バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性
イラストレーター・ヤベミユキさんが街で見かけた素敵なひとを紹介する、『素敵なひとの素敵な生活』。今回は、花咲くように揺れる真っ赤なスカートが印象的なひと。ドラマチックな彼女の佇まいから、バレンタインシーズンに女性性を楽しむためのあれこれを考えます。
街を歩いていて目を惹くあの人。なぜその人にひかれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。
その人から感じられる素敵な生活を想像してみた。
■バレンタインシーズンに似合う、花咲くようなスカートが印象的なひと
先日、街で見かけた、花咲くように揺れるスカートがドラマチックなひと。
オーバーサイズのグレンチェックのコートはメンズ物の古着だろうか、毛羽立った無骨なウールの質感がこなれている。
襟元は大きなフーディのレイヤード、ダウンヘアとの重めのバランスがいい。
コートの下からは、目のさえるような真っ赤なラッフルスカートが覗く。彼女が歩くたびに、次々と咲く花のように広がり、なんともドラマチックだ。
もうすぐバレンタイン。
自分が食べるシャンパントリュフのことしか考えていなかったが、一年でもっとも甘いシーズンだ。
せっかくのバレンタインシーズン、彼女のようにドラマチックな女性性を楽しめたらどんなにいいだろう。
■甘くほろ苦い。娘と私、それぞれのバレンタイン
そう、たとえば、
トレンドの大ぶりアクセを休んで、一粒パールの繊細な輝きを楽しんでみる。
いつものニットにデニムでいい。パールのまろやかな光はあなたを柔らかく照らし、横顔の美しさを引き立てる。
女性性を高めたいときにまず私がするのは、家中の窓や鏡を磨くことだ。
女性性が低下しているときは、かなりの確率で鏡が曇っている。
(ついでに言うと顔の産毛も伸びている)
忙しいと自分の姿さえまともに見られない。
ピカピカに磨き終えた鏡に映ったあなたは、きっと昨日より綺麗になっているだろう。
直接記憶に働きかけると言われる「香り」で女性性を楽しむのも効果的だ。
とはいえ、香りはさじ加減が大切。香りで足したのならひとつ引いてほしい。
ハンサムなコーデに甘いトワレをほのかに纏う程度でいい。
ひとさじの真逆なイメージが、あなたに奥行きを与えてくれるだろう。
自分磨きも大切だが、スキンシップに勝るものはない。
触れる肌に、胸がときめく。暖かい体温に心から安心する。
一つひとつの感覚が、あなたの女性性を呼び覚ます最高の媚薬となるだろう。
なんてことを考えていると、キャッキャと娘たちの笑い声が聞こえてくる。
どうやら「恋バナ」をしているようだ。
彼女たちの胸の中には早くも小さな恋が宿っていて、それそれの思いを胸にバレンタインに挑むらしい。
長女の恋のライバルは、クラスの優等生。スポーツもできて誰にでも優しい女の子。
次女の恋のライバルは、親友でもありクラスのアイドルでもある女の子。
私は、一緒にチョコレートを作ることしかできないが、その小さな恋を最後まで見守ろうと思う。
バレンタインは一年で一番甘いイベントだけど、ビターチョコのように甘くもほろ苦いものだ。
ふと、昔の恋を思い出す。
小学6年生、卒業前のバレンタイン。本当に好きな人には用意したチョコレートを渡せなかったし、気持ちを伝えられなかった。
夫とは結婚して10年経った。
毎年バレンタインに添えていた手紙も、いつしか渡さなくなっていたことを大いに反省する。
伝えられる環境に甘えて、言わなくても伝わっていると思ってはいけないのだ。
久しぶりに手紙を渡そう。
そしてとびきり美味しいシャンパントリュフを一緒に食べるのだ。
パールが光る私の横顔に、夫は気づいてくれるだろうか。
娘たちの小さな恋に背中を押され、ほんの少し勇気を出して筆をとった。
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。