新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく
イラストレーター・ヤベミユキさんが街で見かけた素敵なひとを紹介する、『素敵なひとの素敵な生活』。今回は、新春の初詣で出会った、ピンクのコートで晴れやかなレイヤードスタイルを楽しむひと。今年は彼女のように、新しい自分に出会い、変化を楽しんでいきたい。
街を歩いていて目を惹くあの人。なぜその人にひかれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。 その人から感じられる素敵な生活を想像してみた。
■新しい年、人混み、揺れるスカート。取り巻くすべてを楽しむひと
新春、初詣の人混みの中、晴れやかな配色でレイヤードコーデを楽しむ彼女に目がとまった。
くすみピンクのコートに手に持った真っ赤なりんご飴の配色が綺麗。
インナーに着たビンテージブラウスには音符の模様が描かれていて、りんご飴をほおばる彼女の笑顔を引き立てる。
座ってめくり上げられたコートの下からは、ベージュのシフォンスカートがオーロラの様に揺れ、絶妙な見せ加減が普段からレイヤードコーデを楽しんでいるのを感じさせる。
新しい年も、人混みも、揺れるスカートも、自分を取り巻くすべてを楽しんでいる彼女。
きっと今年も新しいファッションを楽しむのだろう。
そんな彼女のように、新しい自分を楽しめたらどんなにいいだろう。
■新しい自分と出会い、不必要なものを手放す
そう、たとえば
いつもとまるきり違うサイズ感を楽しんでみる。
たまたま着てみた彼のカッターシャツの、少しごわごわとした綿の質感が絶妙に気分にフィットして、この春のメインコーデになるかもしれない。(そうなったら彼に返すことなく、そっと自分のクローゼットにしまうだろう)
一年で一番白く澄んだ冬の肌に、あえてトロピカルなイエローのアイシャドウをのせてみる。
日焼けした肌にのせてハッピーにしあげるのもいいけれど、真冬の肌だと発色が際立ち幻想的なムードに仕上がる。
まぶたにイエローなら眉毛とまつ毛にはくすんだボルドーを乗せて、新鮮な配色を楽しむのもいい。
メイクがうるさくならない冬の肌だから、様々なカラーを楽しめる。
葉が落ちた枝物の造形美を楽しんでいた昨今だが、そろそろ春に向けて芽吹いていく植物を育てるものいい。
植物が芽を伸ばし育っていく様子は、新しい自分が生まれ、育つ様を表しているようで活力が湧く。
1日では変わらないように見えても、実は少しずつ変化している自分が、植物を通して感じられるだろう。
ところで今年の目標は立てただろうか。
何か新しいことを始めるならば、一つひとつ小さなことから始めて定着させていきたい。
あれもこれも始めてしまうと負担になり結局辞めてしまう。
1カ月に一つずつでいい。
今年の終わりには12の新しい自分を手に入れているのだから。
なんてことを考えながら、スマートフォンを触れた右手が無意識にSNSを開いていることに気づく。
またやってしまった。
新しい自分と出会ったら、今の自分に深みが出て魅力が増すだろう。
しかし、不必要なものを手放さなければ、ぐちゃぐちゃに混ざるだけだし、器にも時間にも限りがある。
今年は新しい自分を育てるために、SNSで時間を潰す自分を手放すと決めたのだ。
まずはここから。
それが定着したら、春の洋服を買いに行こう。
あの彼女のように、着ていてワクワクするような一着を探そう。
そんなことを考えながら、自分の中で小さい何かが芽吹くのを感じた。
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。