女の幸せに、クリスマスは邪魔なだけ【植村絵里】
恋人や夫の有無を世間から問われている気がしてしまうイベントのひとつ、クリスマス。でも、彼女や妻、恋人といった役割がすべてじゃない。自分は自分という役割をやりきるために生きている。自立と自由を自分の手で獲得する人が、役割にとらわれず、周りも自分も軽やかにハッピーに生きる人生を手に入れるのだと思います。
クリスマスにバレンタイン、誕生日――。普通に日本で暮らしていると、無意識のうちにパートナーの有無を世間から問われている気がしてしまう三大イベント。
でも、そもそもクリスマスはキリストの生誕祭で、キリスト教圏では家族で静かに過ごす日。
バレンタインは年末年始の大バザール後の閑散とした2月の経済を盛り上げるために、歴史上から「愛を象徴する」ちょうどいい人物をピックアップして創り上げられた商業目的の日。
さらに、誕生日をお祝いしてもらうのは日本くらいで、海外では誕生日の本人がホストとなって日頃お世話になっている友人や関係者を呼んで感謝を伝える日。
■可能性に賭けたいなら、行動しないと始まらない
なぜにここまで、これらのイベントが恋人と結びついてしまったのか、そんなことを考えながらたまたまスマホを見ていたら、「クリスマスに彼が指輪をプレゼントしてくれる可能性」と「意中の彼がクリスマスを自分と過ごしたいと思っている可能性」を占うタロットゲームがありました。
そこでピンと思ったのです。そう、私たちは、この三大イベントに託された「可能性」に賭けているんだと。
そろそろ付き合って2年目だし、今年のクリスマスには彼からプロポーズがあるかもしれない……。気になっている彼とクリスマスを一緒に過ごせたら付き合えるかもしれない……。
という可能性に。
可能性に賭けるという言葉は私も大好き。でも、どちらかというと、私の中では、「人事を尽くして天命を待つ」という意味合いが強くて、祈る前にまず動く。
自分の中で思いつく限りのことをひとつずつ行動に起こすこと。その上で、最後は時の流れや運にお任せするという感じ。
何よりも重要視しているのは、「Think Global, Act Local」。大きな展望を胸に抱きつつも、今日、今、目の前の小さなことから取りかかることです。
行動を起こすというのは、自分の外の世界に何かしらの刺激という名の摩擦を起こすこと。この摩擦は周り回って、必ず世の中に変化をもたらす。
これは、「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす」という言葉で有名な物体の運動の法則「バタフライ効果」でも証明されていることです。
つまり、可能性に賭けるためにはまずもって行動が必須なのに、自分の人生を他人の定めた365日の数日しかない日に賭けるなんて、与えられた大切な命を他者に委ね、責任放棄することと同じようなもの。
■私たちは「自分という役」をやりきるために生きている
現在恋人がいても、結婚していても、子どもがいても、そのすべてはあなたという人間のアイデンティティにはならないし、そういう状況の他人を羨ましく思う必要なんてまったくありません。
なぜなら、傍から見て羨ましく見えるのは、彼女、妻、母という「役割」だけど、これは女性の人生におけるほんの一時的な役割でしかなくて、それはあなた自身を規定するものにはならない。私たちは自分という役をやりきるために生まれてきたのだから。
世の中には、「自分の人生を生きる」という最も簡単で最も難しいお題から目を背けたい人のために、ありとあらゆるアイデンティティの置き換えが用意されています。
彼から愛され続ける彼女になるための料理教室や、子どもをいい大学に入れるための母親向け家庭教育など、それさえがんばっていれば自分の居場所が確保できる錯覚を持たせてくれるもの。
でもこれらは、本来の自分の人生の目的ではないから、尽くす対象となる彼や夫、子どもを縛り付け、苦しめる結果になってしまうケースもあります。
■人生を自分で責任を持って、選択し、切り拓いていく女性たち
先日読んだ書籍『言ってはいけない - 残酷すぎる真実』の中に、子育てや教育は子どもの成長に関係ない、と書かれていました。
例えば、家庭環境が子どもに影響すると母親は信じているから、躾を厳しくがんばるわけですが、実は、家庭環境が子どもの認知能力に影響を与えるのは、子どもが親の言葉を真似る言語性知能だけ。
性格や人格などが多少遺伝するものの、家庭環境の寄与度はゼロで、非家庭環境、つまり子どもの外の世界との関係で形作られるという話。
早期幼児教育に時間とお金、体力を注ぐ母親にそれを言うと残酷ですが、これが現代の科学で証明されている真実なのです。その説を信じるも信じないも、人それぞれではありますが。
(補足:だからといって、「親が無力だ」というのは間違いだとも書かれています。詳しくは本を読んでみてくださいね)
では、私たちは獲得できる「役割」に甘んじず、どのように生きていけばいいのか。最近読んだ本の中で出逢ったふたりの女性の生き方にそのヒントがありました。
ひとりは、弓シャローさんという現在79歳、在仏51年のデザイナー。彼女の著書『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』の中で、20代前半のときの結婚未遂事件の話があります。
彼女から婚約破棄を申し出るのですが、その理由がすごい。婚約中に、将来義理のお父さまとなる方にゴージャスなマンションを1棟見せられて、「結婚したら、このマンションから毎月入る家賃はふたりのものだよ」と言われたとたんに、すーっと冷めた。
「自分の前に広がる1本の道が見えてしまった気がしたのです。将来を確約された男性と、何ひとつ不自由ない暮らしをするのがとてつもなくつまらなく思えました。自分の未来が見えてしまったような気がして」と書かれていました。
■自立と自由を獲得する行動力を持ちたい
もうひとりは、病院の待合室で読んだ雑誌『GOLD』で、匿名でインタビューを受けていた女性。20代の当時遊んでいたボーイフレンドは財閥系の超ボンボンお坊ちゃま。バッグはグッチ、スーツはアルマーニ、車はフェラーリという絵に描いたようなバブリー男。
この男性との間に子どもができたとわかったとき、彼女の取った行動がすごい。彼に妊娠の報告をしたら、「どうしよう、なんて親に言おう」と予想通りの弱気な態度だったから、「大丈夫。心配しないで。私はひとりで産むから」と言い放ち、シングルマザーの道を選んだといいます。
いい歳してまで親のスネをかじり、自分のことさえ決断できない未熟な男に、自分の人生を捧げるつもりはないと。「自分の人生は自分で責任を持って選択して切り拓く」と書かれていました。
方や家賃収入、方や実家の財産で、誰もが夢を見る「一生遊んで暮らせる人生」、いわゆる超玉の輿を目の前に差し出されて、断れる女性がどれほどいるだろうか。
でも、私はこのふたりの強い意志と潔い生き方に触れて、「自立と自由」を獲得する行動力というものがわかった気がします。
周りも自分も軽やかにハッピーに生きる人生を可能にする「可能性に賭ける」というのはこういうこと。イベントの日に人生が一転するようなサプライズに賭けることとはわけが違うのです。
「女の幸せに、クリスマスは邪魔なだけ」
そう胸を張って言えるようになったとき、日頃の行いがバタフライ効果となって、なんでもない日にサプライズギフトが届く。それが目覚めた瞬間から今日という日が楽しみになる生き方なのだと思います。
年に数回じゃもったいない。365日、可能性に賭ける行動力を人生に取り入れよう。
■植村絵里の情報発信
ポッドキャスト:植村絵里の恋愛相談「男はみんな5歳児である」
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電子書籍:「私の離婚の理由」
内容:現代女性の新幸せ論「女性の自立とセルフラブなど21のコラム」
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