東京で消耗した大人たちへ
息苦しいことの多い世の中。だけど、その枠の中で自由に生きて、生存していこう。生きるとは、大きな枠の中で好きにするゲームみたいなものだ。
独居中年として東京で闘う生活は男女問わず、息切れすることがあるのではないか。
若い時分は独身生活が当たり前だし、勢いと無知で大半のことは乗り越えることができるし、気が迷う頻度も歳をとった今よりも多い。勢いで結婚しようと思い、勢いで会社を辞めたりもする。振り返ると、「あれは勢いだったな……」と思うことは少なくないんじゃないか。
結果がどう出るかは横に置いておいて、僕はどちらも経験したし、それはそれで後悔もしていないし、仕方がないと思っている。勢いがないとできない決断は存在するし、考えれば考えるほど決断はできないのかもしれない。迷わず行けよ。
独居中年として東京で暮らしていると、家事に対する苦労もしないし、それなりに楽しく暮らすことができる。仕事はハードだけれども、刺激的だし、それなりに手応えを掴み始める時期なのだと思う。
僕の場合、同級生の友人が誰もが知っているような広告を手がけたり、また違う友人は参院選に当選したりして、持ち場持ち場で皆が頑張って刺激を与え合う関係性もできてきたりする。楽しくも辛い刺激的な生活が送れていると思う。
■東京は闘う場所。だから息切れする
ただ、東京で働き、暮らしていくことに息切れを感じることも事実。
特に地方出身者である自分にとって、よりそれを強く感じるし、東京が地方出身者の街なのだとすれば、多くの人が息切れを感じているのかもしれない。東京は刺激的で魅力のある街だけれども、闘うための場所だし、いつまで経っても消えないヨソ者感がある。
18歳で東京に出てきたから、36歳の今は地元で暮らした期間と同じだけ東京にいるはずなのに、いつまで経ってもヨソ者な感じは抜け切らない。東京に夢と覚悟を持って出てきたはずなのに、いつの間にか東京の渦に巻き込まれて、均一化した駒のひとつになってしまうケースは多々ある。
東京で暮らしていくことで疲れてしまう要素は絶対にある。仕事にもよるとは思うのだけれども、切った張ったを生業にする格闘技選手を仕事にしていたら、余計にそうだ。
格闘技選手に限らず必死に働いていたら、消耗しないのは嘘だと思う。「まだ東京で消耗してるの?」なんて言葉があったけれども、それはそれで当たっている部分は当然ある。
■癒やされる場所への脱出は自然
消耗した結果、脱出したいと考えるのは当然の流れ。
7月はスペインに10日間出かけて、そのほかにも地方に行くようにして、月の約半分を東京以外で生活をしてみた。旅行や出張なので実際に多拠点生活なわけでもないのだけれども、それなりにリラックスできて、東京という戦場で疲れた心身を癒すひとつの機会になったと思っている。
旅行をしつつ、海外や地方をぶらぶらするなかで、実家のある静岡での生活が一番リラックスできたように思う。18歳まで育った環境で少ないながらも知人がいて、土地勘もあって、自分のアイデンティティとして残っているから、空気を吸うだけで自然と癒されるのだと思っている。
人によっては地元ではなく、学生時代を過ごした街なのかもしれないし、旅行で立ち寄った街なのかもしれないけれども、人には空気を吸うだけで癒される場所があると思っている。
幸いなことに、僕の仕事は自分で調整がきくので、東京に平日だけ滞在して、週末は静岡で生活することも可能だ。そこで気になるのが、家を持つことのコストと手間の両面なのだけれども、近年はシェアサービスやOYOやHafHなどの住まいに関するサービスが充実してきたことで、案外早く簡単に解決できるように感じている。
7月末から1カ月、OYOで新宿に家を借りた。家具家電がついていて、リュックひとつで引っ越せる手軽さ。それも魅力のひとつだけど、もしも合わなかったときには、すぐに引っ越せるのもいい。隣人問題などでストレスを抱えるのは予想以上にしんどいもの。使い方は人それぞれで、トレーニングキャンプ用に借りてもいいし、1カ月違う家に住む感覚でもいい。
「選択肢の多い自由で豊かな社会」とは、参議院議員であるおときた駿さんの演説の言葉なのだけれども、人間関係にしても、家族にしても、働き方にしても、住まいにしても、選択肢は多様にあっていいと思うし、自由な形を示していくことが、表に出る仕事をする者の責任だと思っている。
息苦しいことの多い世の中のように感じることもあるけれども、その枠の中で自由に生きて、生存していこう。生きるとは、大きな枠の中で好きにするゲームなのだから。
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