あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?
ふたりで過ごしてきた歴史は、ふたりの顔に刻まれるのかもしれない。そんなことを思わせてくれたのは、街で見かけた素敵なカップルでした。ボタンの留め方やコーデに取り入れた緑の差し色など、さりげない所が似ているそのふたりから、カップルでの素敵な時の過ごし方を妄想してみました。
街を歩いていて目を惹くあの人。
なぜその人にひかれるのか、そこに感じられるのは背後にあるライフスタイル。
その人から感じられる素敵な生活を妄想してみた。
■一緒に時を過ごすうち、自然と似てきた様子が感じられるふたり
先日、街で見かけた、どことなく似た空気をまとったふたり。
彼女が来ているデニムジャケットは彼のものだろうか、ユニセックスで可愛い。
そこからちらりと見える鮮やかな緑のチェックシャツがアクセントになっている。
彼は、グレーのフーディーからさりげなくデニムシャツがレイヤードされていて、首元から見えるブルーが綺麗。
足元は緑のベルクロ、ベーシックな色合いのコーデに冴えた緑が目を引く。
お揃いの洋服を身につけているわけではないのだが、妙にしっくりくる。
よく見ると、シャツのボタンを一番上まで留めている所だったり、ベーシックカラーのコーディネートに差し色に緑を効かせていたり、ちょっとした決め所が似ているのだ。
同じアディダスのスニーカーでも、色やラインが違う、そのかすり具合がいい。
似ている所があまりにさりげないふたり。違う個性を持ったふたりが、一緒に時を過ごすうちに、自然と似てきた様子が感じられる。
ただ一緒にいるのが心地いい。大切な人と、そのように時を重ねられたらどんなにいいだろう。
そんな素敵な生活を想像してみた。
■私は大切な人といるときに、どんな顔で過ごしているのだろう
そう、たとえば、それぞれの飲み方で、一緒にお茶を飲む時間を楽しむ。
彼はキンキンに冷えたアイスコーヒーをブラックで楽しみ、彼女はミルクたっぷりのホットラテのハチミツをひとさじ。
たわいのない会話をしながら、時にはしんとした無言の時間もいい。お互い好きなことをしながら、ただ相手の気配の心地良さを楽しむ。
そんな時間を明日も楽しみたいから、今日も氷をキンキンに冷やし、ハチミツを常備しておく。
そんなふたりは、毎日身につける下着や靴下が似てきたりもする。そもそも、下着や靴下は肌に直接触れるもの。暖かさやフィット感、デザインなど、それぞれこだわりがあるのではないだろうか。
そういったこだわりがいつの間にか似てきたりするから面白い。お互い好きなメーカーはそれぞれ、でも気がつけば「靴下は長さがないと靴下じゃないよね」みたいなことを同時に言い出していたりする。
一緒にいるけど自分のスタンスは変わらない。相手も変わらなくていい。そう思っているから受け入れられ、受け入れられるから、どちらからともなく歩みより、似てくるのだろう。
そんなことを思いながら、ひとつの海外スナップに目が止まる。
それぞれの趣味を楽しみながら一緒に足浴を楽しむ老夫婦。赤いサンバイザーがチャーミングな彼女はファッション雑誌を手にほほえんでいる。
その横には麦わらハットがダンディーな双眼鏡を持った彼。どことなく雰囲気の似たふたりは、ファッショナブルな服装だけでなく、自然に上がった口角や目尻の横に走る笑い皺まで一致していた。
毎日一緒の時間を楽しみながら笑いあってきたのだろう。このふたりの顔はふたりの歴史なのだ。
なんと微笑ましいことだろう。
ふと、現実に戻り、鏡を見る。
私は大切な人といるときに、どんな顔で過ごしているのだろう。
自分の顔はパートナーを映す鏡なのだろう。
近頃眉間にうっすらとシワが入ってきたこの顔を大いに反省する。
忙しく、すれ違いの私達だが、今度の週末は彼の大好きな濃い目のコーヒーを丁寧に入れようと思った。
彼の目尻は少し緩み、それを見て私の目尻も下がるだろう。
『素敵なひとの素敵な生活』のバックナンバー
#1「シンプルなTシャツに、むら染美しいスカーフ。素敵なひとの素敵な生活」
#2「初秋の着こなしが素敵な人。アメリカンスリーブのニットに襟の抜いた大きなシャツの組み合わせ」
#3「セットものをシンプルに。ツインニットを素敵に着こなすひと」
#4「秋の深まりを楽しむ着こなし。繊細で綺麗な色使いが素敵」
#5「凛とした冬の足音が聞こえる季節。衣替えは、自分のイメージを更新する絶好の機会」
#6「食べることは、生きること。自分を慈しむ、王様のような朝食を」
#7「あなたは大切な人と過ごしている時、どんな顔をしていますか?」
#8「大人だからクリスマスには浮かれてはいけない、なんて誰が決めたのだろう」
#9「ざっくりニットでゆったりとした年の瀬を。除夜の鐘に耳を傾け、新しい年に想いを馳せる」
#10「新春。取り巻くすべてを楽しみながら、新しい自分を見つけてゆく」
#11「女の子は誰だって女優。さまざまな自分を演じる楽しみ」
#12「バレンタインだから楽しみたい、ドラマチックな女性性」
#13「帽子のある生活で、“おしゃれを楽しむ心”を呼び覚ます」
#14「出会いと別れの季節こそ、立ち止まってノスタルジーに浸りたい」
#15「“今”の美しさに気づき、その瞬間を生きるということ」
#16「不要なものを手放し、今まで懸命に生きてきた自分自身を愛する」
#17「『どうせ私なんか』をやめてみる。おしゃれを楽しむ少女が教えてくれたこと」
#18「忙しない毎日。ときにはだらだらと、心ゆくまで休んでもいい」
#19「小さな思考や選択の積み重ねが、素敵な自分をつくってくれる」
#20「動いて、食べて、眠る。その繰り返しが、未来の美しさの糧になる」
#21「ときには梅雨のアンニュイな空気に浸り、雨の美しさに目を向ける」
#22「今年の夏は一度きり。目で、耳で、肌で、儚い季節をめいっぱい楽しむ」
#23「朝顔のように自然体で、自由に腕を伸ばして生きればいい」
#24「潔くなくても、不器用でもいい。愛すべき『私のスタイル』はきっとある」
イラストレーター。美容、アパレル業界を経てイラストの世界へ。前職のキャリアを活かしたファッション、美容イラストを描いています。