結婚式準備中、プロデュース会社に不安を感じた瞬間【NEO花嫁の結婚式奮闘記#7】
結婚式プロデュース会社に相談を始めたのは、これはと思えるウエディングプランナーと出会えなかったから。しかし、これが波乱の幕開けだった―――。理想とする結婚式の叶え方を模索する連載「NEO花嫁の結婚式奮闘記」#7をお届けします。
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■迷った末にようやく決断!プロデュース会社に依頼
結婚式のプロデュース会社は、都心から少し離れたところにあった。早く相談したかったので、平日の夜に予約し、ひとりで行った。彼は「好きなところに決めていいよ」と言ってくれたので、ひとりでも安心して話を聞けた。
住宅街の一角に忽然とあらわれたオフィスは、最近流行りのサードウェーブ系で、かなり今っぽい。中に入ると、手前のカフェでオーダーを聞いてくれ、無料でドリンクが提供される。いかにもカフェ店員らしい爽やかな男性にココアをオーダーした後、面談用の個室に入る。
個室手前にあるエントランスには実際に結婚式で使われた装飾があしらわれ、角には高砂も置かれている。雰囲気は会社というより、海外のカフェのようだ。
担当者は30歳前後と思わしき若い女性で、コミュニケーション上手なタイプだった。言葉に勢いがあり、淀みなく話す。肩にかかる長さの茶色の髪が、元気よく揺れた。
「今回は面談にお越しいただきありがとうございます。萩原さんはどんなお式をご希望ですか?」
この質問を受けるのはもう3回目なので、自分の結婚式イメージをかなり具体的に伝えることができた。もはや暗唱できそうである。相手は少し驚いていたが、すぐに笑顔を立て直した。
「しっかり決まっていていいですね。きっとご希望に合うお式ができると思います。それでは、サービスの特徴と、実際の式の映像をお見せしますね」
このプロデュース会社の最大の特徴は「提案型の結婚式」だということ。通常の結婚式は新郎新婦側が「こうしたい」「ああしたい」と希望を伝えて、それを可能な範囲で叶えていく。しかし、ここでは新郎新婦のエピソードや人柄をヒアリングしたのち、コンセプトを提案してくれるという。
そして、そのコンセプトの具現化も徹底している。アートディレクターが入り、装飾や高砂などのデザインラフを描いて、全体のイメージを固めていく。当然、できあがる空間のクオリティは圧倒的に高い。
その分、費用の相場は500万~600万とかなり高額だが、質を重視している私にとってはさほど問題ではなかった(一般的な相場は約350万と言われている)。それに、私はこだわりが強すぎるので、提案される方が進めやすそうな気もした。なんといっても独自の世界観を作るうえで、アートディレクターが入ってくれるというのは魅力的だった。
結局、今までの提案の中で一番質が高くインパクトがあったので、その会社に依頼することにした。家に帰って「ここにする」と彼に伝えると、金額の高さに驚きつつも「良いと思うなら」と承諾してくれた。
■胸をよぎる一抹の不安……本当に大丈夫?
しかし、少し引っかかることがあった。
なんとなく、会話が上滑りしている感覚があったのだ。表面上はスムーズに進んでいるように見えて、根っこの部分がきちんと嚙み合っていない。歯車がきちんと噛み合わないまま、車輪だけグルグル回っている。言葉が重なり合っていないのに、笑顔が潤滑剤になってするすると進んでいってしまう。
たとえば、私が
「Aしたいんです」
と言うと、
「いいですね。こんな例がありますよ」
と結婚式ムービーを見せられる。そのムービーは素敵ではあるものの、Aではない。なんとなくの雰囲気は似ているが、Aではないのだ。
そんなちょっとした違和感が、節々にあった。
また、面談後に届いたメールが、やたらフレンドリーだった。
「〇〇してくださいね~!」
「〇〇してみてくださいね^^」
などが乱立しており、初回の距離感ではないんじゃないか、と思った。契約後、結婚式の打ち合わせを重ねて信頼関係ができあがった後ならいいが、まだ契約前、そして1回しか会っていないのに、異様に距離感が近くないだろうか。
しかし、これらは不安の芽ではあるものの、まだ些末なことだった。だから私は心のざわつきをなだめ、1週間後に契約金の20万円を入金した。正直なところ、この会社を信じたかったのだ。素敵な結婚式を作り上げるために、うまくいってほしかった。
そう、ここから波乱が始まるのである。
(第8話につづく)
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