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過去は死体だ。若いときよりも“今”がいい

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年齢にシビアなスポーツの世界。若さを羨ましく感じることもあるけれど、それでも「今が一番楽しい」と思う理由とは。格闘家・青木真也さんのコラム、最終回です。

過去は死体だ。若いときよりも“今”がいい

36歳。まだ若いと思っていたら、選手としてはベテランの領域に入っていた。
気がついたら練習場で最年長なんてこともある。試合の対戦相手は自分よりも若い選手だ。

スポーツの世界では年齢がパフォーマンスに大きく影響する。若い選手とキャリアのある選手が同じような実力であれば、将来性を加味して若い選手にチャンスが回ってくるから、年齢に関してはシビアに感じている。キャリアを重ねた選手だからこそ評価されるような、サッカーの三浦知良選手や格闘技の宇野薫選手のようなパターンもあるけれど、パフォーマンスに関してだけで考えると年齢には抗えない事実がある。

■「高さ」を追求した経験は、かならず後に生きてくる

若い選手と実際に接していると、体力や可能性はもちろんのこと、失敗した経験が少ないからこそ怖さを知らない勢いがあって、羨ましく感じるときがある。自分にもそんなときがあったのだろうが、当時は自覚がなかったから、あったのだろうなと後から当てはめることしかできないでいる。

実際の生活においても、なぜ若いときはあんな無茶ができたのかと思うことは多々ある。肌のケアなどしなくても張りのあった20歳前後、そんな時期が自分にもあったのだなと思ったりもする。人は過ぎ去ってから若さを感じるものだし、その当時に“若さ”を自覚できるほど賢くはない。バブル経済だって、後からあのときはバブルだと名がつけられるのであって、(おそらく)当時は自覚はなかったのだろうから。

ただ、僕は年齢を重ねることを悪いことだとは思っていない。むしろ今が一番楽しいし、充実しているとさえ思っている。若いときのような体力や勢いはないけれども、技術や経験は積み上がっている。回復力が落ちて練習量もこなせないが、質に変換できている。量から質に変換できているのは若いときに量をこなしたからであって、若いときにした無茶が無駄だったとは思っていない。今はスポーツだけに限らず一般生活でも、悟ったように若いときから効率化を求めるケースが多いように感じる。最初から効率化を求めても結果が出ないのではないか。非効率から生まれる効率があると僕は思っている。老害発言を自覚した上でだ。

若い時期はとにかく高さを追求したらいい。高さとは何かひとつ、自分の旗になるようなものだ。小手先の技術などいらないから、ただただ高さを積み上げていけばいい。年齢を重ねたところで広さをつけていけばいい。ここでいう広さは「横に展開していく」という意味だ。僕は格闘技選手としての高さがあるから、コラムを書いたり話したりと横に展開していける。高さがないのに広さがあっても、それは空虚でしかない。

■過去は死体だ

これは完全に僕の話になってしまうが、今が一番楽しいと思う理由に仲間ができたことがある。ずっとひとりで闘ってきた。ひたすら自分を孤独に追い詰めることで、格闘技選手として身を立てた。家族を持った時期もあるけれども、家族すら信用していなかったと思う。

孤独に殺されそうになったとき、別業種で同じように何かと闘っている仲間ができて、生きているのが楽しくなったのだ。若いときには社会人一斉スタートで集団状態だから、誰が仲間かわからないけれど、30代後半にもなれば仲間がよく見えてくる。その意味では若いときよりも幸福を感じやすくなっているのだろう。

最近感じていることがある。年齢を重ねることで自分にとっての「幸せ」の定義が明確になってくる気がするんだ。自分がほしいものが何かが明確になってくるから、どんなことをしていけばいいのかが見えてくる。自由がほしいのか、カネがほしいのか。それとも何か達成したいことがあるのか。何をどれくらいほしくてどうしたいのかが見えてくる。こればかりは、社会の価値観に引っ張られやすい若いときにはわからなかった。年齢を重ねないと見えてこないのだと思う。

若いときよりも今がいいと思って生きていくしかない。よくなかったとしても、いいと思い込んで生きてくしかない。僕も、今の自分が若いときの自分より強いと思って生きているし、今日よりも明日だと思って生きている。そもそも過去という死体はどうでもいいと思う。過去は死体だ。「若いときは」と気にすることはない。今しかないのだから。「いいから生きろ」だ。

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青木 真也

プロ格闘技選手。1983年静岡県生まれ。修斗ミドル級チャンピオン。DREAM、ONEライト級チャンピオン。格闘技選手としての活動だけでなく、執筆、プロレス、講演など活動中。格闘小作農として地道に活動しています。著書に『ストロ...

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