他人のことなんてわからない、が前提
相手のことなんてわからない。そう観念するようになったら、生きやすくなった。相手にわかってもらおうと期待するのではなく、「わからないことを前提」に、人それぞれ価値観が違うことを認めて、共存していけばいいと思う。
「人それぞれ価値観は違うもの」という考え方が、今では当たり前になってきたけれど、価値観の違いをお互いに尊重することができているかといえば、それはそれで疑問符がつくなと思っている。
自分の周りで起こる小競り合いの大半が、価値観の違いからきているし、夫婦やカップルはもちろんのこと、親子でさえも価値観の相違が起こるのであって、その都度価値観を擦り合わせようとしたら気が遠くなる。
今までも多様な価値観が存在していたが、SNSが発達したことで多様な価値観が可視化されるようになったのか、多様性が増してさまざまな価値観が出てきたのか――これはどちらもいえることで、どちらかの理由にすることもできないのだけれども、これまで以上に多様な価値観が世に出てきているのは事実だと思う。
金銭的な価値観や恋愛観、結婚観などは皆が違うし、成り立ってさえいれば、違っていてもいいと思っている。1億総中流的な皆がある程度の枠の中にいて、ある程度の価値観を共有していたことがむしろ異常なことであったように思っている。
■恋愛の“流派”は一人ひとり違う
わりと身近にある、わかりやすい価値観の相違でいうと「恋愛観」の違いがわかりやすい。“流派”は一人ひとり異なるからだ。
付き合う基準ひとつとっても違うし、セックスの位置付けもまた違って、それを巡る面倒な話題はそこら中に転がっている。たとえば、お互い合意の上でセックスをしただけなのに付き合っていると勘違いされる。「一度セックスをしたのだから付き合ってよ」と暗にいわれた。そんな経験がある人もいると思う。
僕の格闘技仲間が「セックスは握手」と表現していた。
彼の価値観も理解はできるし、同意できる部分もある。ただ、表立って同意することで冷たい視線を浴びることもわかっているので、大手を振って同意できないのが現実でもある(極力揉め事を減らして、楽しく平和に生きていきたいと心から思っているから)。
■わからないことを前提に生きる
人それぞれ価値観が違う中でどう生きていくのか。価値観を擦り合わせていくのか、価値観が違うことを観念して共存してくのか。
夫婦関係や恋愛関係を見ていても思うし、実際に経験したら余計に思うのだけれども、価値観をある程度同じものにしようとする向きが強いように思う。僕はこれがストレスだし、これが間違いのひとつだとも思っていて、価値観が違うことを認めてお互いに共存していけばいいと思っている。
これは僕自身の反省でもあって、相手のことがわからないと観念していれば家庭だって上手くいったかもしれないし、その他の人間関係でもこの要素は多分にあると思っている。相手にわかってもらおうと期待するよりも、わからないことを前提に互いに人生を生きて、共有するものは共有すればいいのだと思っている。
共有というと、なんらかの人間関係を築くとき、相手を独占しようとする気持ちがネガティブに働くことが多いように思っている。
相手に完璧を求めるときも、これまた人間関係の構築が難しくなる。人間は完璧ではないし、欠けているのが個性だし、面白味が出るのだから。
■「ポリアモリー的思想」には共感する
何にでも表と裏があるのだし、相手の裏まで見ようとすることにはデメリットが多いように感じる。相手のすべてを自分のものにしようと、嫉妬に燃えて全力を傾けるのはどこにでもある話だ。
自分と相手が一緒にいるときの時間が良いものであればいいし、ひとりに対しての愛情が100だとして、ふたりに100ずつ注げるのだとしたら、それはそれでいいように思ってしまう僕がいる。
実際その状況になったときに、どう嫉妬心が生まれてどんな判断をして、どう行動するかはわからないのだけれども、理屈では成り立つように感じている。僕はポリアモリーではないのだけれども、ポリアモリー的な思想には共感する部分がある。
多様な価値観。さまざまな人。一見、生きやすい社会のようで、生き難い側面も多分にあると思うのだけれども、その中でどう楽しく幸せに生きていくのか。
皆が試行錯誤の連続で時代の転換期だからこそ、定まっていない大変さはある。その中でどうやって生きていくのか。自分の足で立って、目の前にあるものを懸命に愛して生きていこう。
俺たちはファミリーだ。
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