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黒部三奈が格闘技者として美しい4つの理由

格闘家・青木真也さんの連載では、青木さんが格闘家として魅力を感じる人々を各回につきひとり取り上げて、なぜそう思うのかを紐解きます。4回目で取り上げるのは黒部三奈選手。彼女が輝きを放つ理由、そこから学べることは、格闘家ではない私たちにもたくさんあるはずです。

黒部三奈が格闘技者として美しい4つの理由

こんにちは。格闘家の青木真也です。

ここ数年、女子格闘技がテレビ放映され、知名度を得ています。
ただ、「RIZIN」「RENA」など、団体や個人の名前は知っていても、他の団体や選手を知っている人の数はガクンと落ちるのではないかと思います。

大きな団体、表に出る選手の裏には、その何倍もの数の選手がいて、小さな会場で闘っています。

第4回目の今回は、女子格闘技団体「JEWELS」のアトム級(47.6kg以下)チャンピオン黒部三奈選手を取り上げます。

1.パフォーマンスを維持する気持ちの強さと覚悟がある

トレーニング、技術、医療などの進化でアスリートの競技寿命は伸びています。

一昔前であれば20代中盤を過ぎたらベテランであったのが、今は30代の選手はよく見かける光景になったし、40代の選手も存在する世界になりました。

格闘技においても同じことがいえて、競技寿命は確実に伸びています。これを書いている僕も35歳で、キャリア50戦を超えるベテランですが、まだ終わりが見えてこないほど。

黒部選手は1977年生まれの41歳です。

男女差を持ち込むのは好きではありませんが、他の競技を見ても、男子選手に比べて女子選手は引退の年齢が早いです。体力の問題だけではなく、環境的な問題もありますが、男性に比べて体力的に厳しいと自覚する年齢は早いと思います。

32歳のときに格闘技を始め、35歳でプロデビューと遅咲きなのもあるとは思うのですが、41歳でパフォーマンスを維持する取り組みと気持ちは、同じファイターから見ても並大抵のものではないでしょう(年齢の話を持ち出すのは、本人からすると気持ちのいい話ではないとはわかるのですが、本当にすごいと僕は思う)。

2.逆境に打ち勝つ粘り強さを持つ

彼女のファイトスタイルは体力と気持ちを担保にした粘りのファイトスタイルです。

彼女の試合で圧倒されたのは、2018年3月に行われたJEWELSアトム級防衛戦。最強の挑戦者といっても過言ではない、SARAMI選手を相手に1Rにダウンを喫して劣勢を強いられるも、2R、3Rと進み、打撃で押し切っての判定勝ち。

ダウンを喫したところから盛り返すすごさは、会場で熱狂する観客以上にファイターである僕たちに響きます。

格闘技に限らず、完全に不利な状態に陥ってから、盛り返す強さは実力はもちろんのこと、気持ち、取り組みが揃わないとできないことなので、格闘技以外の仕事に置き換えるとわかりやすのではないかと思います。

男女関係なく、この試合を見たときから、僕は彼女を「ファイター」として認めています。

3.いま、自分の人生を本気で生きている

ファイターとはいっても、ひとりの女性です。

恋もするし、結婚もするし、仕事でのキャリアも考えます。男性に比べて、女性は競技生活で失うものが大きいと思います。

出産して選手を続けるキャリアもあるけれど、スポーツ選手の1年は他の仕事の1年に比べて大きいです。社会の圧力もあるから、余計に難しいし、だからこそどのような葛藤があり、あったのかを彼女に尋ねてみたいと思いました。

現役のトップファイターが発する言葉が残ることで、社会の役に立つように思うし、それが格闘技の価値なのではないかとお節介にも思っている部分もあります。

彼女に失礼を承知で聞いてみました。清々しい返信が来たので原文で味わってほしいです。

現役を続ける続けないで結婚できるかどうかは関係ないと思ってます。むしろ格闘技をやってる方が私の良さがでるので結婚の可能性はあがるんじゃないかとも思ってます。
ぶっちゃけて言いますと結婚したいというよりは、私が好きになった人が私のコトを好きになってくれて一緒の時間を過ごせたらいいなぁぐらいにしか、考えてませんけど...
41歳でこんなこと言ってるからダメなんですね!!

出産に関してはすでに諦めているというか、そんなに願望がないんだと思います。多分本当に子供が欲しかったらもっと早い段階で婚活なりしてたと思いますがそれをしないでここまで来たので...


不躾な質問にも丁寧に清々しく答えてくれました。彼女は本気で自分を生きています。

多様性とか男女問題を謳って理屈をこねくり回しがちだけども、個々が自分の人生を懸命に生きていけばそれでいいじゃないかと思います。

なにかと生きづらい世の中ではあるけれども、格闘技を通じて生き方を提案してくれているように感じました。ファイターは試合を見せる仕事ではなく、生き方を見せて行く仕事なのだと改めて思います。

たった一度の格闘技人生、胸を張って満喫してほしいです。

黒部選手の次戦が決定しています。
AbemaTVでの放送もありますので、彼女の生き方をご覧ください。

【大会概要】
開催名:AbemaTV Presents DEEP JEWELS 22
日時:2018年12月1日(土)18:00開場 19:00開始
場所: 新宿FACE DEEP

JEWELSアトム級5分3R タイトルマッチ
黒部三奈(MASTER JAPAN)VS 前澤智(リバーサル立川ALPHA)

abeamTV 放送予約
https://abe.ma/2PSNOmJ

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青木 真也

プロ格闘技選手。1983年静岡県生まれ。修斗ミドル級チャンピオン。DREAM、ONEライト級チャンピオン。格闘技選手としての活動だけでなく、執筆、プロレス、講演など活動中。格闘小作農として地道に活動しています。著書に『ストロ...

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