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戸田菜穂連載『横顔の女』#14

戸田菜穂連載『横顔の女』#14

京都通信2

無事に時代劇の撮影も終わり、東京に戻ってきた。
いやはや、私の心はすっかり京都に残っている。
本当に、毎度影響受けやすい自分に、笑ってしまう。

祇園によくお世話になる知り合いがいるので、ただいま〜と、入っていけるお店もある。親戚みたいな気持ちがして、ホッとする。

祇園白川や縄手、三条あたりを休みの日に歩いた。
おそらくは芸者さん、色白で結い上げたうなじの見惚れるほど綺麗な人がいた。その人は衣擦れの音をさせて石畳の小径を歩いて行く。お太鼓の帯も右下がりで、着物の裾もかなりタイトに着付けていて、粋な人だなあと感心した。

違う日にも芸者さんを見かけたが、その人もきちんと髪を結い上げ、うなじが際立って美しかった。磨き上げるとはこのことかと知った。
ふたりともどこかへ向かっていて、私の目の前からパッと消えてしまった。余計に、こちらは余韻が濃く残る。

先日、京マチ子さんの『女系家族』という映画を拝見したのだが、伏し目がちの顔、流し目の顔、企んだ顔、焦りの顔、復讐の顔、ラストのつきものが落ちたような顔……。
女の顔とは、こんなにもさまざまな場面で、めくるめく美しいものなのだと、あらためて気付いた。
顔形よりも、感受性の鋭さを隠そうとしても滲み出る、そんな顔が、いかに魅力的かと。

前に読んだ雑誌に、「大人の女とは、ミステリアスなイメージ」という内容があった。そういえば私も若い頃、大人というのは、ミステリアスで、自信に満ち溢れた人だと思っていた。
それは、付け焼き刃ではなく、積みあげた年輪みたいなものであり、確かなものなのだ。揺るがない魅力なのだ。
なーんてことを、すれ違ったふたりの女性は、涼やかに私に考えさせてくれた。

続きはまた秋の日の夕暮れに、静かに考えてみよう。私は自分がなりたい大人になれているかということを。

戸田菜穂

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戸田菜穂

1974年生まれ、広島県出身。1990年、第15回ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞しデビュー。93年放送のNHK 連続テレビ小説「ええにょぼ」で主演を務め、以降、テレビ・映画などで活躍。

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