本命視される女には「菩薩力」がある 3/3
■ロンブー淳さんが今の奥様を本命に選んだ理由
先日ラジオ番組のインタビューでロンドンブーツの淳さんが、たくさんの女性との恋愛を経た結果、最終的になぜ今の奥様を選んだのかを語っていた。そこに大切なエッセンスが詰まっていたので紹介したい。
「あまりにも俺のことを全部受け止めるから、不安になっちゃって1回別れるんですよ。『この人といたら自分がダメになっちゃう』って」と振り返った。
しかし、そこから別の恋愛を繰り返していく中で、「やっぱりあの人だな。俺に合う人は」と気づいた淳さんは、「本当に自分勝手な考えですけど、もう1回戻ってくれませんか」と告げて復縁し、結婚まで至ったという。
そんな妻の人柄を淳さんは「一言でいうと菩薩」と形容し、「怒り表現がないから、揉めないんですよ。人に対して寛容」と語った。
私はこのインタビューで、淳さんの奥様を「相手をコントロールしない女性」だと推測し、そこに淳さんの本命になった理由があると推測した。
巷に出回っているモテるための知識というのは、簡単に言うと、女の目的を達成するためにいかに男を動かすか、に集約される。本命になりきれない女にとってモテるとは、わかりやすく男性に優しくされること、注目されること、大切にされること、そして結婚してくれることだと思っているから。
その中でも有名な、男を気持ちよくさせるリアクション言葉「さしすせそ」というのがある。「さすが」「知らなかった」「すごい」「センスいい」「そうなんだね」という男の承認欲求をくすぐる定型フレーズ。男を持ち上げてこちらの目的を達成するには効果てきめんだが、本心からの発言でないなら、承認欲求という人間の欲望を刺激し、ただ相手をコントロールしているにすぎない。
自分自身を知るためには、他者の存在が必要だ。周りからの反応を得なければ自分自身を知ることはできない。そのひとつの方法として「承認欲求」がある。褒めてくれる人、自分のやっていることを見てくれる人を求める。
■相手をコントロールしようとすると上手くいかない
愛されること、異性から求められることは究極の承認だ。さらに、好きな相手から注目され、褒められたり、感謝されたりすることは自分の存在意義を強く感じられる。しかし、この関係を続けていくと、 ふと恐ろしいジレンマに気づく。それは、常に行動の先にある彼氏や彼女の反応を気にしてしまうこと。
行動の基準は己ではなく、相手が握っている不自由さに気付いた途端、自分へ向けられた言動や評価、さらに相手の存在そのものが疎ましく思えてくる。特定の人間に対してではなくても、「SNS疲れ」という現象もそのひとつだ。
逆に、なにも反応がないとか全部受け入れられてしまうというのも人を不安にさせる。それが淳さんの言う「あまりにも俺のことを全部受け止めるから、不安になっちゃって1回別れるんですよ。『この人といたら自分がダメになっちゃう』って」の真意だと推測する。
続けて淳さんは、そんな妻の人柄を「一言でいうと菩薩」と形容し、「怒り表現がないから、揉めないんですよ。人に対して寛容」と語る。
そう。褒めることと同じくらい相手をコントロールするのが、怒りの感情。アドラー心理学の「嫌われる勇気」では、人は怒りを捏造し、ある目的を達成するために怒りを道具として使うのだと言っている。褒め言葉の「さしすせそ」を連発する女は、褒めるのと同じくらい怒りの感情を使い、相手を自分の思い通りに動かそうとする。
よく「怒りをどう抑えればいいですか?」と質問を受けるが、怒りは一瞬の感情だから数分心を静かにしていれば過ぎ去るもの。それでも怒りが収まらないのであれば、何かしら相手を自分の思い通りに動かしたいという目的があるはず。
冷静になって怒りの感情の奥にある、目的が明確に見えてくれば、それを言葉で説明し相手と対話によって同意を得ることがコミュニケーションである。怒りの感情がなければ相手も冷静にこちらの話を聞けるものだ。言葉で説明する手順を面倒に感じ、怒りという安直な手段で相手を屈服させることは、本命になるために克服するべき大事な課題である。
籍を入れるか入れないは別として、「本命」とは残りの人生をこの人と一緒に過ごしたいと思うときに浮かぶ人ではないだろうか。恋愛初期を経て誰かの本命となり、他人を受け入れ愛し、自分も受け入れられ愛され人間として互いに成長していくとき、そのとき側にいてほしいのは、意図的に相手をコントロールしたり挑発したりしない人。一言で表現すると、菩薩のような人なんだと思う。
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