食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を
季節の移ろいとともに、街で見かけた素敵なひとを紹介する『素敵なひとの素敵な生活』。今回は、きめ細かな配色コーデが美しいひとりの女性です。ファッションだけでなく、食事を楽しむ様子まで素敵なその人の生活を少しだけ想像してみます。私たちの身体は食べたものでできている……だから、きっと、食べることは生きること。
街を歩いていて目を惹くあの人。
なぜその人にひかれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。
その人から感じられる素敵な生活を妄想してみた。
■きめ細かな配色コーデが素敵なひと
先日、街で見かけたコーディネートのバランスが絶妙な人。
深みのある赤のコーデュロイシャツは彼女の定番なのだろう。少し褪せていて、味があっていい。
そこに合わせた黒のスキニーデニムが彼女のプロポーションを引き立てる。
足元はレオパードのローファーで、トレンドも抜かりない。
キャメルのローファーが彼女のグラデーションの髪色と合っていたり、赤のシャツにベビーピンクのアクリルピアスを合わせていたり、細かい配色までうまい。
さらに惹かれた理由は、彼女がツウな感じのこじんまりとした店で食事を楽しんでいたことだ。
ファッションだけでなく食事にまでこだわるなんて、なんて素晴らしいのだろう。
食に疎く、何かに没頭すると食事が適当になる私にとって、雲の上の存在だ。
だけど、思い返してみれば、私の周りの素敵な人は、忙しくても食事にこだわっている人が多い。
よくよく考えると、食べたもので体はできているのだから、食にこだわることは、自分を大切にするということだ。
だからこそ、食事の質がいい人は、自分の良さを大切にしたバランスのいいコーディネートが組めるのだろう。
食べることは、生きること。
毎日の食事をもっと楽しめたら、どんなに良いだろう。
■食事を大切にすること、「ー手間」「器」「土のある生活」
そう、たとえば、旬な食材をシンプルな味付けで楽しむ。
素材そのものが美味しいと凝った味付けはいらないので、簡単に美味しい料理ができる。
旬のものはお財布に優しいところもうれしい。簡単でシンプルな料理でも、愛はたっぷりと入れたい。
その愛とは「一手間」だろう。
彩りを意識して葉物を添えるとか、食べやすい大きさに切るとか、食べる人のことを考えたちょっとした気持ちは料理にあらわれる。
我が家の味というものも大切にしたい。
それは、お母さんから譲り受けたり、レシピで知ったりとさまざまだが、疲れて帰ってきていつもの味を食べるとホッとする。
料理上手な人の冷蔵庫を覗くと、なにやら秘伝のタレが常備されていてワクワクする。我が家の味というと、せいぜいその時々の野菜が入った豚汁くらいだが、それでも家族は喜んでくれる。
「料理は器次第」と誰かが言っていたように、食器は大切だ。普段使いのものならなおさら、お気に入りの食器で自分を喜ばせてあげたい。一つひとつの食器に物語は感じられるだろうか。
毎日、少しの量を使いたいハーブや薬味は、自分で育ててみるのはどうだろう。
食卓にバリエーションと深みが出るのはもちろんだが、土のある生活というのは本能的に落ち着くものだ。
なんて妄想していたら、お腹がグーッとなって我に返った。
近頃、お腹がなるほど空腹になることがあっただろうか。
食を楽しむ為に一番大切なことは食べる側の準備だ。
子どもの頃、クタクタになるまで外で遊んで、家に帰った時のご飯の炊ける香り。
母親の足のまとわりつきながら今か今かと待ちわびて、食べたご飯のお美味しかったことを思い出す。
食に疎い私でも今すぐにできること。
今日は味見と称するつまみ食いを我慢して、自分を慈しみながら王様のような朝食を食べようと思った。
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。