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「彼を好きでいること」をやめた女性は美しい

『バチェラー・ジャパン』シーズン3では、「選ばれる女vs選ばせる女」の人間模様を見ることができた。そんな中、気づいたのは、最終的に恋愛で選べるのは女性なんだということ。自ら決断し覚悟を決めた女性は強く、どんどん輝いていくのだ。

「彼を好きでいること」をやめた女性は美しい

恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』シーズン3を観た。観たくて観たわけじゃなくて、コラムの担当編集者さんからお題として勧められて、半ば嫌々観ることになり、観なくちゃといけないと思いながら2日間放置して、やっとのことで見始めたのだった。

しかし、今シーズンの終わり方を知っている人はわかると思うが、そもそもの番組主旨から大きくズレて、裏で連絡を取り合うルール違反があったり、公開前に出演者が海外旅行している姿がツィッターで拡散されたり、とにかく有料番組で有限な時間を遣って観た視聴者としては「はぁ? 何これ?」という胸くそ悪い数日間を過ごす羽目になるなんとも後味の悪いリアリティーショーだった。やるべきことが山積みな人、平和な気持ちをかき乱されたくない人は絶対に観ないことを強くおすすめする。後悔するだけだから。

ネタバレをすると、今シリーズの『バチェラー』には特別後日談があるのだ。バチェラーは最終的に残った候補女性ふたりのうちのひとり(仮にA子としよう)を選んだにも関わらずA子とは1カ月ほどで別れ、最後に自分が振った相手(仮にB子としよう)のことが忘れられないと言い出し、番組終了後に裏で連絡を取り合い、事もあろうにA子との交際期間中にB子に会いに行き、B子が自分のことを好きだと確認した上でA子との関係を終わらせ(つまり微妙に交際期間が重なっている)、現在はB子と交際2カ月目だということ。

バチェラーの浅はかさは言うまでもなくないのだが、最も腹黒いのはB子である。そのB子が現実世界でバチェラーをゲットしたという事実が、恋愛コラムを書く筆者としては今シリーズからの学びの収穫である。『バチェラー』は、B子のような美人だが地味で一見無害に見える女性がどうやって、競争率の高い男性の本命の座を射止めるのか、その心理作戦を分析するという視点でみればこれほど面白いリアリティーショーはなかった。

■「選ばれる女 vs 選ばせる女」の人間模様を見た

『バチェラー』はひとりのハイスペック男性をめぐって20人の結婚したい女性たちが「最後のひとりの結婚相手」に選ばれようと画策する婚活リアリティショーだが、恋愛において「選ばれる女vs選ばせる女」という構図を考える上で非常に示唆に富む人間模様を見せてもらった。

B子が取った戦略は、ただひとつ。前回のコラムにも書いたが「男は手が届きそうで届かない、価値のある女を求める」ことを前提に、自分を選ばせる戦略。

建前はバチェラーに気に入られようとする立場を取るが、いざふたりきりになったら好きかわからないと本心を曖昧にして男側の狩猟本能を刺激する。本来『バチェラー』という番組では、女性陣はバチェラーのことが大好きで選ばれたいのが前提で受け身(選ばれる側)として話が展開するのだが、B子はこの作戦によりひとりだけ選ばれたいのかどうかわからないという態度を取り、バチェラーの前提条件を撹乱させ、自分を選ばせるように仕向けていく。

具体的には、他の候補者はバチェラーに会えてうれしいとはしゃいで笑顔を見せるのに、ひとりだけつまらなそうな表情を浮かべたり、他の候補者は基本的に気に入られたいからバチェラーの要求を受け入れるのに、ひとりだけバチェラーの住む神戸には行きたくないと自分の希望(わがまま)を言ってみたり、好きなのかと思わせたら好きかどうかわからないと言ってみたり。こうしてバチェラーはどんどんB子の顔色を伺うようになっていく。そして、どんどんB子に気持ちを侵略されていく。

■相手の脳を刺激して快感を引き出す、恋愛の技

なぜなら、脳は相互作用に興奮するように作られているからだ。自分の存在や行動が他人に何らかの影響を与え、その反応が帰ってくることで快感を覚える。この脳の興奮を引き出すことが恋の駆け引きの正体であり、この快感が相手のことが好きという錯覚になる。これをB子は使った。

それに対して、他の女性たちはバチェラーが何をしても喜ぶ。いつも笑顔。大好きなことがわかりやすい態度。この状態はバチェラーの脳にとって刺激ゼロで面白くも気持ちよくもないのだ。番組上の義務感だけでデートをこなす感じが丸出しで、この「しなければならない」がますますバチェラーの脳の快楽を奪い、デート相手に対するバチェラーの気持ちを冷ましていく。

恋愛という究極のふたりの人間関係の継続において、脳の相互作用は特に重要だ。「君は僕がいなくても生きていける」という残酷な別れ言葉に象徴されるように、自分がいなくても飄々淡々と生きていける存在を人は愛し抜くことはできない。さらに、『バチェラー』の女性陣のように、どんな態度を取っても自分への好意がブレない、一生懸命に自分に選ばれようとする人も愛し抜くことはできない。なぜなら、結婚を恋愛の延長線上と考えている場合、どれだけ相手の脳を刺激し快感を引き出せるかが、相思相愛になるための勝負だからだ。

A子はバチェラーのご両親からの好感度が最も高く、気が利く、思いやりのある優しい女性。バチェラーも理性的に考えて結婚するには最も相応しい女性だと一度は決心したから最後のひとりに選んだ。だけど、現実でA子は捨てられる。なぜなら、本能的に選ばれる女性になるには何かが不足していた。それは、感情のブレだ。

■素晴らしい人なのに、恋愛を成就できない理由

もちろん人間だから感情はあるんだろうけど、自分の感情を押し殺してまわりの期待する空気に合わせる(A子が長女としてまた18歳からホステスとして培った)長所が、「どんな態度を取っても自分への好意がブレない人」のように感じられ、相互作用に興奮するバチェラーの脳の最終的な御眼鏡に叶わなかったのではないかと分析する。

バチェラーが自分を捨ててB子を選んだことに関しても、もっと取り乱して憤慨して暴言を吐いてもいいのに「一度好きになった相手だからどんな選択をしても尊重する」というようなことを言っていて、大人としては見習うところのある素晴らしい態度ではあるけれど、最後に恋愛を成就できない原因がここにあるのではないかと思ってしまう。

だって、脳からしたらこんな相手面白くともなんともないもの。「こんな平和な気持ちは本当の好きではないのでは? やっぱり心をかき乱したB子のことが好きなのではないか?」とバチェラーに思わせてしまったのはA子の大人すぎる態度。だってバチェラーは家族が何と言おうと自分の好きな人と結婚する、恋愛の先に結婚があるという脳(考え)の持ち主だから。

■「彼が変わらないのなら、私が彼を好きでいるのをやめました」

これまでA子とB子を引き合いに出して「選ばれる女性vs選ばせる女性」の構図をみてきたが、恋愛の始まりで女性はそもそも「選ぶ」ことはできるのか? について私の見解は、相手の男性が受け身でいる方が心地よいタイプであれば成り立つと思うが、まだまだ世の中を見ていると、「男は手が届きそうで届かない、価値のある女を求める」という狩猟本能を持つ男性の方が多いような気がする。

この状況で女性は、この人と付き合いたいとかこの人と結婚したいという標的(自分を追わせる相手)を「選ぶ」ことはできるけど、最終的にはその標的から「選ばれる女性」になるか「選ばせる女性」になるしかないような気がする。

ただ唯一、恋とか愛において女性が選べるとしたら、それを終わらすとき。

「彼が変わらないのなら、私が彼を好きでいるのをやめました」

ちょっと古い例だが、これは元横綱との離婚について告白した週刊誌での花田美恵子さんの言葉。女は「好きでいる」ことをやめられる。それに対して男は「オレのことを大好きだったこの女がまさかオレのことを嫌いになるはずがない」とタカをくくっている。だから、熟年離婚を突きつけられて泡を食う男性の多いことか。

男性にとって「好きでいるのをやめられる」という感覚は理解不能なはずだ。女性は生殖本能からひとりの男性に一定期間ロックオンすることができると同時に、それを自分の意思で解除することもできる。先述の美恵子さんの言葉を聞いて「好きをやめるという感覚わかる気がするな」と深く納得してしまった私。

いつまでも心の通じ合えない相手に対して、これだけ尽くせばいつか変わってくれるんじゃないかと淡い期待を持って生きるのは無駄だ。共感障害の男性は女性より4割も多いというデータもある。ということは、情緒的な関わりが人間関係の満足度で大事な女性にとって、ふたりの間に何か大きな問題があるわけではないが心が満たされないと、行き場のない気持ちを抱えている女性は相当多いはずだ。

だったら、相手は変わらないとあきらめた上で、いつでも私は「好きをやめられる」と思えばいい。この自由意思を行使する選択肢を自分が持っていると思えるだけで気持ちが随分と楽になると思う。

■女は「好きでいる」ことをやめられる

最後にもうひとつ『バチェラー』の話。「ローズセレモニー」という、次回に残れる女性をバチェラーが選び、その女性にバラを手渡すというバチェラーの象徴的なシーンがある。シーズン3ではこのローズセレモニーを前にして、バチェラーから終了を告げられた女性がいた。その女性は、最後の6名まで残ったが自分が選ばれるか選ばれないかわからない不安な状態を今後も続けることは精神的に耐えられないと思い、バチェラーに一か八かで不安な気持ちをぶつけてしまう。

きっと「君のことも好きだからもうちょっと頑張ろうよ」と甘い言葉を期待していたのだろうが、バチェラーは不安な気持ちなら君はもういらない、と言わんばかりにローズセレモニーの前にこの女性を見切ってしまう前代未聞の行動に出るのだ。

自分の抱える不安を男性からの確約を先に確保することで解消したい気持ちとってもわかる。だけど、女性の抱える不安を解消してくれるほど腹が決まっている男性はいないし、先の不安を増大させる能力は実は男性脳の方が高いそうだ。だから、この女性が身を以て教えてくれたように、男性に自分の不安を解消してもらおうとするのは得策ではない。

では何が不安を解消してくれるのか? 新しい恋愛に踏み込む時、この恋愛を継続するかどうか悩むとき、不安でいっぱいに決まっている。だけど、不安は他者によって解消されない。不安を解消できるのは、最後の選択は自分が握っているという感覚ではないだろうか。

女は「好きでいる」ことをやめられる。最終的に恋愛で選べるのは女性なんだと思う。そして、決断し覚悟を決めた女性ほど強い女性はいないし、この覚悟が女性をどんどん輝かせる。

バチェラーに選ばれなかった女性たちが最終話に出てくるが、なぜかみんな以前よりずっとずっと美しく輝いていたのが印象的だった。

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植村 絵里

1980年東京生まれ、聖心女子大学卒。クイックエステBeautiQ(ビュティック)創業者。 自己実現と出産育児を自由に選択でき、内面も外見も美しい女性があふれる社会作りをモットーに、28歳で起業し、日本初の女子大生ベビーシ...

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