動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる
イラストレーター・ヤベミユキさんが街で見かけた素敵なひとを紹介する、『素敵なひとの素敵な生活』。今回は、電車の中で見かけた、シンプルなモノトーンの着こなしが素敵なひと。その身のこなしの美しさから、日常でコツコツと積み上げる“美しさのための習慣”について考えます。
街を歩いていて目を引くあの人。なぜその人に惹かれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。その人からイメージをふくらませて、素敵な生活を想像してみた。
■シンプルなスタイルと美しい身のこなしが目を引く人
先日、電車で見かけた、シンプルなモノトーンスタイルに美しい身のこなしが引き立つひと。
ハイネックニットにスリムパンツ。上下黒のコーディネートが彼女のボディラインを引き立てる。ゴールドで揃えられているアクセサリーに、ダークグリーンのベルトがコーディネートにほのかに変化を与えている。
あっさりとした顔立ちにカーリィなベリーショート、リップブラシで丁寧に塗られた発色の良いオレンジリップが大人かわいい。
美しい人であったが、彼女に惹かれた理由は、揃えられた脚に伸びた背筋というその身のこなしだった。
背後にある何気ない日常の積み重ねが、その佇まいを作っているのだろう。
座席の反対側にいた私も、思わず背筋を伸ばす。背中に心地よい刺激が入ると同時に、私は何時間背中を丸めていたのだろうと思い知らされる。
彼女のように、美しくなるための何気ない日常を楽しめたらどんなにいいだろう。
■未来の美しさを作るもの
そう、たとえば。
自分のサイズ感を大切にする。
洋服を吟味するときに意外と忘れがちなのがサイズ感。
購入した服をサイズ直しに出すのはなんだか面倒臭いし、修理代を払うのももったいない気がするけれど、サイズの合っていない服を着たあなたの方がずっともったいない。
特にパンツのウエストが大きいまま穿いていると、お尻が大きく見えるし脚だって短く見える。
サイズをちゃんと合わせれば、マイナス3キロのスタイルアップが叶う。
服をきれいに着る力をつけたいときは、ベーシックな白シャツにとことん向き合ってみる。
ごまかしのきかないジャストサイズの白シャツ、これを美しく着るためにはどうしたらいいのだろうと考える。
毎日きちんとアイロンをかけるだけでも見違えるし、食事や運動でスタイルを磨くことでベーシックな着こなしもぐんとサマになる。自分が一番輝くためにはボタンをいくつ開けたらいいのか、袖はどのようにまくったらいいのか、とことん研究してみるのもいい。
ところで、ごはんは毎食きちんと食べていますか?
食べたものでできている私たち。美しくなりたいのなら、残念ながら食事を無視できない。
食生活が乱れるとあっという間に美しさも乱れてしまうし、その逆も然り。
特に、無理な食事制限をすると、その溜まったストレスは結局食べることで発散してしまう。
まずは一食、体が喜ぶごはんをおいしく食べてほしい。
そして、可能であれば少しでも体を伸ばし、動かす。
体を動かすことはスタイルアップにつながるだけでなく、血行も良くなるし、ストレス発散にもなる。
運動する時間がないのであれば、歩くときに膝をくっつける、座るときに背筋を伸ばすだけでもいい。
美しさは日常からできている。
私たちは大きく変わることを期待して特別なことをしたがるけれど、今の自分を作っているのも長い時間をかけて作られた生活習慣だから、未来の美しさを作るのもコツコツと積み上げた日常でしかないのだ。
なんてことを考えながら、ふと鏡を見ると、口角の下がった自分が鏡に映る。
日常的にしかめっ面をしているであろう自分を大いに反省する。
動いて、食べて、眠る。その繰り返しをもっと丁寧に楽しもう。
そう思い、朝ごはんの納豆にネギをのせてみた。
彩が加わった食卓に思わず笑みがこぼれる。
そんなことで機嫌が良くなってしまう自分が、なんだか愛おしく感じた。
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。