「そこが好き! チャームポイントだよ」
10連休のリレーエッセイ企画「忘れ得ぬあの人の言葉」。かつて好きだった人から受け取った、忘れられない言葉の想い出を振り返ります。エマちゃんが今でも大切にしているのは、自分のコンプレックスを“魅力”だと思えるようにしてくれた素敵な言葉でした。
忘れ得ぬあの人の言葉、というお題をいただいたとき、真っ先に思い浮かんだ言葉があります。
それは昔好きになった男の人が言ってくれたもの。
わたしはその言葉のおかげで、自分との向き合い方について学んだ気がするのです。
優秀な学校を卒業し、若くして経営者になった彼は、身長が高く、綺麗な顔立ちで、とても素敵な人でした。
■まっすぐな彼を好きになった
出会ってすぐデートをする仲になり、最初のほうは「なんだか王子様みたいな人だなあ。でも出会ったばかりだし、彼のことをゆっくり知っていきたいな」と思っていました。
とにかくまっすぐな人で、自分に正直。「こうしたい!」と思った3秒後にはそれを実行するような人。
だから「エマちゃんとお付き合いしたい!」と告白されるのも、驚くほど早いタイミング。そのスピード感に戸惑いもありました。
でも、周囲から「彼は信頼できるし、純粋な人だよ。まっすぐすぎて変わってるけどね(笑)」なんて話を聞いて、「私が感じた通りいい人なんだ。そしたら付き合っても、いいかも……」と思ったのです。
その後は、彼が尊敬する仕事仲間や長年の親友に早々に紹介されるなど、早いうちから真剣な交際に発展したのでした。
■「エマちゃんの鼻のカタチが好き! チャームポイントだよ!」
その彼と仲良く鏡の前に並んで歯を磨き終わった後のこと。わたしは鏡を見ながら、「わたし、自分の鼻の形好きじゃないんだよね」と言いました。
そしたら彼は、「なんで? そこがいいんじゃん! エマちゃんの鼻のカタチが好き! チャームポイントだよ!」と言ってくれたんです。とにかく褒めてくれたんですよね。
「え? チャームポイントなの? これがいいの?」と再度聞いたら、改めて確信を強めたように、「うん! そこが好き! すごくかわいい!」って言ってくれたんです。
彼が特別に私の鼻が好きだったのかはわからないのですが、私がコンプレックスだと知ったからか、余計に強く「そこが好き」って言ってくれたのです。
そのとき「え? この鼻ってかわいいの?」「彼はそこも好きでいてくれてるんだ。本気で言ってるもんな」「っていうか、愛してると相手がコンプレックスに感じているようなことも、愛しく思うものなのかな。それはわたしも……わかるな……」と思ったのです。
■人の個性を受け入れ、“魅力”として捉える
彼は人を受け入れる器がとても大きくて、リベラルな人でした。出会って数回話しただけで、そう感じたのを覚えています。
彼の仕事仲間はけっこう変わっていて、クセのある人が多かったのですが、彼はメンバー一人ひとりのいいところをリスペクトしていました。
人が欠点だと思うところは「しょうがないよね、でもそれもまた強みになるかもしれないし、まったく問題なし!」と言いのける人でした。
国内外問わず、いろいろな人たちとの交流もあり、皆に親しまれてもいたから、人の個性を受け入れる天才だったと、私は今でも思っています。
そんな彼だったから、当時彼女であった私にとっても、うれしい気持ちになる言葉を言ってくれたのでしょう。
■自分の見た目との付き合いって難しい
女性に生まれるととくに、容姿について何かしら言われ続けますよね。たとえば「かわいい」「ブス」「劣化した」など、女性の見た目を形容する言葉は、少女だった頃から大人の女性になっても身近にあるような気がします。
わたしは小さい頃ひどいアトピーだったから、名前も知らないような男の子に「うわアトピー女」とか「ゾンビ〜」とか、つらいことを言われていました。
大人から「お肌がね……かわいそうね」って言われるのも、優しい言葉のようでいて、実は悲しかったかな。
「朝起きたらお肌がツルツルの女の子に生まれ変わってたりして……」なんて妄想をしたことも。
外見のことを言われた言葉って深く残りますよね。
気にすべきところでもないのに、なんだかそこが浮き出てくるかのように気になったり、気にしていなかったのにコンプレックスとなってしまったり、指摘されたところをそれとなく隠しながら日々を生きるようになったり……。
逆に、毎日のように誰かからかわいいって言われてうれしい反面、「かわいくいなきゃ」と呪縛のようなプレッシャーになって、心はざわついていたり。
そんなこんなで「見た目」とのお付き合いってなかなか難しい。どうしても自分の中だけでは完結できず、他人からの評価が加わってしまうところだから。
■「あなたのそこが好きだよ」で救われることがある
わたしは普段コンプレックスを人に言わないようにしています。だって、言ったらそのコンプレックスに注目させてしまうし、自分で再確認するようでつらいじゃない。
でもなんでかそのとき、彼にはふと言ったんですよね。そうしたら、返ってきた言葉が「そこが好きだよ」で。
彼に言って良かったですよね。こうして何年も経ったあとでも覚えているくらいうれしかったのだから。
コンプレックスに押しつぶされそうになることって少なくないと思う。でも誰かの「そこが好きだよ」で救われるかもしれない。
愛している人からの「そこが好き」って一番うれしいですよね。
逆の立場で言えば、愛する人がコンプレックスに向き合っていたり、気にしたりしていることで、その人の「健気さ」とか「完璧ななかの親しみやすさ」として愛しくなる。
だからわたしはコンプレックスって悪くないなと思ったのです。魅力になり得るんだなって。
■わたしにとっての欠点は、誰かにとって魅力や個性になる
実際、わたしの仕事でもある芸術の分野では、アーティストたちが自分のコンプレックスを原動力にして唯一無二の作品を生み出しています。
「わたしにはこれができなかったからこうするしかなかった。でもそれがわたしの強みとなった」という人たちがたくさんいるのです。
ある世界的バレエダンサーは、自分には長い手脚がなかったから、誰よりも大きく伸びやかに見える動きを身に着けて、表現力をとにかく研究した。するとそれが強みとなった。そんな例は多くあります。
すべての人が完璧だったら芸術って生まれてないんじゃないかな。
その人にとっては欠点かもしれないけど、それが周りにとっては魅力とか個性とか、その人にしか出せない味となって誰にもマネできない世界を作るんです。
欠点というものはとても大きなパワーになるので、多くのアーティストはそのクセの強い欠点を欲しがっていたりするのが面白い現象。
恵まれて不自由なく生きてきた人の方が、自分には創造性が足りない……と悩んでいたりするのです。
だからコンプレックスって魅力に昇華できるんですよね。わたしは彼のその言葉と仕事を通して学びました。
前述の彼は芸術に携わる人ではなかったのですが、そんな人から言われる「そこが好きだよ」のパワーといったら。うれしくてしばらく頭の中を反すうします。しばらくどころか何年もね(笑)。
「一生残る言葉」を言ってくれた人って尊いですよね? わたし今彼にLINEしたくなったもの(笑)。
ずっと感謝しようと思います。そして、わたしもそういう言葉を言える人になりたいと思ったのでした。
画像/Shutterstock
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小悪魔と呼ばれていた恋愛戦士も今や人妻。芸能芸術のお仕事をしています。