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女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ

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イラストレーター・ヤベミユキさんが街で見かけた素敵なひとを紹介する、『素敵なひとの素敵な生活』。今回は、劇場近くのコンビニで出会った、ユニセックスなスポーツウェアとヘッドアクセが印象的な少女。舞台女優らしい彼女の佇まいから、「さまざまな自分を演じる楽しみ」に思いを馳せます。

女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ

街を歩いていて目を惹くあの人。なぜその人にひかれるのか、その秘密は背後にあるライフスタイル。
その人から感じられる素敵な生活を想像してみた。

■ユニセックスなスポーツウェアに身を包んだ、あどけない彼女

先日、劇場近くのコンビニで、ひとりの少女に目が止まった。
彼女の着ている大きめのスポーツウェアは深緑と朱赤の配色が効いていて、トラックパンツとくすみピンクのレッグウォーマーとのレイヤードが可愛い。

タイトなシニヨンを作った彼女の頭には、ゴールドとピンクのヘッドアクセが輝いている。
ユニセックスなスポーツウェアを着たあどけない彼女は、舞台の上ではどんな姫になるのだろう。

どこかで聞いた「女の子は誰だって女優」という言葉を思い出す。
彼女のように、毎日さまざまな自分を演じられたらどんなにいいだろう。

■赤いリップも、着古したパジャマも、どちらも大切な自分自身

そう、たとえば、
彼と会う日は、繊細なレースの下着を身につける。
肌の一番近いところに色気を仕込んだら、きっと彼を見つめる眼差しが艶っぽくなるだろう。
(その後ドラマチックな夜になるかは別として)

大切なプレゼンの日など、ここぞというときはメイクの力を借りるといい。

混じり気のない赤を載せた唇から出る言葉はパワーを感じるし、
鮮やかな指先は、目に入るたびにあなたに勇気を与えてくれるだろう。

家にこもって作業する日は、アンティークのメガネチェーンをかけて、アンニュイな小説家になってみる。
お手製の重いマグカップに濃いめのコーヒーを入れて、深呼吸しながらその香りを楽しむのもいい。


夜中にコーヒーをすすりながら作業していると、ふと子どもの頃の記憶が蘇る。

小さい頃からひとりで遊ぶのが好きだった私は、家族で出かけるときには必ず留守番をかってでて、ひとりでいろんな人物に変身した。
母親のスカートを穿いてネックレスを頭にのせたらアラブのお姫様になったし、毛布をいくつも羽織っては平安時代の姫になった。母親のかつらを持ち出して、ラプンツェルにもなった。


今、私の娘たちも同じように、身近なものでいろいろな姫になっている。
いつの時代も子どもは変身の天才だ。


なんて考えていると、「ママ……」という声で我に返る。
夜明け前の4時、ベッドを抜け出して“アンニュイな小説家”になりきっていた私は、その声で“ママ”に戻る。

「もう少し一緒に寝ようよ」と小さな手が寝室まで引っ張る。
キティちゃんの枕に着古したフリースのパジャマ。朝の7時には「こどもチャレンジ」の目覚ましが鳴る。

所帯染みた現実の世界。
それでも着古したパジャマを、娘たちは「ママの匂いがする」と喜んでくれる。

ベッドの上で両肩にのしかかる娘たちは、重いけれど暖かく愛おしい。
もしも自分の世界があと一年で終わるとしたら、私は間違いなくこの毎日が最後まで続くことを願う。

きっとこのドラマチックでもなんでもない日常こそが何よりも輝いていて、一番大切な人生の舞台なのだろう。

オシャレをして赤リップを塗っている自分が好きだ。
でも、すっぴんで着古したパジャマを着ている自分も悪くないもんだ。

そんなことを考えながら眠りについた。

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ヤベ ミユキ

イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。

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