女がプロポーズされるには?【NEO花嫁の結婚式奮闘記#1】
プロポーズされることを夢見てきた私。1年半付き合ってきた彼からプロポーズしてもらうべく、努力し続けてきて、ついに「結婚してください」の言葉をゲット。そこから始まる結婚式準備期間は、まさしく怒涛の日々。連載「NEO花嫁の結婚式奮闘記」として、理想とする結婚式の叶え方を模索していきます。
萩原かおり、フリーライター。「結婚」に恋い焦がれて数十年、「理想の花嫁になって最高の結婚式を挙げたい!」という思いは高まるばかり。1年半かけて最初の関門・プロポーズを突破すべく悪戦苦闘してきたが、ついに勝負の日を迎える……。
■プロポーズ大作戦!? 史上最高の私で臨んだ夜だったが……
待ちに待ったクリスマス・イブ。ホテルのレストランで、史上最高にオシャレをした私は固唾を飲んだ。
くる、くる、きっとくる―――。
目の前の彼がすっと手を上げる。
「すみません、お会計お願いします」
あやうく膝から崩れ落ちそうになったが、椅子に座っていたのでそのままの体勢をキープできた。全私が胸中で叫ぶ。
「プロポーズしないのか!」
スタッフが恭しく伝票を持ってきた瞬間、試合終了の合図が聞こえた。胸元のネックレスが涙の代わりにキラリと瞬く。その場に倒れ込みたかったが、慣れないピンヒールにふらふらしながらなんとか帰途についた。
■酸いも甘いも噛み分けた大人になった今
こう書くと彼とは長年付き合っているようだが、交際期間は1年半。半年前から同棲を始め、今に至る。私の結婚願望が人100倍強いだけだ。
理由はたくさんあるが、漫画の影響が強い。私は物語に強く共感するタイプで、主人公に自分を重ねては号泣する。
幼い頃に胸を躍らせた少女漫画では「恋い焦がれた相手と満を持して付き合い、あらゆる障害を乗り越えて絆を深め、いきなり10年後に飛んで結婚」という甘いハッピーエンドがお約束だった。
しかし、大人になってから読んだ女性漫画では「30歳目前で長年付き合っていた彼氏と別れてどん底、仕事に喘ぎながら自立するために孤軍奮闘」という話があふれており、独り身の私を震撼させた。大人って、甘くないのだ。
■心には「しないなら させてみせよう プロポーズ」を掲げて
こうした恐怖心もあり、少女時代からの夢である“結婚”を叶えるために「しないなら させてみせよう プロポーズ」というスローガンを掲げていた。
いつだって恋愛には全力投球し、相手がいなければ東西を奔走した。合コン戦士として憔悴した時期もある。
社会人になり、激務に追われてぷくぷくと太った時は、2年近く彼氏ができなかった。「今の自分は好きになれない」と一念発起し、10キロ落としてから出会ったのが今の彼だ。
一目見てビビビと電流が走った―――なんてことはなかったが、桜舞い散る代々木公園で出会った彼からは、ふわりと幸福の香りがした。一緒に過ごすうちに、私の全細胞が「この人だ」と告げるようになった。
■彼を幸せにする自信があるから、ストレートを投げ続けた
クリスマス・イブにプロポーズされるべく、私はあらゆる策を練り、実行した。綺麗事など言ってられない。「現状に甘んじることなく、好機は貪欲につかみ取れ」とあらゆる漫画が教えてくれた。
折を見ては「結婚したい」とつぶやき、結婚式のCMを見るたび「いいなあ」とため息をつき、ここぞというときは「母親が結婚を急かしてくるんだよね」「おじいちゃんとおばあちゃんが結婚しないのかって悲しんでる」などと“家族カード”を使った。
あまりにも剛速球のストレートばかり投げるので、男性からは「もうやめてあげて」と言われたが、私は手を止めなかった。彼が追い詰められすぎないよう緩急をつけ、ギリギリのところで攻め続けた。女性からは尊敬されたが、男性からは引かれた。
誤解がないように言っておくと、私がここまでできたのは「私が彼を幸せにする」という自信と覚悟があるからだ。そのための努力は惜しまない。そうでなければ、一生を歩む相手なんて決められないだろう。愛には盲目的な自信が必要なのだ。
■プロポーズGET! バージンロードに心飛ばして
失意のうちに終わったクリスマス・イブの翌日、つまりクリスマスの夜、ようやくプレゼント交換をした。緊張と期待と不安のあまり口から心臓が飛び出そうになりながら、おそるおそる箱を開ける。
プリザーブドフラワーと一緒に、手紙が入っていた。祈りながら手紙の封を開けて、文字をそっとなぞるように、ゆっくりと読む。せっかちな心はもうバージンロードを歩いている。
この先にある、ある、きっとある―――。
最後の行の「結婚してください」という文字を見て、私はようやく泣けた。
顔を上げると彼が子犬のように震えている。思わず笑ってしまった瞬間、遠くに教会のチャイムが聞こえた。
次は人生のハイライト“結婚式”に向けて走るのみだ。数十年越しの夢が叶うのだから、助走なんてしない。全力疾走だ。ここから私の結婚式奮闘記が始まる。
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