『横顔の女』バックナンバー
#1「窓」 #2「台所」 #3「お裁縫」 #4「お鮨屋さん」 #5「お化粧」 #6「スキー」#7「旅」
#8「コーヒー」
#9「和室」
#10「今を生きる今くん」
#11「叔母のワイン煮」
#12「文房具さん」
#13「物思いのススメ」
#14「京都通信2」
#15「ホームパーティーのすすめ」
#16「最終回」
12月、さて、どんな風に過ごそうか。私はクリスマスやお正月が大好き!!
11月末から、早々ともみの木を買い、娘と台車で家に運び、飾り付けもして、夜はツリーを点灯して楽しんでいる。
この頃はどっしりとした本物のキャンドルにも火を灯してみたり。
夕方から夜に変わる景色が好きで、前からどうしてもペンダントライトをダイニングテーブルの上に取り付けたかった。たまたまイケアで長いコンセント付きのシンプルな白熱電球色の小さな灯りを見つけ、自分でコードを天井に這わせ、テーブルの上に吊るしてみたら、これがまあ北欧風でいい感じ!! 暮れなずむ窓の傍らでポッとともり、とてもいい仕事をしてくれる。ひとりの時間に丁度いい静かな灯り。
お正月の準備も少しずつ進めている。まずは古道具屋さんで干支のうさぎの素朴な香入れを見つけ、それを和室にひとつ飾るつもり。
雑貨屋さんでは、敷き紙や、お正月用のお箸を買っておく。毎年おせちを作るから、そのときは特別な時間にしたくて、箸置きや徳利、お椀もすべてお正月用のものにする。疲れるけれど、この手間がいいなあと、気に入っている。
そんな楽しいことを考えつつも、胸の奥では今年亡くした大切な人たち、その別れの寂しさから抜け出せずにいる。24歳のときから句会でお世話になったおふたり。私の人生の味方になってくださっていたおふたりの不在。句会に行けば必ず会えていたおふたりに、二度と会えない。
ふっといなくなって、取り残されたような心細さ。
歳を重ねるって、人と別れることかと思ってしまう。
あれほど粋で洒脱で、スタイルを持ち、俳句も上手く、冷静で、昭和の香り漂うダンディなおふたり。
おふたりはもうこの夕焼けも、真っ赤な紅葉も月も、ジャズも、何もかも何ひとつ感じないのだと思うと、道を歩いていて泣けてくる。でも、私は俳句をやっていて良かった。季語を通しておふたりと心を共鳴させられたし、感動し、喜びあえた時間が確かにあったのだから……。
海の見える小さな家にときどき行くのだが、そこで見る日の出は、水平線を少しずつ赤く染め、ぷっくりと海の向こうから生まれてくる。いつもその日の出に思わず手を合わせるのだが、これからは亡くなった大切にしてくださった皆さんのことを思って手を合わせようと思う。
またこうして一日を迎えられることに感謝しながら。
「横顔の女」を読んでくださりありがとうございました。
これから私は、窓の外を眺めるばかりでなく、正面を向いて、今ここにいる幸福をぎゅっと抱きしめて、生きていきたいと思います。人生は短い……同じ時代を生きる皆様のお幸せを心からお祈りいたします!!
本当にありがとうございました。
戸田菜穂