朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい
日々のことや家族の心配ごと、ついぐるぐるといろんなことを考えてしまうけれど、本当はもっと力を抜いて生きていいのだ――。イラストレーター・ヤベミユキさんが街で見かけた素敵なひとを紹介する、『素敵なひとの素敵な生活』。テーマパークで見かけた気負いのない佇まいの女性から、自然体でいることについて考えます。
街を歩いていて目を引くあの人。なぜその人に惹かれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。その人からイメージをふくらませて、素敵な生活を想像してみた。
■「ちょっとそこまで」の身軽さが魅力的な彼女
先日、テーマパークで見かけた、力の抜けた自然体な着こなしが素敵な人。
メンズサイズのグラフィックTシャツを一枚でさらりと纏い、足元はネイビーのシンプルなビーチサンダル。
アクセサリーはゴールドコインのネックレスのみ。
ナチュラルな黒髪のダウンスタイルに気負わないコーデ。そこにミッキーマウスのカチューシャが映えてかわいい。
コンビニに行くような身軽さ。
ちょっと思い立ってやってきたかのような彼女からは、何の気負いも感じられない。
頭の中が日々のことや家族の心配ごと、ちょっとしたどうでもいいことでぐるぐると回っている私には、彼女が眩しくて仕方がない。
彼女のように、肩の力を抜いて自然体で生きられたならどんなにいいだろう。
■朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばせばいい
そう、たとえば。
おしゃれでいうなら、最後に選んだものをひとつ外す。
おしゃれにストイックな私たちは、ついひとつ余分に着飾ってしまう。
迷って最後に身につけたものはだいたい、自信のなさを隠すためのものだったり、見栄だったりする。
それがコーデを台無しにし、頑張りすぎてる人に認定されてしまう。
(今すぐひとつ、外しましょう!)
それから、美容。
幼少期から容姿もスタイルも自信がなかった私は、それを補うべく、早くからメイクに目覚めた。
一生懸命な気持ちから、あれもこれも加えたくなるけれど、大切なのは「何を引くか」だということに最近気づいた。
たとえば、不要なものを食べない。それだけで、たった3日で、見違えるように肌も瞳も輝きだす。
どんな化粧品より効果が早いのが食べ物なのだ。
忙しいとき、気が張っているとき、疲れたときは、深く長くゆっくりと呼吸してみる。
心と体は繋がっているので、時間がないときは無駄な動きが多くなるし、緊張していると強張ってしまう。
逆も然りで、新呼吸して体の力が抜けると、心の不要なものも抜けていく。
我が家の庭には、次女が学校から持って帰ってきた朝顔の植木鉢がある。
毎朝、見るたびに、器用に気ままにつるを伸ばしている。
ふと、「ああ、朝顔のようにどこにだって腕を伸ばしてもいいんだな」と思った。
何となく、みんなと一緒のレールの上から落ちないように見渡しながら生きてきたけれど、隣のレールに行ってもいいし、進むのが辛いのならやめたっていい。
自分で腕を伸ばしていけばいいのだ。
家族のことを勝手にあれこれと心配して、辛い思いをしないようにと先回りして回避しようとしていた私は、レールの脇をセメントで固めていたのだろう。
なにがあっても経験だ。
どんと構えていよう。
大切なことは、いつだってシンプルなんだ。
そう思ったとき、やっとほんの少し、肩の力が抜けたのを感じた。
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。