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戸田菜穂連載『横顔の女』#12

戸田菜穂連載『横顔の女』#12

「文房具屋さん」


 みなさま文房具はお好きですか?

私、実は大大大好きで、しょっちゅう娘たちと駅前の文房具店に立ち寄っている。
子供がすみっこぐらしのえんぴつや、スヌーピーの消しゴムを選ぶ真剣なまなざしを見ていると、自分の小学生の頃とオーバーラップしてくる。

 母も文房具が好きで、和紙の封筒から韓国の封筒、ローマで探し求めたものまで大切に持っている。ローマのは「Pineider」という文具店で購入したもので、封筒のロの部分をはさんでグッと押すと、“Naho Toda”と優雅な筆記体の空押しができる。そんな器具もお土産に買ってきてくれた。

母はとても筆まめで、よくお礼状を書いている横顔を見て育った。広島からの荷物には必ず一言添えてある。私もよく手紙を送る。 いつの日か、万年筆ですらすらっと上手な字で気の利いた手紙が書けたらなぁと、
細筆の書道でも習ってみたいと思っている。墨の香りも好き。
硯で墨をする時間も好き。キッチンで洗えば筆を洗うのもラク。
シールもいっぱい持っている。大学時代からのコレクション。誕生日用からクリスマス、
お正月、ハートもいろいろ。 ポチ袋も日本全国、かわいいのを見つけたら買っておく。それらを入れた箱に文香を入れてあるから、お香のよい香りもする。

お懐紙も買っておく。ちょっと和菓子を出したり、おつまみに敷いたら、上品だし、清潔感があってよく使う。
 先日、京都の俵屋さんに両親とうかがったのだが、黒い三方の上に半紙くらいの紙を敷いて、京の夏野菜が飾ってあった。七月七日のあしらいなのかしら。とっても涼しげで
恭(うやうや)しく素敵だった。
 こういう風にす~ぐ影響を受けるものだから、買い物が好きで困ってしまう。
あれもこれも思い出深く捨てられない。本棚の上二段は、愛しの文房具が埋まっている。

 そうそう、娘の言葉でド感激した。
 眠る前のお祈りに続きがあるらしいのだ。
心の中で言うそうなのだが、
「今日も一日ありがとうございました。明日もよろしくお願いします。文房具さん、おやすみなさい。ほったらかしにしてるお人形さんたちもおやすみなさい」

文房具愛は、遺伝する!!

戸田菜穂

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#12「文房具さん

戸田菜穂

1974年生まれ、広島県出身。1990年、第15回ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞しデビュー。93年放送のNHK 連続テレビ小説「ええにょぼ」で主演を務め、以降、テレビ・映画などで活躍。

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