1. DRESS [ドレス]トップ
  2. ライフスタイル
  3. 家族じゃなくて“ファミリー“と生きていく。家庭を壊した僕が決めたこと

家族じゃなくて“ファミリー“と生きていく。家庭を壊した僕が決めたこと

Share

ある日、家族が出ていった。ひとりになった僕は、ひとり暮らしを始めた。交際していた頃に妻がプレゼントしてくれて、結婚して家族と暮らしていた日々、毎日使い続けていたキーケース。もはや僕の身体の一部みたいになっていたそれを手放すときが来た。

家族じゃなくて“ファミリー“と生きていく。家庭を壊した僕が決めたこと

何年前から使っているのかわからないキーケースがある。

独身時代、のちに結婚することになる女性からもらったCHUMSのもの。誕生日プレゼントだったのか、クリスマスプレゼントだったのか。記憶が定かではないのだけれども、プレゼントでもらった事実だけは覚えている。

独身時代から、結婚し家庭を持ち、元号が変わろうとする今まで愛用してきたキーケース。愛用というよりも、身体の一部と書いたほうがしっくりくるとさえ思う。

独身時代のギリギリ東京23区にあったアパートから、結婚して家族が増えて中野坂上、練馬、今のひとりで暮らす家と鍵を付け替えてきた。いいときも悪いときも、つらいときも苦しいときも一緒に過ごしてきたキーケース。

■家族と暮らした家で、ひとりになった日

このあたりで、今の僕の状況を説明しようと思う。

僕は今、家族とは住まず、ひとり暮らしをしている。昨年、家族が「家を出て行く」と宣言して家を出て行った。家族の引越し当日に立ち会うのは、自分を保てる自信がなかったので、静岡にある実家に帰って、家族(父母など)と過ごしていた。

自分の作った家族が出て行く日に、家族のところに行くのは、寂しさとか漠然とした恐怖があったのだと思うし、家族の重要性を表しているのかなと今となっては思う。

すべての家財道具がなくなった部屋を見たときの喪失感は今も強く覚えている。ドラマで見たり、人の話は聞いたりしていたけれども、実際に自分が体験することになるとは思わなかったし、体験してみるとそれは堪えるものだ。

もしも周りにそんな体験をしている人がいたら、優しい言葉をかけてあげてほしい。それ以来、家族に出て行かれたとか、離婚した人の話を聞くと、自分にできることはないかと考えるようにしている。


しばらくは何もない家に住んでいたのだけれども、2階を使わずに居間に布団だけ置く生活は心身共に不健康で、家賃という名の無駄なコストだけはかさむから、2018年末に今の家に引っ越すことにした。

引っ越すときに、鍵を返すときのなんとも言えない気持ちは、いつまで経っても文字にして表現することができないと思う。そのときに仕事が詰まっていたことは幸いで、仕事や格闘技の練習をすることで気が紛れ、さみしくなかったように思う。

ただ、キーケースを手に取る度に、毎回小さな思い出が頭のなかに浮かんで、気持ちが揺れ動いた。家族と一緒に住んでいた家の鍵を開けていたときのこと、子どもの顔なんかもよぎる。このままこれを使い続けていると、自分の感情がどう動かされるのか不安になったことはあった。

2018年末にAbemaTVで放送された『格闘代理戦争』の収録で、僕が推薦した選手「古瀬美月」が敗れたとき、感情を抑えられなくて泣きじゃくったのは、私生活がエモーショナルな状態に入っていた影響もあるんだと思う。

格闘技選手である僕の作るものは、自分が傷つけば傷つくほど、失えば失うほどに磨き上げられる。僕にとって優先順位のトップは「青木真也が高みに上ること」なのは揺るがない事実だから、それはそれでいいのだと思っているし、今更だけど家庭に向かない人間だと思っている。

すごく久しぶりにひとり暮らしに戻って、子どもにも会えないでいるのが今の状況だ。

■頭ではわかっていても、受け入れるのはつらい

僕は妻が何を考えているかわからない。妻も僕が何を考えているかわからないのだと思う。

それは恋愛の勢いのまま結婚してしまったこともあるし、付き合っていた頃からお互いの意見を交換することもなく、お互いに理解をしようとする習慣が組み込まれていなかったように思っている。

「これは僕の仕事で、これはあなたの仕事」「これはあなたの仕事だから僕はやらない」。そういうことでのトラブルが多かった。毎回、僕が理屈で攻めるの繰り返しだ。

妻は僕に家事育児の大変さを理解してほしかったのだと思う。頭ではそれらがとてもハードなことだと理解していても、実生活で「理解している」と示せるかはまた別な話だろうし、当時の僕は「理解して何か解決するの?」と答えたと思うんだけどね。


あの頃は子どもがいて、不安定な仕事をしていることもあって、とにかくお金を稼がないといけないと思っていたし、自分は外でお金を稼いでくればいいと思っていたのだけれども、結婚生活、人間関係はそんな単純なものではない。そこはこれからの人生のためにも反省している部分だ。

極めて現代的な感覚と昭和の男が混在しているから、生きにくいったらありゃしない。

お互いのことを理解できなければ、距離は広がっていく一方だ。

子どものことを考えたら、距離を置くという結論が適切なのか? と思うのだけれども、僕がいることで面倒なことが多いのであればそれはそれで仕方がないし、合理的に考えたらそのほうがいいのでしょう。理解はしている。頭では。

■自分のモノサシで、人生を豊かに、幸せにしたい

結婚生活、結婚制度で多くの人が、男女問わず悩んでいると思っている。

そもそも結婚制度は人が社会を維持するために作ったもので、現代に合っているのかといえば、僕は疑問に思う。幸せになるための結婚であるはずなのに、結婚することで悩んでいるし、結婚しなくてはと社会の圧力に悩む人も多数存在する。

1年後の自分がどうなっているのかわからないのに、1年後もその人を愛していることができるかは僕にはわからない。いろいろな経験をしたからこそ、盲目的に「一生、愛します」とは言えないし、35年の住宅ローンを組む感覚もよくわからない。


豊かになる、幸せになる。これが人生の目的であると思うのだ。結婚が目的ではない。

豊かになる、幸せになることを大事にしながら、個々が自分の形を持って生きていけばいいと思うようになった。

僕はことあるごとに「オレたちはファミリーだ」と言っている。ツイッターやコラムなんかに度々書いている。家庭を壊して思ったのは家族とか夫婦関係にある人に限らず、自分にとって大事な人がいたら助ければいいし、普段は個人プレーでも困ったときに皆が助け合って生きていける関係がいいなということ。

僕にはそんなファミリーが何人もいる。目的を大事にして、手段は複数あっていい。皆が笑える幸せな社会ができたらそれでいいと思っている。


僕は自分が幸せになることを目的に、新しい時代も生きていく。
元号が変わっても、自分のモノサシは変わらない。幸せは主観にしか存在しない。

平成が終わるのに理由をつけて、想い出の詰まったキーケースを手放そうと思う。
新しいキーケースはファミリーの宇野薫(※)がプレゼントしてくれたニューエラのキーケースだ。

オレたちはファミリーだ。

※1975年生まれの格闘技選手。UNO DOJO ヘッドトレーナー、UCS & ONEHUNDRED ATHLETIC ディレクター兼アドバイザー。

Photo/池田博美

4月特集「決別のときじゃない?」

Share

青木 真也

プロ格闘技選手。1983年静岡県生まれ。修斗ミドル級チャンピオン。DREAM、ONEライト級チャンピオン。格闘技選手としての活動だけでなく、執筆、プロレス、講演など活動中。格闘小作農として地道に活動しています。幻冬舎より『空...

関連するキーワード

関連記事

Latest Article