愛すことで生きる力が湧いてくる
辛く苦しいこの世界。人はひとりでは闘えない。人には人が必要だと思う。生き抜くために懸命に目一杯人を愛そう。愛すことで生きる力が湧いてくる。
失恋をしたり、家庭を壊したりすると、ネガティブな気持ちになるものです。結婚はもちろんのこと、恋愛ですら食傷気味になるし、「もう恋なんてしない」のような状況になります。
失恋、離婚、別居。別れがつくものはいろいろとあります。僕は今ひとりで暮らしていますが、時間を巻き戻して、またあの冷たい家に戻るかと言われれば、首を傾げてしまうし、孤独もあるけれども今の生活を選択するでしょう。
■別れのダメージから回復するのは大変
しかし、離別のダメージは大きいです。職業柄、敗戦から立ち上がることには慣れているけれども、人との別れについては、立ち上がることがなかなかできないでいました。
辛い思いも面倒な思いもしたくないから、ひとりで生きて、極力負荷を減らして、自分の熱中できることに人生を費やしていくのだと考えていました。人は何かを失ったり、大きな敗戦をしたときに極端になります。
そんな極端さを修正してくれるのが恋人だったり、家族だったり、仲間の存在であると思っていますが、適切なタイミングで横に誰かがいるとも限りません。自分自身が外からの声を素直に聞き入れられないときもあり、簡単な話ではないです。
もしも近くにいる人が、自分で自分を追い込みすぎていたら、そっと声をかけてあげてほしい。それで救われるものだし、僕はそのおかげで今、息ができています。
■好きな人がいることは、生きる力の一部になる
余命宣告をされて、闘病している女性の友人がいます。治療や検査のたびに死ぬ覚悟をして、まだ生きていたと連絡をくれます。
僕の試合を応援してくれて、また見れた、また見たい、いつまで見れるかなと、うれしくなるけれど辛くて、彼女がいなくなるかもしれない現実から、目を背けたくなるような連絡をくれます。
毎回、連絡が来るたびに元気でいることに安堵するし、僕もがんばらねばいけないと気持ちを引き締められます。
僕も必死で生きているつもりだけれども、彼女の必死さに比べたら、必死なつもりのレベルになってしまうと思っています。必死さの違いで僕が見える景色とは、段違いの景色を見ていると思うし、彼女が発する言葉は強さと重さを兼ね備えています。
試合の敗戦もあって落ち込み気味の僕に、彼女が「人を好きになるのは生きる力」だとメッセージをくれました。彼女も恋をしている。全力で恋をしているし、互いに想い合って、互いに生きるために、裏も表もなく恋をしています。
そんな彼女の言葉を聞いて、ああ確かにと膝を打ちました。僕にとって、人を好きになることが生きるすべての力ではないけれども、生きる力の一部にはなるし、持続性には疑問符がつくけれども、火力が強いです。
■大事に想える人がいると、強く生きていけると思う
ああ。確かにそうだ。立ち上がるとき。立ち向かうときにはいつも女性がいました。格好つけずに言おう。人には人が必要なのだと思います。
僕も大一番に向かう前。宿舎の部屋で、あなたは誰よりも強いと互いに言い聞かせ合うように、抱き合って闘いの場に向かう。格闘する競技の中で一番薄い手袋のようなグローブをつけて、殴り合い、首を絞め、関節を極める、究極の闘いに向かう中で、人は大事な人にすがるものだと思います。
非日常の中でも過激なものに立ち向かうときだからこそ、そこに人の真実があると思っています。ここまでのキャリアの中で何度も、いや毎回と言っていいほどに追い詰められて、逃げ出そうと思ってやってきたけれど、それでもやってこられたのはそこに人がいたからです。当たり前だけれども人はひとりでは闘えない。
人には人が必要さ。情けないほどに弱くて脆いのが男だと思うし、その弱さを隠そうと虚勢を張ることで強くなるものです。強くあるために大事に想える人が必要なのだと思います。
生きていくのは辛く苦しいことです。生きていくために懸命に目一杯人を愛そう。愛すことで生きる力が湧いてくる。おれたちはファミリーだ。
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