してみた。
■ゆったりとした空気をまとって、年の瀬を過ごしたい
早いもので年の暮れ。足早に通りすぎる人々に、意味もなく気が急ぐ。
そんなときに街中で見かけた、ゆるいニットとスカーフアレンジが素敵なひと。
ざっくりとしたアランニットをキュッとハイウエストで結んでいて、着物ライクな雰囲気がいい。レイヤードしたニュアンスベージュのシャツもこなれている。
一番目を惹いたのは、彼女の美しいブラウンの髪に巻かれた、同じブラウンのスカーフ。西洋絵画に出てきそうなアンニュイな空気感にグッときた。
なぜだか彼女の周りだけ時がゆっくりと流れているようだ。
ああ、私は何に急いでいたのだろう。
気ばかりが焦って、忙しい忙しいと言うだけで一年が終わろうとしていることを後悔する。彼女のようにゆったりとした空気をまとって年の暮れを過ごせたらどんなにいいだろう。
■私はこの一年、どう生きたのだろう?
そう、たとえば
この一年の自分史を書いてみる。
起こった出来事、そのときの気持ち、良いことも悪いことも全部書き出す。
脳は混乱しやすいもの。
膨大なものを抱えてるようで、その本質はとてもシンプルだったり、
逆に大切な「何か」に蓋をしていたりする。
年の暮れの空気はインテリアでも手軽に楽しめる。
松の枝を買ってきて、水引きに結ぶだけ。
年末から飾っておくと、新しい年を迎える実感が湧くし、縁起が良いものはなんだか背筋が伸びる。
さて、「いよいよ年越し」のその瞬間、あなたは毎年何をしているだろう。
だらだらとSNSを見ていたら年が明けていた、なんてことにならないように、その時間はデジタルデトックスをして、除夜の鐘に耳を傾けてみてはどうだろう。
除夜の鐘は、人の心にある百八つの煩悩を払うためにつくと言われている。
鐘がひとつ鳴るたびに、自分の中の不安や嫉妬や執着などを手放していけるといい。
とはいえ、今は除夜の鐘が聞こえることも少なくなってきたから、こたつで「ゆく年くる年」をゆっくり見ることになるのだが。それはそれで至福なのだ。
除夜の鐘を楽しんだら、干したての布団で眠れたら最高だろう。
良質な睡眠で良い夢を見て、新しい年を迎えたい。
新年。いつもより早く起きたら、丁寧にメイクをして、真っ白なシャツに腕を通す。
真っ白な私、これからどんな色に染まっていくのだろう。
なんて妄想をしながら、子どもの頃の記憶を思い出す。
年の暮れは毎年山の中にある祖母の家に帰って、
みんなで紅白歌合戦を見たあとは、お日様と線香の香りが混ざった「みなしごハッチ」の枕で眠る。
ウトウトしながら、山の上にあるお寺から除夜の鐘がかすかに響いているのに気付く。
居間からは明かりが漏れていて、大人たちが麻雀を楽しんでいる。
ゴワーンと響く鐘とジャラジャラと弾く麻雀の音を感じながらまた眠りに落ちる。
今年はそんなノスタルジックな年越しがしたい。ただ、散らかった部屋のようにまだやることが山積みだ。
やりきるのだ。そしたらお気に入りのニットを着てスカーフを巻いて自分史を書こう。
私は今年一年どう生きただろう?
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。