「戦略的気配り」で人の本音をデータ化、かわいがられる人になる
ブログ記事「私の離婚の理由」が爆発的にヒットし、その後出版したKindle本『私の離婚の理由』でも注目を集めた起業家・植村絵里さんの連載がスタート。自らが経営者となり、上司がいなくなった植村さんが、自分で自分を育てるために「戦略的にやっていること」は?
はじめまして。青山でエステサロンを経営する、植村絵里と申します。店舗は「植村ビル」という私と同じ苗字のついたビルの2階にあります。
■「戦略的自社ビル」の裏側
人はこれを見て「青山に自社ビルを所有するスゴい人」と想像してくれますが、これは「戦略的自社ビル」という私の戦略で、私と同じ苗字がついたビルの1フロアを借りているだけでオーナーでもなんでもありません。
「自社ビルですか?」と聞かれたら事情を説明しますが、私に事実を確認してくる人なんてほとんどいません。宅急便のお兄さんまで私がこのビルのオーナーだと勝手に思い込んでいます。
戦略的自社ビルの利点は2つあります。入れ替わりの激しいエステ業界で自社ビルを構えていると思われることは、顧客や取引先への安心感の演出に大いに役立ちます。
また、10分1000円クイックエステという奇抜な業態を掲げたこともあり、開店当初は他社からの覆面視察が多かったのですが、実家の持ちビルの1フロアでお嬢さまがおままごと感覚でやっている程度だと思われた方が気がラクというのもありました。
戦略的自社ビルというのは、競争から離れて自分のペースでお客さまとの信頼を築き、ひっそりと丁寧に事業をやらせていただくために考えた私の事業戦略なのです。
■「戦略的気配り」実践のすすめ
「戦略的◯◯」つながりで、私がもうひとつ意識的に実践していることがあります。それは、他者の本音をデータとして蓄積し、それを活用してかわいがられる人になるという「戦略的気配り」と言うものです。
28歳で起業してから、私には上司という存在がいなくなりました。自由の身を喜べたのは束の間で、ほどなく社会で私の教育に責任を持つ人がいないという恐ろしい事実に気づきました。
あるとき、仕事をご一緒させていただいた先輩女性から、取引先担当者に対する小言を聞きました。その内容は私も過去に犯したことがあるような一見些細なことで、「それはご本人にも伝えるのですか?」と質問すると、「言いませんよ。でも、次の案件では声をかけません」とお答えになり、私は笑顔で相槌を打ちながら背筋が凍る思いをしました。私はこのとき、何も指摘されないから「自分は大丈夫」と思うことは大きな間違い、ということを自覚したのです。
■人の本音は人間関係の教科書
本音は本人には直接伝えられない、これが人の気持ちを察することを難しくしている原因です。「気配り」とは先回りして他者の気持ちに配慮し、これができると「信頼できる人」という印象を植えつけることができる人間関係を円滑にする技術ですが、いくらこれを身につけようと意識しても、自分の頭で想像できる他者の気持ちは、所詮自分の想像の範囲を超えないのです。他者の本音というのは大概、自分の想像のずっと外側にあるものです。
上司のいない私にとって人の本音は、人間関係の教科書です。とくに、人を見てきた量と質が圧倒的に多い、20も30も年が上の第一線で活躍している諸先輩のそれは、明確な定義のない常識と非常識の境界線を測るものさしと言えるようなものです。
私は、いつもできるだけ人の本音が聞ける距離を確保し、その一つひとつを自分が注意されているつもりで聞き、メモに残して、自分ゴトのように深く反省し、日常の中で意識して「戦略的に気配りする」ことを自分に課しています。
■必要なのは一時的な気配りより、習慣化された気配り
知っている、わかっている、ときどきできる、意識すればいつでもできる、無意識にできる、この5段階はまったく異なるステージです。初めのうちだけ、気が利く態度ができる人はいくらでもいますが、あたりまえのことを、いつもどんなときも、どれほど親しくなっても変わらずにできる人はなかなかいません。そして、一時的に気配りができることより、習慣化していることが人の信頼を得るために何よりも大事なのです。
教養と知識を身につけるのに本を読むことは大事ですが、本で学べることには限界があります。しかし、謙虚に人と向き合い、外界から語りかけられるさまざまな人の本音を自分ゴトとして受け入れると、誰もが自分にとって貴重な情報や知恵を教えてくれることに気づきます。
一人で生きていくなら、気配りなんて面倒くさいものは必要ありません。でも、人生の結果は、自分の【時間×エネルギー】と他者の【時間×エネルギー】の掛け算の総和です。つまり、他者の資源をどれだけ自分に掛け算してもらえるかで結果が決まります。
■今の態度が未来の自分を作る
そのためにどれだけ他者からかわいがられ、目をかけてもらえる人に自分を育てるかが人生で最も大事なのです。戦略的気配りは、他者の本音を理解し、先回りして人の喜ぶことを実践して、相手の懐に入るために、上司がいない私が編み出した自分で自分を育てる人生戦略なのです。
はじめは何でも戦略的でいいのです。気配りもはじめは人にかわいがられるための戦略でも、そのようにいつも振る舞っていれば、時間と共に自然に身につき、自分のあり方が変わっていきます。人の印象に過去も育ちも関係ありません。今のあなたの態度が未来のあなた自身を作るのです。
さて、あなたはどんな戦略を実践しますか?
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